静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君は静かに過ごしたい

冬馬君は妥協案を提示する

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……これは、マズイ。

無視するのは、下策。

答えた方がいいのは、頭ではわかっている。

だが、どう答える?

そして、どうすればこの危機を乗り越えて、平穏な日々を過ごせる?

いや、厳しいのはわかっている。

このマドンナに話しかけられた時点で……。

だが、諦めるな!

頭をフル回転させろ!被害を最小限にとどめるんだ!

今、一番マズイことはなんだ?

あり得ないことだが、ここで告白されることだな……。

もしくは、元ヤンキーだとバラされることだな……。

となると、俺の取るべき行動は……。

「あの……冬馬君、聞いてるかな……?」

「清水さん。すまないが、場所を変えても?俺、あんまり目立つの好きじゃないんだ」

「あ、そ、そうだよね!ごめんなさい!」

「謝ることはないよ。じゃあ、ついてきて」

俺は返事も聞かずに、教室からでる。

その際に、オラオラ系リア充から射殺すような視線を感じた。

やれやれ……穏便に済ませたいところだが。

本当に厄介なことになったな……。

清水は、大人しくついてきているようだ。

俺は今、頭をフル回転させて、次の作戦を練っている。

さあ、ここからどうする?

とりあえず、いつも行く空き教室なら誰も来ないはず。

内容を想定しろ!
まさか、告白は……いや、常に最悪を想定しておくべきだ。
あとは、単純にお礼か?
もしくは、興味本位か?
まさか、俺を脅すとか?

そんなことを考えていたら、空き教室に着いてしまった。
よし!あとは出たとこ勝負!
俺は、意を決して空き教室に入る。

「へぇ……いつもここで食べてるんですか?」

……しまったぁぁぁ!!!
人に聞かれないことを重要視しすぎた!!
自分の秘密の場所を、敵に教えてしまったぁぁぁ!!!
なんてことだ……策士策に溺れるとはこのことか……。
やれやれ……やはり、冷静ではいられないようだな。

「えっと、吉野君?百面相してるけど、大丈夫?」

「……ああ、大丈夫だよ。で、話って何かな?」

「えっと、まずはこれを……」

「これは……学生証……」

なるほど、バレるわけだ。
 逃げる時に、落としたようだな。
これは、言い逃れは出来ないな……。
よし、覚悟を決めるか。

「そうか、あの時に。ありがとう?というのもおかしいか」

「ふふ、そうだね。私が追いかけなきゃ、落とさなかったかも」

ヤバイ……可愛いぞ、清水綾……!
だが、負けるな!俺!
平穏な日々を過ごしたいんだろ!?

「まあ、そうだろうな。じゃあ、もういいか?」

あんまり長いと、勘違いする奴も出てくる。

「え!?いや、あの、その……やっぱり、迷惑だったかな?」

「まあ、正直言ってそうだな。アンタみたいなマドンナに声をかけられたら、俺の平穏な日々は台無しだ」

「ご、ごめんなさい……」

……めちゃくちゃシュンとして、落ち込んでる……!
天国の母さんの怒る顔と、台詞が頭に浮かぶ……!
冬馬?お母さんは言ったわよ?
女の子を傷つけたり、泣かしたりしたら承知しないってと。

「いや、謝らなくていい。この間も言ったが、礼は不要だ。俺は、俺の信念に従って行動したまでだ」

「はぅ……格好いい……」

「はい?」

今、この女なんて言った?
なんか、両手で顔押さえて、悶えているのだが?
そして可愛いのだが?
……待て待て待てい!!
クソ!惑わされるな!気をしっかり持て!
まずは、確認だ……この女がどうしたいかを。

「ゴホン!……で、アンタはどうしたいんだ?」

「え!?……聞いてくれるの?」

「まあ、一応な。でないと、また話しかけてきそうだ」

「そんなこと……するかも。えっと……とりあえず、お友達になってもらえませんか?」

なるほど、そうきたか。
ふむ……悪い提案ではないな。
そして俺を知れば、幻滅していくだろう。
そうすれば、俺が傷つく以外は問題ない……。
そりゃ俺だって、可愛い女の子に幻滅されたら傷つくさ。

それよりも、これはチャンスだな。
これを受け入れる代わりに、交換条件を出せばいいんだ。

「わかった、いいだろう。だが、条件がある」

「え!?いいんですか!?でも、条件ですか……」

「大したことじゃない。学校では、あまり話しかけて来なければいいだけだ」

「あ、そうだよね。迷惑かけちゃうもんね。うん!わかった!」

清水綾は、弾けるような笑顔でそう言った。
……クッ!可愛い!俺の中のパドスよ!静まれぇぇ!!
……フゥ、危ないところだった。

「じゃあ、そういうことで」

俺は自然な感じで去ろうとする。

「あ!待って!と、友達なら、その、電話番号とか……きいてもいいかな?」

段々尻窄みになりながらも、彼女はそう言った。
クソ!逃げ切れなかったか……!

「よくラインとか聞かなかったな?」

「え?……なんとなく、やっていないんじゃないかと。クラスのライングループにも、唯一入ってないみたいだし……」

「正解だ。あれほど無駄なものはないと思っている。そもそもスマホとは、俺にとってはそういう用途ではないからな。まあ、いい」

俺はメモにアドレスと電話番号を書いて、彼女に手渡す。

「あ、ありがとう!えっと……メールとかしてもいいのかな?あ!もちろん、そんな何回もしないから……」

絶妙な聞き方だな……。
これを断ったら、俺でも良心が痛むぞ……!

「……返信はなるべく返すが、多分俺は返すの遅いぞ?」

「はい!それでも良いです!ありがとう!」 

「では、俺は一度教室に戻る。アンタは、少し遅れてくれ。で、俺が適当に言い訳しておくから、アンタはそれに頷くだけでいい」

「あの……それは、良いんだけど……アンタじゃなくて……」

「ん?……清水でいいか?」

「うん!」

「そうか。ではな」

俺は教室に戻る途中で、メールを打つ。

そして、返信はすぐに来た。

はぁ……あいつに借りを作りたくはなかったんだが、背に腹はかえられない。

俺は、教室のドアを開ける。

当たり前だが、全員が俺に注目する。

さて、作戦通りにいくかだな……。












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