静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君は静かに過ごしたい

妹とのデート

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次の日の朝は、酷いものだった。

昨日はカップラーメンだけなので、お腹は空くし、何故かお腹は下すし。

妹には、昨日から口利いてもらえないし。

親父には、妹が告げ口をして、叱られるし。

「わかった、俺が全面的に悪かった!許してくれ!」

「……んー、しょうがない!可愛い妹を不安にさせたことを許します!その代わり、今日は私の買い物に付き合ってもらうからね?」

「な、なに!?今日はゲームの日と決まっているのに……!」

一昨日から、どの積みゲーから消化するか、楽しみにしてたのに……!

「そんなのは、いつでも出来るでしょ!?可愛い妹は、今しかいないんだよ?」

「なんだ、そんなことか。大丈夫だ!お前はいつまでも、俺の可愛い妹だ」

「お兄……じゃなくて!私だって、いつかはお嫁に行くんだからね?そしたら、今みたいには出掛けたり出来ないんだよ?」

「なぁに!?お嫁だと!?何処のどいつだ!?俺の天使を連れ去る輩は!?冬馬!許可する!討ち滅ぼせ!!」

「もう!お父さんは黙ってて!今のは、例えばの話だよ!」

「そうか、なら良かった。俺は、危うく犯罪者になるところだった」

「お兄は、なにをするつもりだったの!?」

「そんなこと、決まっている。二度と妹に手出しできぬように、締め上げるだけだ。母さんの言いつけでもあるしな」

「お母さんは、そういう意味で言ったわけじゃないと思うけど?」

「まあ、いい。可愛い妹の頼みだ。ゲームは……我慢する……!」

これが所謂、断腸の思いというやつか……!
済まない、ゲーム達よ!だが、妹も同じくらいに大切なんだ……!
こんな俺を許してくれ……!

「いや、そんな辛そうな顔するとこ!?……まあ、いいや。じゃあ、9時出発ね。で、午後には帰るから、ゲームも出来るでしょ?」

「おお……!妹よ!貴女が神か!」

「大袈裟だなぁ、お兄は」

「あのー、麻里奈。お父さん、今日休みなんだけど……」

「お父さんは、毎日お仕事で疲れているんだから、午前中しっかり休むこと!お昼過ぎには帰って来るから、ご飯買って来るね!それで、夕飯は3人で食べよ?」

「母さん……!麻里奈はいい子に育っているぞ……!見た目もますます似てきて、嬉しい!しかし、心配でもある……!俺は、どうすれば……!」

「別に、どうもしなくていいんだけど……はい、お兄!準備して!」

「ん?どういうことだ?」

「そんな格好で、出掛けるの!?だめ!お兄、ちゃんとすればカッコイイんだから!髪型はしょうがないけど、格好くらいはちゃんとして欲しいです!妹は、そう思います!」

「えー、面倒くさいな……だが、他ならぬ妹の頼みだ。はぁ、準備するか」

俺は仕方ないので、髪を整える。
そしてスウェットの上下から、ジーパンとシャツにジャケットを着る。
まあ、春ならこれくらいでいいだろ。
俺は、最後に学生証を制服から取り出し、後ろのポケットに入れる。
学割が効くところがあれば、いざという時便利だからな。

「おーい、麻里奈。これでいいか?」

「……うん、及第点かな。よし!妹とのデートを許可します!では、レッツゴー!」

「わかったから、引っ張っるなよ。俺のこれ、一張羅なんだぞ?」

「じゃあ、お兄の服も見てあげる!お金あるんでしょう?」

「兄から金を巻き上げる気か……!麻里奈、なんて恐ろしい子……!」

そうして、2人でお出かけをすることになった。

麻里奈をバイクの後ろに乗せ、2人乗りで駅まで行く。
そして、駅ビルの中にある総合店に入った。
ここなら、大体のことは出来る。

「まずは、お兄の服からだね。一張羅しかないんじゃ駄目だよ!最低でも、もう一着はないと。彼女とデートとかも行けないよ?」

「おいおい、妹よ。俺に、そんな時間があるわけないだろう?そんな暇があったら、ラノベ読んだり、ゲームしたりするし」

「はぁ、勿体ない。絶対にモテるのに……。まあ、いいか。私だけのお兄ってことで」

「ふっ、可愛い妹だ。気分が良い。後で、アイスを買ってあげよう」

「ホント!?やったー!ここのアイス美味しいんだよね!」

そんなことぐらいで喜んじゃって……良い子に育ったな……。
決して、俺がチョロいわけではないことは、明言しておこう。

そして、俺は妹に弄り回される。

「うーん!こっち?いや、こっち?それとも、こっち?」

結局、上下一式を買わされた。
いや、疲れた……。
だが、本当の試練はここからだ……!

「よし!お兄!次は、私の洋服を見るよ!」

「はいはい、我が家のお姫様。畏まりましたよ」

「うむ!苦しゅうない!」

そして女性用のショップに入る。
妹は何着か手に取り、試着室に入る。
そして始まる、麻里奈のモデルショータイム!

「これ、どうかな?」

「うん、いいと思うぞ」

「こっちは、どうかな?」

「ああ、いいんじゃないかな」

「じゃあ、こっちは?」

「そうだな、悪くないと思う」

これぞ、必殺の言い回しだ!
言い方が違うだけで、意味は大体一緒だ。

「うーん……じゃあ、これにする!」

どうやら、決まったようだな。
麻里奈は会計に持っていく。

「スカートと、Tシャツ、カーディガンの三点ですね。合計金額、8560円です」

「うっ!ちょっと高かったかな?どれか減らす?でも、一度とった物を返すのは失礼じゃないかな?」

俺は、黙って1万円札を出す。

「すみません、これでお願いします」

「お兄!?いいの!?」

「いいのって、買ってもらう気だったんじゃないのか?」

「そ、それはあわよくばとは思ったけど……半分冗談だったし……」

「いいさ、お前は普段から頑張っている。これくらいは、兄としてさせてくれ」

「お兄……うん!ありがとう!」

「ふふ、いいお兄さんね?では、お預かりします」

そして、お釣りをもらい、移動する。


そのお釣りで、一階にあるアイス屋でアイスを買う。

「これ、美味しいね!」

「そうだな。読書やゲームには、糖分が必須だからな。これで、帰ってから戦える」

「私が言ったのは、そういうのじゃないんだけど?……はぁ、お兄だし、仕方ないか」

そして食べ終えると、麻里奈が言う。

「じゃあ、私3人分の昼食買って来るね!」

「おう、気をつけるんだぞー?」

「うん、わかった!」

そうして軽快な足取りで、向こうへ行った。

「フゥ、疲れた。女の買い物は長いからなぁ……まあ、これでしばらくはご機嫌だろう」

妹が可愛いのはもちろんだが、俺にも打算がある。
洋服も買ってあげたし、文句も減るだろう。

あー……いかん。
陽気のせいか、眠くなってきたな……。
俺が眠気と戦っていると、声をかけられた。

「あ、あの!寝ているところ、ごめんなさい!」

「ん……?誰だ?」

俺が目を開けると、そこにはとてつもなく可愛い女の子がいた。
……マズイ、マズイぞ!
こいつは、清水綾!!

「あ、あの!昨日助けてもらった者です!良かった……また、会えた」

俺は、鈍感系主人公ではないのでわかる。
この子、俺に好意を持っているな。
だが、あくまでも吊り橋効果だろう。
後で、こんな人とは思わなかったとか言われるに違いない。
ふっ、そんな勘違いで恥をかきたくない!
ならば、俺の取るべき行動は1つ!

「あー、さらば!俺のことは忘れてくれ!アンタなら、もっと良い男がいるさ!」

俺は荷物を持ち、全力で走り去る!

「え!?ま、待ってください!」

俺はそれを聞かずに、走り去った。

フゥ、ここまでくれば平気だろう。

惜しい気持ちはあるが、俺は自分の時間が欲しいのだ……!

妹に電話し、合流する。

「どうしたの?」

「いや、散歩しててな」

「ふーん?まあ、いいや。帰ろう?」

「だな、親父が待っているしな」

そして、帰って3人で昼食を食べる。

俺は部屋にこもり、ゲーム三昧。

フハハ!これだよ!これ!やっぱり楽しいな!

そして、あっという間に時間は過ぎ、夕飯時になる。

「お前、またゲームばかりで………」

「まあまあ、お父さん。いいじゃん、お兄はやることはやってるんだし」

「ん?そうか?……まあ、ほどほどにな」

「ああ、気をつけるよ」

よし!昼間の買い物が効いたな!

だが、この時の俺は知らない。

既に、致命的なミスを犯したことを……。



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