静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君の自制心は……

冬馬君は彼女が可愛いが止まらない~前篇~

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 さて、あの日から一夜明けて、翌日となった。

 あの後は、夜も遅いので、清水のお母さんが遊園地まで迎えにきてくれた。

 そして俺も乗せてもらい、有り難いことに家の近くまで送ってもらった。

 ……正直にいうと、助かった。

 あのままだと、俺の自制心がもちそうになかった……。

 清水の電話が鳴ったから良かったものの、結構危なかったな……。

 まあ、名残惜しかったことは否定できない。

 だが、一日経ったので、なんとか整理をつけた。

 まずは、一方的に気持ちを押し付けない。

 清水の気持ちを大事にする。

 なるべく、男としての本能を抑制する。

 男と女では色々と違うしな……。

 とりあえずは、こんなところかな。

 あとは、追々考えるとしよう。

 ……正直、自制心には少し自信がもてないがな……アイツ、可愛すぎだろ……。





 そんな俺は今、バイクに乗り、清水の家に向かっている。

 今日は、付き合ってからの初めてのデート日だ。

 昨日家に帰って、「明日会えるか?」とメールしたら、清水からほぼ同時にメールがきて、「明日時間あるかな?無理ならいいの」と書いてあった。

 なので、直接電話をした。

 そしたら、何か言いたそうな空気を感じたので、聞いてみた。

 すると、遠慮がちにバイクの後ろに乗りたいなと言われた。

 俺はすぐに了承し、今に至るというわけだ。





「さて、着いたな……」

 インターホンを鳴らそうとしたら、ドタドタドタ!!と音が聞こえた。

「キャー!お母さん!来ちゃったよー!?」

「ほら!だから言ったじゃない!」

「だって、服が決まんないよー!」

「もう、それでいいじゃない!」

「だって初デートだよ!?可愛いと思って欲しいもん!」

 ……丸聞こえなのだが?
 そして、既にその発言が可愛いのだが?
 既に、俺の胸が高まっているのだが?

 すると、玄関扉が開く。

「冬馬さん!こんにちは!」

「おう、誠也。こんにちは」

「あのねー、お母さんが、とりあえず上がってもらってって。お姉ちゃん、準備できてなくて……ごめんなさい」

「いや、謝ることはない。女子とは、そういうものだ」

 俺は妹がいるから、身に染みている……。

「やっぱり、冬馬さんはカッコいいね!」

「ありがとよ。では、お邪魔させてもらおうか」

 バイクを降り、清水家に入る。

「あら、吉野君。いらっしゃい。ごめんなさいねー」

「いえいえ、うちにも妹がいますんで」

「あら?理解力のある彼氏を持って、綾は幸せ者ね!」

「どうでしょうね?あんな可愛い子が彼女の俺の方が、数倍幸せ者だと思いますよ」

「……これは、破壊力あるわね……あの子、心臓もつかしら?」

「ねえねえ!時間あるなら、僕のプレイ見て!に、にいちゃん!」

「にいちゃん?」

「だ、ダメですか?お姉ちゃんの彼氏になったって聞いたから……」

 ……この兄弟は可愛いな。
 こんなの、断れるわけがない。
 まあ、大事な子の家族は、俺にとっても大事なものだしな。

「いや、ダメじゃないさ。好きに呼ぶといい」

「ホント!?わーい!にいちゃんが出来たー!」

「あらあら、喜んじゃって……ありがとね、吉野君」

「いえ、気持ちはわかりますから」

 俺が、真司さんにそう思うように……。

 その後、誠也のプレイを見て、色々とアドバイスをする。

「こいつがねー、倒せなくて……アドバイスほしくて……でも、1人で倒したいんだ!」

「おお、偉いな。俺に頼ろうとしない、その気持ちが大事だ」

「へへ、褒められた……」

 すると、部屋のドアが開き、清水が入ってくる。

「ご、ごめんなさい!待たせちゃって……!」

 そこには、青のデニムにV字の白Tシャツ、上に黒いカーディガンを着た可愛い女の子がいた。

「気にしなくていい……それにしても、可愛いな」

「え?……っ!?」

 清水は言葉にならないのか、口をパクパクしている。

「うん、よく似合っている。では、行くか」

「はぅ……あ、ありがとう……嬉しい……」

「あらあら、大変ね。気をつけてね」

「にいちゃん、またねー!」

「お邪魔しました。安全運転を心がけ、帰りもきちんと送り届けます」

「い、行ってきます!」

 清水家を出て、バイクの前にくる。

「吉野君、このバイクはなんて言うの?」

「これは、カワサキの中型バイクだ。俺なんかには買えるわけがないんだが、真司さんが格安で譲ってくれたんだよ」

 俺が譲ってもらったのは、400CCのカワサキのバイクだ。
 基本ベースは黒で、ところどころ赤が混じっている。

「へぇー!これが、有名な!私でも、知ってるよ!」

「だろうな……ところで、相談なんだが……」

まずは、これからだろうな……。

「……名前で呼んでもいいか?」

「え?……え!?う、うん、いいよ……」

 アワアワして、可愛い奴だな。

「じゃあ、綾。俺の名前は?」

「……冬馬君……です……」

 真っ赤になって……可愛いな。
 うん、ダメだな……こればかり出てくる。

「よし、これからはそれでいこう」

「は、はい……」

 俺はバイクに跨り、メットを差し出す。
   もちろん、グローブやプロテクターの準備も万端にしてある。
   あまりスピードは出さないが、万が一のことがあるからな。

「ほら、綾。これを被るといい」

「ありがとう……と、冬馬君……」

 照れ顔……これは……破壊力がエゲツないな……。
 今すぐに抱きしめたいくらいだ。 

「よし、準備できたな。では、後ろに乗ってくれ」

「う、うん!こういうの、憧れだったの!」

 そういい、満面の笑顔を見せてくる。

「うん、笑顔も可愛いな」

「………」

 いかん!口から出てきてしまう!
 あまり、言い過ぎも良くないか……自重しよう……出来る限り。

「おーい、帰ってこーい」

「あ、あれ!?き、気のせいかな?ずっと可愛いって言われてる気が……」

「ああ、ずっと言ってるぞ。俺の彼女は可愛いとな」

「あぅぅ………」

「悪かった、控えるようにするよ」

「わ、悪くないよ!嬉しいもん!ただ……ちょっとドキドキしすぎるだけで……」

「大丈夫だ、俺もドキドキしている。ほら、乗りな」

「え!?と、冬馬君も……?そ、そうなんだ……エヘヘ。そ、それじゃあ失礼するね」

 乗るのを確認し、エンジンをかける。
 そして、ゆっくりと走り出す。

「よし、しっかり掴まってろよ?」

「うん!」

 綾は、ぎゅっと俺にしがみつく。

 ……柔らかいものが!!ヤバイ!!なんだこれ!?

 落ち着け!乱れるな!安全運転だ!

 ……俺の自制心は、早くも崩れ去ろうとしている……。
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