63 / 69
料理人は人々と交流する
提案
しおりを挟む
俺は目に意識を集中させ、海から出てきた大きなナニかを確認する。
全身が赤い皮膚、大きな頭、足らしきものが8本……それは何処からどう見ても、大きなタコにしか見えなかった。
「キングオクトパスだと!? こんな海域にいる魔獣ではない!」
「ククーン?」
「キングオクトパスですか……」
やはり、タコであってるらしい。
タコ……食べたいな。
たこ焼き、タコチャーハン、醤油で焼いても良い。
カルパッチョ風にしたり、マリネにしても良い。
「まずは、この港の責任者に会わなくてはいけない。すぐに住民達を高台に避難させねば……全く、非番だというのに」
「アリアさん、待ってください。襲われてるあの船は? そして、高台に避難とは?」
俺は慌てて何処かに行こうとするアリアさんを引き止める。
「…あの船の救出は間に合わん。これから魔法部隊を集め、戦闘用の船に乗せる。その頃には、海の藻屑となっているだろう。無論、救助隊は出すが……そして、あの大きさの魔獣が暴れると……わかるな?」
「……なるほど、津波ですか」
「そうだ。堤防があるとはいえ、それを乗り越えて入ってくる可能性もある。何より、奴自身が堤防を破壊することありえる」
「わかりました。それでアリアさんは? 俺にできることはありますか?」
「私は責任者に掛け合って、共に討伐に向かう。タツマは近接戦闘しかできないから……ひとまず、ここで待っててくれ」
……それでは、やはり間に合わないか。
どうにかして、助けることはできないだろうか?
「目の前で人が襲われているのに、ここで待ってるだけか」
「クゥン?」
「タツマ?」
ハクが俺の足元にきて、上目遣いをしてくる。
おそらく、『どうしたのー?』とでも聞いているのだろう。
「ふむ……美味そうだし、俺は冒険者であれは魔獣だ。そして、人が死にそうになっているのは放って置けない……やるか?」
「キャン!」
「おっ、ハクもやる気か? ……よし、失敗してもいいからやってみるとしよう。ハク、今から俺が作戦を伝える。これは、お前にかかっているが……どうだ? やってみるか?」
「ワフッ!」
「タツマ、どういうことだろうか?」
「すみません、少し作戦があるのですが……」
俺は思いついた作戦を、ハクとアリアさんにはに伝える。
すると、ハクが尻尾を振ってやる気を見せたので決行することにした。
ちなみに、アリアさんにはため息をつかれてしまった……しかし、その顔は仄かに微笑んでいた。
◇
ええい! 何もこんな時に!
たまには、私にもゆっくりさせてくれ!
「やはり、タツマといて何も起こらないというとはないか。全く、折角のデート……ではないが、非番だったというのに」
いや、別に今回はタツマは悪くないか。
いかんな……この浮かれた気持ちを抑えなくては。
「しかし、こんな普通の女性のような格好をしていては難しい」
まさか、こんなに楽しいとは。
護衛をぞろぞろと引き連れずに都市の外に出たり、違う街に行って観光や屋台を回ったり。
終いにはハクがいるとはいえ、うたた寝をしてしまうとはな。
「……つい、楽しくてはしゃいでしまったではないか」
まさか、こんな私に女の子みたいな出来事があるとは。
そして、それを悪くないと思っている自分がいる。
そんなことを考えていると、タツマが実験を終えて波打ち際から戻ってくる。
「アリアさん、どうにかなりそうです。それでは、行ってきます」
「何を言っている? 私もいくに決まっている」
「えっ? で、ですが、危険ですよ?」
「危険なのも、足手まといなのもわかっている。だが、この国の王族として黙ってみることなどできない。何より、私がいた方が話が早いはずだ」
「どういう意味ですか?」
「……こんな時に嫌な話だが、勝手に倒したことで文句を言う連中もいる。自分が倒すつもりだったとかな」
倒せれば、その素材は倒した者の物になる。
名声も入るし、命をかける者もいるだろう。
だが、そんなことのために民を死なせるわけにはいかない。
「あぁー……何となくわかりました。では、抱き抱えますが……」
「う、うむ、遠慮しなくていい」
「失礼しますっと」
「っ~!?」
こ、声を出さなかった自分を褒めたい!
お、お姫様抱っこされてる!?
「へ、平気ですか?」
「あ、ああ、問題ない」
「それでは、ハクは俺の肩に乗れ。この作戦はお前にかかってる……やれるか?」
「ワフッ!」
「よし……行くぞ!」
そしてタツマが、足場のない海に向けて走り出す。
私はタツマの首に腕を回し、ぎゅっと力を入れてしまうのだった。
全身が赤い皮膚、大きな頭、足らしきものが8本……それは何処からどう見ても、大きなタコにしか見えなかった。
「キングオクトパスだと!? こんな海域にいる魔獣ではない!」
「ククーン?」
「キングオクトパスですか……」
やはり、タコであってるらしい。
タコ……食べたいな。
たこ焼き、タコチャーハン、醤油で焼いても良い。
カルパッチョ風にしたり、マリネにしても良い。
「まずは、この港の責任者に会わなくてはいけない。すぐに住民達を高台に避難させねば……全く、非番だというのに」
「アリアさん、待ってください。襲われてるあの船は? そして、高台に避難とは?」
俺は慌てて何処かに行こうとするアリアさんを引き止める。
「…あの船の救出は間に合わん。これから魔法部隊を集め、戦闘用の船に乗せる。その頃には、海の藻屑となっているだろう。無論、救助隊は出すが……そして、あの大きさの魔獣が暴れると……わかるな?」
「……なるほど、津波ですか」
「そうだ。堤防があるとはいえ、それを乗り越えて入ってくる可能性もある。何より、奴自身が堤防を破壊することありえる」
「わかりました。それでアリアさんは? 俺にできることはありますか?」
「私は責任者に掛け合って、共に討伐に向かう。タツマは近接戦闘しかできないから……ひとまず、ここで待っててくれ」
……それでは、やはり間に合わないか。
どうにかして、助けることはできないだろうか?
「目の前で人が襲われているのに、ここで待ってるだけか」
「クゥン?」
「タツマ?」
ハクが俺の足元にきて、上目遣いをしてくる。
おそらく、『どうしたのー?』とでも聞いているのだろう。
「ふむ……美味そうだし、俺は冒険者であれは魔獣だ。そして、人が死にそうになっているのは放って置けない……やるか?」
「キャン!」
「おっ、ハクもやる気か? ……よし、失敗してもいいからやってみるとしよう。ハク、今から俺が作戦を伝える。これは、お前にかかっているが……どうだ? やってみるか?」
「ワフッ!」
「タツマ、どういうことだろうか?」
「すみません、少し作戦があるのですが……」
俺は思いついた作戦を、ハクとアリアさんにはに伝える。
すると、ハクが尻尾を振ってやる気を見せたので決行することにした。
ちなみに、アリアさんにはため息をつかれてしまった……しかし、その顔は仄かに微笑んでいた。
◇
ええい! 何もこんな時に!
たまには、私にもゆっくりさせてくれ!
「やはり、タツマといて何も起こらないというとはないか。全く、折角のデート……ではないが、非番だったというのに」
いや、別に今回はタツマは悪くないか。
いかんな……この浮かれた気持ちを抑えなくては。
「しかし、こんな普通の女性のような格好をしていては難しい」
まさか、こんなに楽しいとは。
護衛をぞろぞろと引き連れずに都市の外に出たり、違う街に行って観光や屋台を回ったり。
終いにはハクがいるとはいえ、うたた寝をしてしまうとはな。
「……つい、楽しくてはしゃいでしまったではないか」
まさか、こんな私に女の子みたいな出来事があるとは。
そして、それを悪くないと思っている自分がいる。
そんなことを考えていると、タツマが実験を終えて波打ち際から戻ってくる。
「アリアさん、どうにかなりそうです。それでは、行ってきます」
「何を言っている? 私もいくに決まっている」
「えっ? で、ですが、危険ですよ?」
「危険なのも、足手まといなのもわかっている。だが、この国の王族として黙ってみることなどできない。何より、私がいた方が話が早いはずだ」
「どういう意味ですか?」
「……こんな時に嫌な話だが、勝手に倒したことで文句を言う連中もいる。自分が倒すつもりだったとかな」
倒せれば、その素材は倒した者の物になる。
名声も入るし、命をかける者もいるだろう。
だが、そんなことのために民を死なせるわけにはいかない。
「あぁー……何となくわかりました。では、抱き抱えますが……」
「う、うむ、遠慮しなくていい」
「失礼しますっと」
「っ~!?」
こ、声を出さなかった自分を褒めたい!
お、お姫様抱っこされてる!?
「へ、平気ですか?」
「あ、ああ、問題ない」
「それでは、ハクは俺の肩に乗れ。この作戦はお前にかかってる……やれるか?」
「ワフッ!」
「よし……行くぞ!」
そしてタツマが、足場のない海に向けて走り出す。
私はタツマの首に腕を回し、ぎゅっと力を入れてしまうのだった。
743
お気に入りに追加
2,968
あなたにおすすめの小説
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています
葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。
そこはど田舎だった。
住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。
レコンティーニ王国は猫に優しい国です。
小説家になろう様にも掲載してます。
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍2巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺若葉
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
W職業持ちの異世界スローライフ
Nowel
ファンタジー
仕事の帰り道、トラックに轢かれた鈴木健一。
目が覚めるとそこは魂の世界だった。
橋の神様に異世界に転生か転移することを選ばせてもらい、転移することに。
転移先は森の中、神様に貰った力を使いこの森の中でスローライフを目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる