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料理人は人々と交流する
共同作業
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その後、話し合いを済ませたアリアさんと合流する。
俺はと言えば、報酬である小麦粉や卵をもらってホクホクである。
「どうでしたか? こっちは有難いことにお礼を頂きました」
「ふふ、それは良かったな。とりあえず、こちらも大きな問題はなさそうだ。奇跡的に人的被害もないから、誰も文句は言わんだろう。他の誰であっても、タツマ以上のことはできなかったからな」
「それでは、キングオクトパスはもらっても?」
「そもそも、誰も欲しがらんさ」
そうだった、不味いから食わないんだった。
しかし、折角の美味いものを知らないというのは可哀想だ。
「あれを使って、何処かで料理はできますか?」
「ああ、可能だと思う。タツマの要望なら、ある程度は通るだろう」
「それでは、住民達に作ってあげたい料理があります。もちろん、今回は無料で」
「ふむ……何か大きな事件があった後は、それを払拭するイベントをやるのが定番だ。タツマの料理をそれに当てるのもありか……わかった、確認するから待っててくれ」
「はい、ありがとうございます」
アリアさんが再び話し合いをする中、俺はハクを撫で回す。
「ハク、お前にも食わせてやるからな」
「ワフッ!」
ハクは嬉しいのか、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。
どうやら、飼い主に似て食いしん坊になったらしい。
そして許可が下り、俺は早速準備に入る。
しかし、その時に重大なことに気づいてしまった。
「アリアさん、小さい穴がいくつも空いた鉄製の鍋とかないですよね?」
「なんだそれは? ……聞いたことがないな」
……それゃそうだ。
この世界にたこ焼き機なるものがあるわけがない。
そもそも、そのタコを食べないんだから。
「はぁ……どうするかな」
「ん? その道具がないと作れないのか?」
「いえ、そんなこともないんですけどね……ん? いや待て……そしたら、あっちを作ればいいのか?」
「何か妙案が浮かんだか?」
「ええ、どうにかなりそうです」
考えがまとまった俺は、屋台用に使う鉄板と、調理用具一式を用意してもらう。
そして港付近の場所を借り、アリアさんと料理を始める。
「言っておくが、私は戦力にならんぞ?」
「大丈夫ですよ、料理と言っても簡単なものなので」
「そうなのか? では、頑張ってみよう」
そう言い、両手の拳を握り気合を入れてフンスフンスしている……可愛い。
そんなことを思いつつ、俺は器に水に卵、そして小麦粉と片栗粉、塩を加える。
「これを混ぜてください」
「ただ混ぜるだけでいいのか?」
「ええ、もったりするまで良く混ぜてください。俺はその間に、具材を仕込みます」
「うむ、任せろ」
アリアさんの作業を横目で見ながら、まな板で大量の玉ねぎやニラを刻んでいく。
最後に茹でて下処理したタコを細かく刻んで、野菜と合わせる。
これを繰り返していき、どんどんタネが出来上がっていく。
「タツマ、できたぞ」
「ありがとうございます。それじゃ、その工程を繰り返していきましょう。材料は、俺が使っていた通りに。とにかく、量が必要になるので。ある程度、分量は気にしなくていいので」
「なるほど、タツマがやっていたようにやればいいのか。あれくらいなら、私でも出来そうだな」
そう言い、アリアさんは鼻歌を歌いながら水に小麦粉などを加えていく。
俺は手が止まり、その様子を眺めてしまう……なんか、新婚さんみたいだな。
すると、アリアさんと目が合った。
「ん? な、何か間違えただろうか?」
「い、いえ! 鼻歌を歌っていたので……」
「……へっ? わ、私が?」
「あれ? 気づいてませんでしたか?」
「うぅー……なんたることだ」
今度は耳が赤くなって俯いてしまう。
可愛い、うん、可愛い……我ながら語彙力が死んでる。
その後、作業をするが鼻歌が聞こえることはなかった。
……しまった、言わなければ良かった。
~あとがき~
新作を投稿したので、よろしければご覧くださいませ(*´∀`*)
「追放された英雄の辺境生活~静かに過ごしたいのに周りが放ってくれない~」
私らしい作品となっておりますので、よろしくお願いいたします🙇♂️
俺はと言えば、報酬である小麦粉や卵をもらってホクホクである。
「どうでしたか? こっちは有難いことにお礼を頂きました」
「ふふ、それは良かったな。とりあえず、こちらも大きな問題はなさそうだ。奇跡的に人的被害もないから、誰も文句は言わんだろう。他の誰であっても、タツマ以上のことはできなかったからな」
「それでは、キングオクトパスはもらっても?」
「そもそも、誰も欲しがらんさ」
そうだった、不味いから食わないんだった。
しかし、折角の美味いものを知らないというのは可哀想だ。
「あれを使って、何処かで料理はできますか?」
「ああ、可能だと思う。タツマの要望なら、ある程度は通るだろう」
「それでは、住民達に作ってあげたい料理があります。もちろん、今回は無料で」
「ふむ……何か大きな事件があった後は、それを払拭するイベントをやるのが定番だ。タツマの料理をそれに当てるのもありか……わかった、確認するから待っててくれ」
「はい、ありがとうございます」
アリアさんが再び話し合いをする中、俺はハクを撫で回す。
「ハク、お前にも食わせてやるからな」
「ワフッ!」
ハクは嬉しいのか、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。
どうやら、飼い主に似て食いしん坊になったらしい。
そして許可が下り、俺は早速準備に入る。
しかし、その時に重大なことに気づいてしまった。
「アリアさん、小さい穴がいくつも空いた鉄製の鍋とかないですよね?」
「なんだそれは? ……聞いたことがないな」
……それゃそうだ。
この世界にたこ焼き機なるものがあるわけがない。
そもそも、そのタコを食べないんだから。
「はぁ……どうするかな」
「ん? その道具がないと作れないのか?」
「いえ、そんなこともないんですけどね……ん? いや待て……そしたら、あっちを作ればいいのか?」
「何か妙案が浮かんだか?」
「ええ、どうにかなりそうです」
考えがまとまった俺は、屋台用に使う鉄板と、調理用具一式を用意してもらう。
そして港付近の場所を借り、アリアさんと料理を始める。
「言っておくが、私は戦力にならんぞ?」
「大丈夫ですよ、料理と言っても簡単なものなので」
「そうなのか? では、頑張ってみよう」
そう言い、両手の拳を握り気合を入れてフンスフンスしている……可愛い。
そんなことを思いつつ、俺は器に水に卵、そして小麦粉と片栗粉、塩を加える。
「これを混ぜてください」
「ただ混ぜるだけでいいのか?」
「ええ、もったりするまで良く混ぜてください。俺はその間に、具材を仕込みます」
「うむ、任せろ」
アリアさんの作業を横目で見ながら、まな板で大量の玉ねぎやニラを刻んでいく。
最後に茹でて下処理したタコを細かく刻んで、野菜と合わせる。
これを繰り返していき、どんどんタネが出来上がっていく。
「タツマ、できたぞ」
「ありがとうございます。それじゃ、その工程を繰り返していきましょう。材料は、俺が使っていた通りに。とにかく、量が必要になるので。ある程度、分量は気にしなくていいので」
「なるほど、タツマがやっていたようにやればいいのか。あれくらいなら、私でも出来そうだな」
そう言い、アリアさんは鼻歌を歌いながら水に小麦粉などを加えていく。
俺は手が止まり、その様子を眺めてしまう……なんか、新婚さんみたいだな。
すると、アリアさんと目が合った。
「ん? な、何か間違えただろうか?」
「い、いえ! 鼻歌を歌っていたので……」
「……へっ? わ、私が?」
「あれ? 気づいてませんでしたか?」
「うぅー……なんたることだ」
今度は耳が赤くなって俯いてしまう。
可愛い、うん、可愛い……我ながら語彙力が死んでる。
その後、作業をするが鼻歌が聞こえることはなかった。
……しまった、言わなければ良かった。
~あとがき~
新作を投稿したので、よろしければご覧くださいませ(*´∀`*)
「追放された英雄の辺境生活~静かに過ごしたいのに周りが放ってくれない~」
私らしい作品となっておりますので、よろしくお願いいたします🙇♂️
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