静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君は天秤が傾き……

決戦は金曜日~後編~

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 ~清水綾視点~

 今日は、いよいよ花火デート当日。

 私はお母さんに頼んで、浴衣を着せてもらっています。

「お母さん!早く早く!遅刻しちゃうよー!」

「何言ってるの?まだ、全然早いじゃない……よし、これでいいかしらね」

「出来た!?鏡、鏡!!」

 鏡で自分を見て確認をします。

「へ、変じゃないかな?水色って私に似合うかな?」

「大丈夫よ、よく似合ってるわ」

「髪型平気かな?確か、シニョンスタイルって言うんだよね?」

「はいはい、平気よ。可愛い、自慢の娘よ」

「吉野君、どう思うかな?」

「それは本人から聞きなさい」

「……そうだね、お母さん。私、もう行きたい!」

「ちょっと!?まだ、時間には早いわよ!?」

「だって、待てないもん!それに、待ってる間もデートだもん!」

「まあ、わからないでもないわね……じゃあ、車出すわね」

 お母さんに、待ち合わせの駅まで送ってもらいます。

「お母さん!ありがとう!」

「はいはい……しっかりやるのよ?」

「うん!」

 私は逸る気持ちを抑えきれず、改札口に向かいます。

 うぅー……すっごい見られている……私はまわりの人達に見られています……。

 いつもなら嫌だけど、今は良いの……だって、今は幸せな気持ちだから……。

 吉野君、似合ってるって言ってくれるかな?

 吉野君、浴衣で来るって言ってたけど、カッコいいんだろうな……。

 そんなことを考えていたら、あっという間に時間は過ぎていきました。

 すると、吉野君がこちらに歩いてきました。

 ……浴衣姿、凄いかっこいい……吉野君は姿勢良く、ゆっくりと歩いてきます。

 ……うぅー、余裕あるなぁ……私ばっかり、ドキドキしてるのかな……?

 ……しかも、30分前に来てたことがばれてしまいました……恥ずかしい……。




 その後、2人で電車に乗ったのだけど……。

 ど、どうしよう!?壁ドン状態です!!

 わ、私が潰されないように、守ってくれています!

 私臭くないかな!?お風呂入ってきたけど……熱い……。

 そ、それに……吉野君、じっと見つめてくる……。

 や、やっぱり変かな!?気合い入りすぎかな!?

 ……感想もくれないし……この色と髪、嫌いだったかな?

 ……よし!電車降りたら、勇気を出して聞いてみよう!

 電車を降りる時、吉野君は紳士でした。

 自分が先に降りて、私に手を差し伸べてくれました。

 手と手が触れた時、心臓が……どうにかなりそうでした……。

 その後、勇気を出して聞いてみました。

 そしたら!褒めてくれました!似合ってるって……嬉しい……!!

 ニヤニヤするのを抑えるのに必死です!

 その後、沈黙が続いたけど、特に気まずくもありません。

 むしろ、落ち着けるくらいに……ドキドキはずっとしてるけど……。

 何気ないことだけど、歩くスピードも、私に合わせてくれてる……。

 もうっ!ドキドキしっぱなし!!




 遊園地に着くと、吉野君が案内してくれました。

 ひと気のない場所で、穴場的なところがあるって。

 ……なんで、ひと気のない場所……?

 あれかな?吉野君、人混み嫌いって言ってたからかな?

 でも、これはチャンスです!

 花火見終わったら、吉野君に告白します!!



 着いてからすぐに、花火が打ち上げられ、夜空を染め上げました……。

 ……綺麗……こんなに綺麗だったかな……?

 やっぱり、吉野君と見てるから……?



 そして花火が終わり、いよいよ告白しようとしました。

 私は覚悟を決めて、言葉を発しましたが……吉野君に遮られてしまいます。

 そして、なんだろ?と思った次の瞬間、信じられない言葉が、吉野君の口から……。

 好き……?誰が……?吉野君が、私を……?

 気がつけば、私は涙を流していました……。

 どうしよう……すぐに返事したいのに、止まらないよぉ………。









    ▽▽▽▽▽▽

 ~冬馬視点~


 告白したのはいいのだが……泣かれてしまったな。

 こういう時って、どうすればいいんだ?

 ……だが、放っておくわけにはいかないな。

 俺はゆっくりと歩いて、清水に近づいていく……。

「清水、言葉にしなくていい。ただ、断るなら首を横に振るか……受け入れてくれるなら、頷いてくれ」

 清水は、これでもかというほど頷いた。

 ……そうか……生きた心地がしなかったな。

 清水からの好意は感じていたが、それとこれとは話が別だからな……。

 俺は我慢しきれずに、清水を抱き寄せる。

 清水は、俺の腕の中で泣き続ける……。





 そして、時間が流れる……。

「グスッ……もう、大丈夫……ありがとう……」

「そうか……」

 俺は名残惜しいが、清水を離す。

「エヘヘ……こんなに嬉しいことあるんだね……えっと、吉野君……私も、貴方が好きです……その……彼女にしてください……」

 可愛いな!!

「可愛いな……」

「え……?か、可愛い!?」

 あ!口に出てしまった!
 ……まあ、いいか……実際、可愛いし。

「ああ、可愛い。俺の彼女は、可愛くて素敵な女の子だ」

「ふぇ!?え!?……あぅぅ……」

 耳まで真っ赤になってしまったな……可愛いな。
 ……いかんな、止まらんな。
 これは、己の自制心と戦わなくてはいけないな……。

「……とりあえず、座るか?」

「う、うん……」

 場所を移動して、ベンチに座る。

「…………」

「…………」

「「あの……」」

「…………」

「…………」

「清水……」

「はい……」

「これから、よろしくな。一応、言っておくが……俺の愛は重たいぞ?逃げるなら、今のうちだぞ?」

「え!?に、逃げません!!どんとこいです!」

「ハハ!そうか!どんとこいか……ククク」

「わ、笑われた……!そ、その、よろしくお願いします……」

 こうして、俺と清水は恋人になった。

 果たして俺は、彼女の可愛さに自制心がもつだろうか?

 ……頑張ろう……大事にしたいからな。
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