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料理人は人々と交流する
砂浜デート
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俺は依頼人に荷物を届け、ギルドに報告する。
そして、急いでアリアさんの元に向かう。
アリアさんは言っていた通り、海沿いのベンチに座っていた。
その側では、ハクが番犬のように足元にいる。
「アリア……」
「キャン……!」
俺が声をかけようとすると、ハクが小声で止めてくる。
なので、静かに近寄ると……。
「ハク? ……なるほど」
「すぅ……」
そこには、スヤスヤと寝ているアリアさんがいた。
その無防備な姿は、景色と相まってとても綺麗だった。
「ハク、きちんと守ってくれたようだな?」
「ワフッ」
「いい子だ」
どうやら、トラブル等はなかったらしい。
俺がハクの頭を撫でていると……。
「ククーン?」
「ん? ……ああ、起さなくていいだろう。もう少し、寝かせてあげよう」
「ワフッ」
おそらく、普段は忙しくてゆっくりする時間もないのだろう。
すると、お昼を過ぎたからか人集りが出来てきた。
なので俺も隣に座り、アリアさんの護衛を引き継ぐ。
「……すぅ……」
「……いかんいかん、あんまり見るものじゃない」
綺麗なので、つい見てしまう。
ここが海沿いで、正面に誰もいなくて良かった。
すると、肩に重みを感じ……横を見ると、アリアさんが肩に寄りかかっていた。
「な、な……」
「……うぅー……すぅ」
「ど、どうする?」
髪の香りやら、腕に当たる柔らかな感触に戸惑う。
だが、どうすることもできないので……景色を見ることに集中して無になる。
……無論、無になれるわけがなかったが。
◇
そして、膝に乗ったハクを撫でていると……アリアさんが身じろぎをする。
「ん……私は一体?」
「あっ、起きましたか?」
「……な、なっ~!? すまない!」
目があったアリアさんが、俺から飛び起きるように離れる。
少し残念でありが、同時にホッとした。
「いえ、お気になさらずに」
「よ、よだれとか……寝言とか」
「別に平気ですよ。それと、ハクがしっかり番犬をしてたみたいですから」
「ワフッ!」
「そうか。ふふ……ハク、ありがとう」
ハクが俺の膝からアリアさんに飛び乗り、頭を撫でられてご機嫌な様子だ。
「さて、この後はどうしますか?」
「そうだな……お腹も空いたが、その前に少し砂浜を歩かないか?」
「キャウン!」
「おっ、どうやらハクも賛成みたいですね。それじゃ、歩きますか」
アリアさんとハクを連れて、すぐ近くにある階段を下りて砂浜を歩く。
ハクは初めての感触が楽しいのか、ずっと砂を踏みつけている。
「ワフッ!」
「そうか、楽しいか」
「キャウン!」
「ふふ、可愛いものだな。こうして遊んでいる様は、恐れられるフェンリルとは思えんな」
……ん? これって良く良く考えてみたら、めちゃくちゃデートっぽくないか?
犬を連れて、私服姿の女性と散歩をする。
今は依頼もないので、俺自身もプライベートな時間だ。
「タツマよ、どうしたのだ?」
「い、いえ、なんでもありません」
下から覗き込まれて、思わず動揺してしまう。
これでは、本当にデートのようではないか。
「ふふ、変な奴め」
「キャンキャン!」
「ハクが早く早くって言ってますね」
「よし、私達も少し走るとするか」
駆けるハクを追いかけ、アリアさんがスカート持ち上げて走る。
俺はその非日常的な景色に見惚れて、しばらく立ち尽くしてしまう。
「ほら! タツマも!」
「え、ええっ!」
慌てて追いかけて、並んで軽く走る。
それだけで、なんだかめちゃくちゃ楽しい。
「それにしても……こうして、のんびりできるのは久しぶりだ。タツマには感謝しないといけないな」
「いえいえ、こちらは付き合ってもらってる身ですから」
「しかし、私が来た意味はお主の監視だったのだぞ? 特に問題も起きてないし、これではただの休みではないか」
「まるで、いつも俺か何か問題を起こして……はい、すみません」
ジト目で睨まれたので、すぐに手を上げて降参のポーズを取る。
確かに、問題ばかり起こしてる気がするし。
「ふふ、今回は何もなさそうで良かったよ」
「いやいや、ダメですって。そういうこというと、何かが起きるので……フラグってやつです」
「うん? それは異世界の知識か?」
「まあ、そんなものです」
「なるほど……ん? あれは何だ?」
アリアさんが指差す方を見ると、海から何かが這い出てきた。
それは海にある船の大きさを超えていた。
……ほら、やっぱりフラグだったじゃないか。
そして、急いでアリアさんの元に向かう。
アリアさんは言っていた通り、海沿いのベンチに座っていた。
その側では、ハクが番犬のように足元にいる。
「アリア……」
「キャン……!」
俺が声をかけようとすると、ハクが小声で止めてくる。
なので、静かに近寄ると……。
「ハク? ……なるほど」
「すぅ……」
そこには、スヤスヤと寝ているアリアさんがいた。
その無防備な姿は、景色と相まってとても綺麗だった。
「ハク、きちんと守ってくれたようだな?」
「ワフッ」
「いい子だ」
どうやら、トラブル等はなかったらしい。
俺がハクの頭を撫でていると……。
「ククーン?」
「ん? ……ああ、起さなくていいだろう。もう少し、寝かせてあげよう」
「ワフッ」
おそらく、普段は忙しくてゆっくりする時間もないのだろう。
すると、お昼を過ぎたからか人集りが出来てきた。
なので俺も隣に座り、アリアさんの護衛を引き継ぐ。
「……すぅ……」
「……いかんいかん、あんまり見るものじゃない」
綺麗なので、つい見てしまう。
ここが海沿いで、正面に誰もいなくて良かった。
すると、肩に重みを感じ……横を見ると、アリアさんが肩に寄りかかっていた。
「な、な……」
「……うぅー……すぅ」
「ど、どうする?」
髪の香りやら、腕に当たる柔らかな感触に戸惑う。
だが、どうすることもできないので……景色を見ることに集中して無になる。
……無論、無になれるわけがなかったが。
◇
そして、膝に乗ったハクを撫でていると……アリアさんが身じろぎをする。
「ん……私は一体?」
「あっ、起きましたか?」
「……な、なっ~!? すまない!」
目があったアリアさんが、俺から飛び起きるように離れる。
少し残念でありが、同時にホッとした。
「いえ、お気になさらずに」
「よ、よだれとか……寝言とか」
「別に平気ですよ。それと、ハクがしっかり番犬をしてたみたいですから」
「ワフッ!」
「そうか。ふふ……ハク、ありがとう」
ハクが俺の膝からアリアさんに飛び乗り、頭を撫でられてご機嫌な様子だ。
「さて、この後はどうしますか?」
「そうだな……お腹も空いたが、その前に少し砂浜を歩かないか?」
「キャウン!」
「おっ、どうやらハクも賛成みたいですね。それじゃ、歩きますか」
アリアさんとハクを連れて、すぐ近くにある階段を下りて砂浜を歩く。
ハクは初めての感触が楽しいのか、ずっと砂を踏みつけている。
「ワフッ!」
「そうか、楽しいか」
「キャウン!」
「ふふ、可愛いものだな。こうして遊んでいる様は、恐れられるフェンリルとは思えんな」
……ん? これって良く良く考えてみたら、めちゃくちゃデートっぽくないか?
犬を連れて、私服姿の女性と散歩をする。
今は依頼もないので、俺自身もプライベートな時間だ。
「タツマよ、どうしたのだ?」
「い、いえ、なんでもありません」
下から覗き込まれて、思わず動揺してしまう。
これでは、本当にデートのようではないか。
「ふふ、変な奴め」
「キャンキャン!」
「ハクが早く早くって言ってますね」
「よし、私達も少し走るとするか」
駆けるハクを追いかけ、アリアさんがスカート持ち上げて走る。
俺はその非日常的な景色に見惚れて、しばらく立ち尽くしてしまう。
「ほら! タツマも!」
「え、ええっ!」
慌てて追いかけて、並んで軽く走る。
それだけで、なんだかめちゃくちゃ楽しい。
「それにしても……こうして、のんびりできるのは久しぶりだ。タツマには感謝しないといけないな」
「いえいえ、こちらは付き合ってもらってる身ですから」
「しかし、私が来た意味はお主の監視だったのだぞ? 特に問題も起きてないし、これではただの休みではないか」
「まるで、いつも俺か何か問題を起こして……はい、すみません」
ジト目で睨まれたので、すぐに手を上げて降参のポーズを取る。
確かに、問題ばかり起こしてる気がするし。
「ふふ、今回は何もなさそうで良かったよ」
「いやいや、ダメですって。そういうこというと、何かが起きるので……フラグってやつです」
「うん? それは異世界の知識か?」
「まあ、そんなものです」
「なるほど……ん? あれは何だ?」
アリアさんが指差す方を見ると、海から何かが這い出てきた。
それは海にある船の大きさを超えていた。
……ほら、やっぱりフラグだったじゃないか。
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