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冬馬君は静かに過ごしたい
冬馬君の事情
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朝、目が覚めた時、俺は涙を流していた……。
理由はわかっている……。
亡くなる直前の、母さんの夢を見たからだ……。
俺は幼い頃は、所謂オタクと呼ばれるタイプというわけではなかった。
小さい頃の俺は、どちらかというと活発な少年で、クラスの中心にいるタイプだった。
見た目は普通だったが、運動神経も良く、腕っ節も強かった。
たまにウザいが、家族のために働く、家族思いの父さん。
いつも穏やかで、笑顔で俺達を包む、家族思いの母さん。
いつも元気で、家族を幸せにしてくれる、可愛い妹の麻里奈。
母さんは生まれつき身体が弱く、あまり旅行に行ったり、出かけたりは出来なかった。
更に、日々の生活のお手伝いをしなくてはいけなかった。
それでも、俺達は幸せ家族だった。
だが、一度その幸せは壊れかけた。
母さんが、死んでしまったからだ。
俺が12歳、妹が9歳だった。
生まれつき身体が弱く、長く生きられない身体だったそうだ。
衰弱していく母さんは、それでも笑っていた。
俺は聞いた……なんで、笑っていられる!?と。
母さんは言った……幸せだからよと。
もちろん死にたくないけど、お父さんと出会って、貴方達と過ごして、本当に幸せな日々だったわ、ありがとうと。
三人で泣いた……泣いて泣いて泣いて、涙が枯れるまで……。
その後、1人ずつ話がしたいと言ったので、その通りにした。
ちなみに、俺らはそれぞれの内容は、未だに知らない。
まあ、言う必要がないということもある。
だって、なんとなくはわかっているだろうし。
ただ、それぞれ母さんとの最後の思い出を、心にしまっておいているのかもしれない。
俺は母さんに、こう言われた。
「冬馬、泣かないで……」
「……わかった、泣かない……!」
「冬馬は、強い子ね。貴方が生まれた時、嬉しかったわ。子供を産めるとは思っていなかったから……。それに、貴方は元気で、家族に優しい子に育ってくれたわ。でも、お母さんはその優しさを他の人にも向けて欲しいな。だから冬馬……もし困っている人がいたら、できるだけ助けてあげてね?面倒くさがりな貴方に、母として命じます!……なんてね」
「母さん……俺のこと、よくわかってるね。わかったよ、出来る限り約束するよ」
「ふふ、ごめんなさいね。貴方には、その力があると思うから……。後、お父さんと麻里奈のことお願いしても良いかしら?」
「ああ、もちろん。俺は長男だからね」
「ふふ、素敵な息子を持って、私は幸せ者ね……」
こうして、俺と母さんの2人きりの会話は終わった。
俺はその後、母さんの約束を破ってしまうのだが、長くなるので今度にしよう。
さて、今日から学校だ。
俺が通う学校は、公立高校だ。
県内でも偏差値が高いが、校則は緩いので、人気がある学校だ。
俺の家からも30~40分で行けるので、そこを受験した。
理由は色々あるが、大きな理由はこれらかな。
倍率が高いので、同じ中学の知り合いが少なくなるということ。
校則が緩いので、スマホ持ち込みありだし、バイトもできるということ。
家からも近いので、行き帰りの時間が短く、自分の時間を確保できること。
だが、ひとつだけ困っていることがある。
俺は数少ない中学の連中には、口止めをしている。
俺のことを話したら、タダじゃすまんからなと。
ただ、1人だけそれを無視する奴がいる。
そいつの名前は、神崎暁人《かんざきあきと》。
アダ名は、アッキーとか言われてるな。
そいつは、イケメンで頭も良く、運動神経や性格まで良いという、なんというか物語の主人公のような存在だ。
当然、校内のカーストトップの1人だ。
そいつは、地味に暮らしたい俺に絡んでくる。
中学の時つるんではいたから、あっちからしたらなんで?ってなるのはわかる。
だから、俺も強くは言えない。
……言えないのだが、それとこれとは話が別である。
俺は今、朝の通勤時間の読書を邪魔されているからだ。
「なあ、冬馬。聞いてるか?」
「いや、聞いてない。というか、お前なんか知らない。人違いじゃないですか?」
「おいおい、酷いじゃないか。親友だろ?俺達」
「俺には、カーストトップの親友はいない。俺は、地味な生徒B君だからな」
「ははは!お前が地味とかウケるな!まあ、そういうお前も良いけどな」
「アキ?俺は今、お前をどうしたいと思っているか、わかるか?」
「おお、怖い。わかったよ、この辺にしとくさ。じゃあ、またな」
そう言って、女子の集団に囲まれに行った。
はぁ……悪い奴ではないからな……対処の仕方に悩むとこだ。
実際に仲は良いしな。
持ちつ持たれつという関係でもある。
そして降りる駅に着き、学校へ向かう。
ちなみに俺は、歩きスマホは絶対にしない。
いくらネット小説や、ネットゲームが好きでも、これだけは守っている。
他の人に迷惑だし、そんなので事故でもしたら、相手が可哀想だ。
学校までは歩いて10分ほどなので、あっという間に着いた。
いつも通り、誰にも挨拶されず、自分の席に着く。
ふふふ……挨拶をされなければ、返す必要はないからな。
これぞ、空気的存在だ。
俺は先生が来るまでの間、いつも通りにネット小説を開く。
ただでさえ、今日は邪魔が入ったからな……。
俺は電車の中やこの時間に、ランキングを見たり、新作を見つけたり、フォローをつけたりする。
さて、今日はどんな感じかな?と俺が思った時、教室が騒ついた。
校内のマドンナ的存在の、あの子が教室に入ったきたのだろう。
俺は、意識的に存在を消す努力をする。
絶!絶だ!某漫画のように念じるんだ!
気づかれるとは思わないが、念には念を入れてな……ギャグじゃないからな?
そして、そのまま無事に先生がきて、ホームルームが始まった。
良かった……バレてないな。
まあ、バレるわけもないのだが、やはり心配だったからな。
だが、これで一安心だ。
その後授業を受けて、昼休みの時間になった。
俺はいつも、決まった多目的教室に入り、ご飯を食べている。
もちろん、先生の許可はとってある。
そして、いざ移動しようとしたその時、教室が騒ついた。
俺がなんだ?と思い、そちらを見ると、真っ直ぐに清水綾がこっちに歩いてくる。
そして、俺の目の前に来て、口を開く。
「よ、吉野君!ちょっと話したいんだけど、いいかな……?」
校内のマドンナは、少し頬を染めながら、そう言った。
はぁ……俺は静かに過ごしたいのに……。
どうやら、そうは問屋がおろさないらしい。
理由はわかっている……。
亡くなる直前の、母さんの夢を見たからだ……。
俺は幼い頃は、所謂オタクと呼ばれるタイプというわけではなかった。
小さい頃の俺は、どちらかというと活発な少年で、クラスの中心にいるタイプだった。
見た目は普通だったが、運動神経も良く、腕っ節も強かった。
たまにウザいが、家族のために働く、家族思いの父さん。
いつも穏やかで、笑顔で俺達を包む、家族思いの母さん。
いつも元気で、家族を幸せにしてくれる、可愛い妹の麻里奈。
母さんは生まれつき身体が弱く、あまり旅行に行ったり、出かけたりは出来なかった。
更に、日々の生活のお手伝いをしなくてはいけなかった。
それでも、俺達は幸せ家族だった。
だが、一度その幸せは壊れかけた。
母さんが、死んでしまったからだ。
俺が12歳、妹が9歳だった。
生まれつき身体が弱く、長く生きられない身体だったそうだ。
衰弱していく母さんは、それでも笑っていた。
俺は聞いた……なんで、笑っていられる!?と。
母さんは言った……幸せだからよと。
もちろん死にたくないけど、お父さんと出会って、貴方達と過ごして、本当に幸せな日々だったわ、ありがとうと。
三人で泣いた……泣いて泣いて泣いて、涙が枯れるまで……。
その後、1人ずつ話がしたいと言ったので、その通りにした。
ちなみに、俺らはそれぞれの内容は、未だに知らない。
まあ、言う必要がないということもある。
だって、なんとなくはわかっているだろうし。
ただ、それぞれ母さんとの最後の思い出を、心にしまっておいているのかもしれない。
俺は母さんに、こう言われた。
「冬馬、泣かないで……」
「……わかった、泣かない……!」
「冬馬は、強い子ね。貴方が生まれた時、嬉しかったわ。子供を産めるとは思っていなかったから……。それに、貴方は元気で、家族に優しい子に育ってくれたわ。でも、お母さんはその優しさを他の人にも向けて欲しいな。だから冬馬……もし困っている人がいたら、できるだけ助けてあげてね?面倒くさがりな貴方に、母として命じます!……なんてね」
「母さん……俺のこと、よくわかってるね。わかったよ、出来る限り約束するよ」
「ふふ、ごめんなさいね。貴方には、その力があると思うから……。後、お父さんと麻里奈のことお願いしても良いかしら?」
「ああ、もちろん。俺は長男だからね」
「ふふ、素敵な息子を持って、私は幸せ者ね……」
こうして、俺と母さんの2人きりの会話は終わった。
俺はその後、母さんの約束を破ってしまうのだが、長くなるので今度にしよう。
さて、今日から学校だ。
俺が通う学校は、公立高校だ。
県内でも偏差値が高いが、校則は緩いので、人気がある学校だ。
俺の家からも30~40分で行けるので、そこを受験した。
理由は色々あるが、大きな理由はこれらかな。
倍率が高いので、同じ中学の知り合いが少なくなるということ。
校則が緩いので、スマホ持ち込みありだし、バイトもできるということ。
家からも近いので、行き帰りの時間が短く、自分の時間を確保できること。
だが、ひとつだけ困っていることがある。
俺は数少ない中学の連中には、口止めをしている。
俺のことを話したら、タダじゃすまんからなと。
ただ、1人だけそれを無視する奴がいる。
そいつの名前は、神崎暁人《かんざきあきと》。
アダ名は、アッキーとか言われてるな。
そいつは、イケメンで頭も良く、運動神経や性格まで良いという、なんというか物語の主人公のような存在だ。
当然、校内のカーストトップの1人だ。
そいつは、地味に暮らしたい俺に絡んでくる。
中学の時つるんではいたから、あっちからしたらなんで?ってなるのはわかる。
だから、俺も強くは言えない。
……言えないのだが、それとこれとは話が別である。
俺は今、朝の通勤時間の読書を邪魔されているからだ。
「なあ、冬馬。聞いてるか?」
「いや、聞いてない。というか、お前なんか知らない。人違いじゃないですか?」
「おいおい、酷いじゃないか。親友だろ?俺達」
「俺には、カーストトップの親友はいない。俺は、地味な生徒B君だからな」
「ははは!お前が地味とかウケるな!まあ、そういうお前も良いけどな」
「アキ?俺は今、お前をどうしたいと思っているか、わかるか?」
「おお、怖い。わかったよ、この辺にしとくさ。じゃあ、またな」
そう言って、女子の集団に囲まれに行った。
はぁ……悪い奴ではないからな……対処の仕方に悩むとこだ。
実際に仲は良いしな。
持ちつ持たれつという関係でもある。
そして降りる駅に着き、学校へ向かう。
ちなみに俺は、歩きスマホは絶対にしない。
いくらネット小説や、ネットゲームが好きでも、これだけは守っている。
他の人に迷惑だし、そんなので事故でもしたら、相手が可哀想だ。
学校までは歩いて10分ほどなので、あっという間に着いた。
いつも通り、誰にも挨拶されず、自分の席に着く。
ふふふ……挨拶をされなければ、返す必要はないからな。
これぞ、空気的存在だ。
俺は先生が来るまでの間、いつも通りにネット小説を開く。
ただでさえ、今日は邪魔が入ったからな……。
俺は電車の中やこの時間に、ランキングを見たり、新作を見つけたり、フォローをつけたりする。
さて、今日はどんな感じかな?と俺が思った時、教室が騒ついた。
校内のマドンナ的存在の、あの子が教室に入ったきたのだろう。
俺は、意識的に存在を消す努力をする。
絶!絶だ!某漫画のように念じるんだ!
気づかれるとは思わないが、念には念を入れてな……ギャグじゃないからな?
そして、そのまま無事に先生がきて、ホームルームが始まった。
良かった……バレてないな。
まあ、バレるわけもないのだが、やはり心配だったからな。
だが、これで一安心だ。
その後授業を受けて、昼休みの時間になった。
俺はいつも、決まった多目的教室に入り、ご飯を食べている。
もちろん、先生の許可はとってある。
そして、いざ移動しようとしたその時、教室が騒ついた。
俺がなんだ?と思い、そちらを見ると、真っ直ぐに清水綾がこっちに歩いてくる。
そして、俺の目の前に来て、口を開く。
「よ、吉野君!ちょっと話したいんだけど、いいかな……?」
校内のマドンナは、少し頬を染めながら、そう言った。
はぁ……俺は静かに過ごしたいのに……。
どうやら、そうは問屋がおろさないらしい。
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