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冬馬君は静かに過ごしたい

助けてくれたあの人は~清水綾視点~

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 あれは、恋をしたのかな……?

 だって……思い出すだけで、こんなに胸がドキドキする……。

 こんなの初めてで、どうしたらいいんだろ……?




 その日、私はいつもと違う場所で買い物をしていた。

 地元だと人が寄って来ちゃうし、他の人にも迷惑かけてしまうから。

 なんで悪いこともしてない私が、気を遣わなくてはいけないの?と思うことはある。

 でも、それで上手く収まるなら、私が我慢しようと思う。

 みんなは、私をしっかりした子、優しい子、明るい子だと言ってくれる。

 でも、それは違う。

 ただ、怖いだけ。

 みんなの輪から外れたり、イメージと違うとか言われたりするのが……。

 そしてその結果、虐められたり、ハブられたりするのが……。

 そんな日々を過ごしてる、私のストレス発散方法は、知らない街でお洒落な格好をし、買い物したり歩くことです。

 目立ちたくないなら、地味な格好すればよくない?と思うかもしれない。

 でも、それだけは嫌だった。

 だって、お洒落は好きなんだもん!

 それにストレス発散のために、我慢していたら本末転倒だと思うし。

 なので、今日は知り合いの少ない街を散策しています。

 でも、ダメでした……。

 ナンパはされるし、スカウトはされるし、皆にジロジロ見られるし……。

 結局、私が我慢するしかないのかな……。

 そして日が暮れてきても、状況は変わらなかった。

 嫌気がさした私は、誰もいない路地裏に入った。

 でも、それが不味かった。

 どうやら、後をつけられていたみたい。

 タチの悪そうな不良2人に、絡まれてしまいました。

 その2人は、私を何処かへ連れ去ろうとしました。

 私だってもう16歳だから、何をされるのかは理解していました。

 だから、必死で抵抗しました。

 でも、怖くてあまり声が出ないし、力が違いすぎて……。

 もう、駄目かと思ったその時、彼は現れました。

 それなりに整った顔立ちに、オールバックのワイルドな髪型。

 身長もそこそこ高く、スタイルも良さそう。

 何より、その目に惹かれてしまいました。

 何者にも屈しないという、意思の強い目に……。

 彼は最初殴られていましたが、それはわざとだったみたい。

 一撃で、不良の1人を倒した後、もう1人も撃退してしまいました。

 そしてぶっきらぼうな言い方で、私に色々と言ってくれました。

 正直、男の人にそんな口をきかれたことなかったから、少し戸惑いました。

 でも、優しい空気感が伝わってきたので、ああ良い人なんだなと思った。

 しっかりと、人がいる通りまで送ってくれました。

 そして、名前を告げずに去っていきました……。

 お礼したかったんだけどな……それに……カッコよかった……。

 今時、あんな人いるんだ……。

 女の子を助けても、下心を見せずに去っていくような人が……。

 まるで、漫画の世界の主人公みたい……。

 私は、彼に恋をしたのかもしれない。




 家に帰ってからも、彼のことばかり考えてしまう……。

 ベッドで思い出して、悶えたり、ニヤニヤしたり。

 恋ってこんな感じなの?すごいなぁ……。

 でも……名前も知らない。

 もちろん、連絡先も……。

 決めた!明日同じ街に行ってみよう!

 会えるかはわからないけど、行動しなきゃ始まらない!

 私はそう決めて、眠りについた……。




 次の日、同じ駅で降りて、街を散策した。

 相変わらず、男の人達に声をかけられるけど我慢した。

 そして……なんと、あっさりと見つけてしまいました。

 まだ午前中なのに……これは運命かな?

 でも、彼はベンチで気持ち良さそうに、うつらうつらしていました。

 その姿に、何故か私はキュン!としてしまいました。

 理由はわからないけれど……可愛いと思ってしまいました。

 起こすの悪いかなと思ったけれど、意を決して話しかけてみました。

 でも、彼は脱兎の如く逃げてしまいました……。

 まさか逃げられるとは思ってもみなかったので、私は呆然としてしまいました。

 待って!と声を出し、追いかけようとした時には、もう遠くにいました。

 速い!とてもじゃないけど追いつけない!と思った。

 でも、ここを逃したらもう会えない!と思い、追いかけようとしたのですが……。

 彼の後ろポケットから、何かが落ちました。

 そしてそれを拾うと、とても驚きました。

 なんと、私と同じ学生証だったのです。

 更には、同じクラスの気になっていた男子と同一人物だったのです。

 そういえば、似ていたような気がしないでもない……。

 私は嬉しかった。

 元々気になっていた人と、好きになったかもしれない人が同一人物だなんて……。

 これって、運命的じゃないかな!?

 でも、全然違う感じだった……どっちが本当の彼?

 私は、ますます彼のことが気になってしまった。

 そして、決めた。

 彼には申し訳ないけど、明日学校で話しかけてみようと。

 外だと、また逃げられちゃうかもだし……。

 多分、何か理由があって静かに過ごしているとは思うんだけど……。

 ごめんなさい、吉野君。

 貴方の日常を壊してしまうかもしれません。

 それでも、私は貴方とお話しがしたいです。

   よーし! 勇気を出して話しかけてみよう!










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