静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君は天秤が傾き……

清水さんは決心する~清水綾視点~

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 吉野君を好きになってから、早くも2ヶ月が過ぎようとしています。

 最初に出会った頃は、避けられてばかりでした……。

 でも、少しずつ仲良くなれてきたかな?と思います。

 ……私の勘違いだったらどうしよう……。

 ううん!少なくとも、嫌われてはないはず!

 ……そう思いたいです。

 この2ヶ月は色々なことがありました。

 暴漢から助けてもらった人を好きになったり。

 その人が気になっていた吉野君で、さらに好きになったり。

 なんとか仲良くなりたいと思って、行動してみたり。

 ひょんなことからバイト先を知り、そこから仲良くなれたり。

 家に来てもらったり、メールしたり、電話まで……。

 私は、吉野君の優しい人柄や、誠実さにどんどん惹かれていきました。

 もう、自分を抑えることができないほどに……。





 そして期末テスト最終日の夜、私はドキドキしていました。

 だって吉野君から、電話するからって……。

 何かな?なんだろ?ま、まさかね……キャー!

「綾、ニヤニヤしてどうしたの?」

「べ、別に……」

「あらあら……吉野君のこと考えてたのかしら?」

「え!?……う、うん……」

「綾は、吉野君のどこに惹かれたの?暴漢から助けてもらっただけじゃ、一過性のものかも知れないわよ?それでは、相手にも失礼よ?」

「もちろん、最初はそうだけど……今は、違うよ。えっとね……まずは、誠実なところ」

「ふんふん……どんなところが?」

「……自分で言うのもアレなんだけど……私、男の人たちからやらしい目で見られること多いし……それ目的で告白されることも多いの……でも、吉野君はそんなことしないの。もちろん、それはそれで少し複雑なんだけど……」

「確かに、そこは乙女心としては複雑ね。そうね、普通貴方みたいな可愛い子に好意を寄せられたら、とりあえず付き合って……男女の関係になりたいと思う人のが多いでしょうね」

「う、うん……なんて言うのかな……中身を知ろうとしてくれてるのが、嬉しいのかな?」

「うんうん、嬉しいわね。で、後は?」

「後はね……優しいところかな。誠也にもそうだったし、私にも。言い方とかはぶっきらぼうなんだけど……押し付けない優しさ?みたいなところとか」

「そうね、それは大事ね。他には?」

「お母さん、ニヤニヤしすぎ……」

「あら、いいいじゃない。娘の初めての恋なんだから。で、どうなの?」

「……1番は、アレかな?そ、その……ドキドキするの……側にいると……」

「あら!まあ!いいわね、大事よね。それで?」

「う、うん……でも、落ち着いたりもするの。黙っていても苦にならない?」

「同じ空気感を感じてるのかしらね?でも、大事よね」

「あとは、笑顔を見ると胸が苦しくなったり……キュンとしたり……」

「そう……心配はなさそうね。綾、貴方はしっかりと吉野君を好きになっているわ」

「え?う、うん、そのつもりだけど……」

「いや、出会いが出会いだから、お母さんは心配したのよ。吊り橋効果じゃないかと思ってね」

「そんなことないよ!ちゃんと好きだよ!」

「ええ、今の話でわかったわよ。で、どうするの?夏休みは?来年は受験もあるし、遊んだりするのは、最後かもしれないわよ?」

「う、うん……実は、今日電話するって……吉野君から……」

「あら!良かったわね!」

「お母さん!お風呂出たよ!」

「あら、誠也。じゃあ、ご飯にしましょうか。綾、頑張りなさいね。あんな良い男は滅多にいないわよ?」

「……うん!」

「なんの話ー?」

「吉野君は、良い男って話よ」

「うん!冬馬さん、カッコイイよね!あんなお兄ちゃん欲しい!」

「あらあら……まあ、それは気が早いわね」




 その後、ご飯を食べて、私は部屋に戻りました。

「うー……なんだろ?」

 テスト明けで良かったぁ……何にも手につかないや……。
 部屋に戻ってから、ずっとスマホとにらめっこ状態です。
 だって嬉しい……電話してくれるの初めてだもん……。

「9時くらいって言ってたから、そろそろだと思うんだけど……うわっ!」

 スマホが光る、吉野君と表示される!
 私は、すぐにボタンを押しました!

「……も、もしもし……」

 うぅー……声が震えそう……!

「もしもし、今大丈夫か?」

 吉野君は電話越しだと、少し硬くなる印象……まさかね。
 ……吉野君も、緊張してたりするのかな?

「う、うん……この時間に電話するってメールきたから……」

「そうか……」

「よ、吉野君?」

 どうしたんだろ?何か躊躇ってる?

「あー……西武遊園地って知ってるか?」

「え?……うん、行ったことあるよ」

 この辺に住んでる人は、大体行っている遊園地のことだ。
 小さい頃は、よく行ってたなぁ……。
 でも、それがどうしたんだろ?

「……八月になると、花火を打ち上げているよな?」

「う、うん……」

 この辺に住んでる人ならよく聞く音で、夏の風物詩の一つだ。

「……良かったら、一緒に見に行かないか?」

 ……え?

「え!?え?え?今、なんて……」

 き、気のせいかな!?
 花火に誘われた気が……。
 そ、そんな幸せなこと、あるわけないよね!

「いいか……よく、聞け。俺と一緒に、花火を見に行かないか?」

「……はい、行きます……」

 ……腰が砕けるかと思ったぁ………。
 ……え!?どういうこと!?
 ……これは、誘われた……?
 花火に……?それって……デート!?

「おーい?聞いてるか?」

「にゃい!?え!?き、聞いてない!」

 あーもう!変な声出ちゃったよー!

「詳しいことは、後日な。また、連絡する」

「う、うん、わかった。ま、待ってます」

「はいよ。じゃあ、またな」

「うん、また……」

 そして電話が切れる……何が起きたの?

 ……遊園地に誘われた……花火……。

 ……やっぱり、これって……デートに誘われたのかな……?

「キャー!!どうしよう!?」

 私は、布団に潜り込んで叫びました。

「嬉しい……あれ?」

 そこで私は気づいた。

「花火が終わったら、もう夏休み会えない……?そもそも、会う理由が……」

 吉野君だって忙しいだろうし、誠也をダシに使うのは違うし……。

 私は寂しい気持ちで一杯になる。

 最近は学校でも会えるし、話せていたから……。

「どうすれば、花火以降も会えるのかな?」

 会っても不自然じゃない関係……。

 ……決めた!

 怖がってたら、前に進めない!

 私は花火の日に、吉野君に告白します!!
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