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料理人は人々と交流する
ハンターギルドにて
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苦しい……息が出来ない?
「ブハァ! ハァ、ハァ……ハク、またお前か」
「クゥン?」
「いや、なにか?みたい顔されても……俺を窒息死させる気か?」
どうやら、また俺の顔に乗っかっていたらしい。
そりゃ、苦しいに決まってる。
しかも、だんだんと大きくなってるから尚更だ。
「キャン!」
「はいはい、お腹が空いたんだな」
部屋を出て二階のキッチンに行くと、エルルとカイルが待っていた。
その側にはドランがいて、椅子に座って読書をしている。
「にいちゃん! お腹減った!」
「タツマさん、おはようございます」
「おはよう、二人共。すぐに出来るから待ってなさい。ハク、二人と遊んでやれ」
「キャン!」
「「わーい!!」」
知り合ってから少し経って、この二人も変わった。
というより、本来の性質に戻ったという方が正しいか。
兄であるカイルは意外と甘えん坊で、エルルの方が意外としっかりしてそうだ。
きっと、カイルは妹を守るために気を張ってきたのだろう。
なので、少しくらい甘やかしてもバチは当たるまい。
「さて、スープとハンバーガーにでもするか」
「コホン! タツマよ……」
「くく、わかってるよ。ドランの分も用意するさ」
「おおっ! 感謝する!」
そして、俺の隣に立ってくる。
「タツマよ、今日から我は休みだ。お主が良ければ、ダンジョンへ行ってくるといい」
「なに? ……それじゃ、行くとするか。ハクは連れて行って平気だろうか?」
「幼いとはいえフェンリルだ、そこまで問題はあるまい。むしろ、野生的な勘が必要な場面もある。ただし、誰か案内役を雇うことをオススメする」
「案内役……そうだな、命には変えられない」
「そういうことだ。いくら強くとも、死ぬときは死ぬ」
その言葉を肝に命じつつ、俺は調理を続ける。
オークの余った肉と骨、そして野菜を煮込んだスープ。
オーク肉をミンチにして調味料を混ぜて薄べったく焼き、それをトマトと共にパンに挟む。
出来上がったら五人で朝食を食べる。
「朝から美味い食事にありつけるとは!」
「美味しい!」
「にいちゃん美味い!」
「そいつは良かった。本当は、もっと朝食っぽくしたいのだが」
どうやら、この世界の料理はあまり発展していない。
まさか、ベーコンやウインナーまでないとは思わなかった。
おそらく魔法の壺と、魔法があるから保存食が発明されなかったのだろう。
発酵食品などは海を渡って輸入されてくるらしいので、もしかしたら他の大陸にはあるのかもしれない。
◇
食事を済ませたら、二人に説明をして宿を出る。
寂しそうにしていたが、これも二人の成長のためでもある。
甘やかすだけが子育てではないと、親父さんから学んでいるし。
そして、ハンターギルドに入り受付に向かう。
「こんにちは」
「あっ、ギルドマスターの……ご用件はなんでしょうか?」
「えっと、ダンジョンに行きたいのですが……案内人とか雇えますかね?」
「少々お待ちください!」
「えっ? ……なんだ?」
受付の女性が奥の扉に入り、すぐに入れ替わりでギルドマスターが扉から出てくる。
「すまん、待たせたな」
「い、いえ、全然ですよ。それより、なんでギルドマスターが?」
「お主は少し特別なのでな。何か特殊な依頼や受注があれば、俺に伝えるように徹底させてある」
「は、はぁ……」
なんか、問題児扱いされてるのは気のせいだろうか?
なんか、受付の人の見る目も違うし。
他のハンターたちも、俺を見てヒソヒソしていた。
「お主は突然現れ、新人にしてコカトリスを単独で倒したのだ。C級にも最速で上がったし、その辺りの自覚を持ってくれ」
「す、すみません」
「まあ、威張り散らすよりはいい。それで、ダンジョンの案内人が欲しいと?」
「はい、初めてなので。ハクも連れて行くので指導してくれる人が欲しいですね」
「ワフッ!」
「良い心がけだ。いくら強くとも、あそこは特殊な場所だからな。さて、そうなるとC級以上のハンターが必要に……」
そのとき、俺の背中に何か柔らかなモノが当たる。
同時に、顔に絹のような綺麗な金の髪が触れた。
「ヤッホー! タツマ!」
「……カルラ、いきなり背中に乗らないでくれ」
「なんでよー? 別にいいじゃない」
「はぁ……」
こちとら、耐性がまるでないのだから。
というか、今の俺が気配にも気づけないとは……流石はA級ハンターってところか。
「おい、話の邪魔をするな……ん? 丁度いいのがいたな。タツマ、カルラに案内してもらえ。こいつは斥候役でもあるから、罠なども探知できる」
「なになに? なんの話?」
「タツマがダンジョンに行きたいらしい。んで、その案内人を探してるってことだ」
「なにそれ!? めちゃくちゃ面白そうじゃない! なんで私に言わないの!」
「だから、こうして言ってるだろうが」
「わかったわ! タツマすぐにでも行くわよ!」
「ちょっ!? 引っ張るなって!」
「こっちの方で受注とかはしとくからなー! では気をつけて行ってこい!」
俺が何も言わないうちに、全てが決まってしまったらしい。
そうして俺は、ハンターギルドから連れ出されるのだった。
「ブハァ! ハァ、ハァ……ハク、またお前か」
「クゥン?」
「いや、なにか?みたい顔されても……俺を窒息死させる気か?」
どうやら、また俺の顔に乗っかっていたらしい。
そりゃ、苦しいに決まってる。
しかも、だんだんと大きくなってるから尚更だ。
「キャン!」
「はいはい、お腹が空いたんだな」
部屋を出て二階のキッチンに行くと、エルルとカイルが待っていた。
その側にはドランがいて、椅子に座って読書をしている。
「にいちゃん! お腹減った!」
「タツマさん、おはようございます」
「おはよう、二人共。すぐに出来るから待ってなさい。ハク、二人と遊んでやれ」
「キャン!」
「「わーい!!」」
知り合ってから少し経って、この二人も変わった。
というより、本来の性質に戻ったという方が正しいか。
兄であるカイルは意外と甘えん坊で、エルルの方が意外としっかりしてそうだ。
きっと、カイルは妹を守るために気を張ってきたのだろう。
なので、少しくらい甘やかしてもバチは当たるまい。
「さて、スープとハンバーガーにでもするか」
「コホン! タツマよ……」
「くく、わかってるよ。ドランの分も用意するさ」
「おおっ! 感謝する!」
そして、俺の隣に立ってくる。
「タツマよ、今日から我は休みだ。お主が良ければ、ダンジョンへ行ってくるといい」
「なに? ……それじゃ、行くとするか。ハクは連れて行って平気だろうか?」
「幼いとはいえフェンリルだ、そこまで問題はあるまい。むしろ、野生的な勘が必要な場面もある。ただし、誰か案内役を雇うことをオススメする」
「案内役……そうだな、命には変えられない」
「そういうことだ。いくら強くとも、死ぬときは死ぬ」
その言葉を肝に命じつつ、俺は調理を続ける。
オークの余った肉と骨、そして野菜を煮込んだスープ。
オーク肉をミンチにして調味料を混ぜて薄べったく焼き、それをトマトと共にパンに挟む。
出来上がったら五人で朝食を食べる。
「朝から美味い食事にありつけるとは!」
「美味しい!」
「にいちゃん美味い!」
「そいつは良かった。本当は、もっと朝食っぽくしたいのだが」
どうやら、この世界の料理はあまり発展していない。
まさか、ベーコンやウインナーまでないとは思わなかった。
おそらく魔法の壺と、魔法があるから保存食が発明されなかったのだろう。
発酵食品などは海を渡って輸入されてくるらしいので、もしかしたら他の大陸にはあるのかもしれない。
◇
食事を済ませたら、二人に説明をして宿を出る。
寂しそうにしていたが、これも二人の成長のためでもある。
甘やかすだけが子育てではないと、親父さんから学んでいるし。
そして、ハンターギルドに入り受付に向かう。
「こんにちは」
「あっ、ギルドマスターの……ご用件はなんでしょうか?」
「えっと、ダンジョンに行きたいのですが……案内人とか雇えますかね?」
「少々お待ちください!」
「えっ? ……なんだ?」
受付の女性が奥の扉に入り、すぐに入れ替わりでギルドマスターが扉から出てくる。
「すまん、待たせたな」
「い、いえ、全然ですよ。それより、なんでギルドマスターが?」
「お主は少し特別なのでな。何か特殊な依頼や受注があれば、俺に伝えるように徹底させてある」
「は、はぁ……」
なんか、問題児扱いされてるのは気のせいだろうか?
なんか、受付の人の見る目も違うし。
他のハンターたちも、俺を見てヒソヒソしていた。
「お主は突然現れ、新人にしてコカトリスを単独で倒したのだ。C級にも最速で上がったし、その辺りの自覚を持ってくれ」
「す、すみません」
「まあ、威張り散らすよりはいい。それで、ダンジョンの案内人が欲しいと?」
「はい、初めてなので。ハクも連れて行くので指導してくれる人が欲しいですね」
「ワフッ!」
「良い心がけだ。いくら強くとも、あそこは特殊な場所だからな。さて、そうなるとC級以上のハンターが必要に……」
そのとき、俺の背中に何か柔らかなモノが当たる。
同時に、顔に絹のような綺麗な金の髪が触れた。
「ヤッホー! タツマ!」
「……カルラ、いきなり背中に乗らないでくれ」
「なんでよー? 別にいいじゃない」
「はぁ……」
こちとら、耐性がまるでないのだから。
というか、今の俺が気配にも気づけないとは……流石はA級ハンターってところか。
「おい、話の邪魔をするな……ん? 丁度いいのがいたな。タツマ、カルラに案内してもらえ。こいつは斥候役でもあるから、罠なども探知できる」
「なになに? なんの話?」
「タツマがダンジョンに行きたいらしい。んで、その案内人を探してるってことだ」
「なにそれ!? めちゃくちゃ面白そうじゃない! なんで私に言わないの!」
「だから、こうして言ってるだろうが」
「わかったわ! タツマすぐにでも行くわよ!」
「ちょっ!? 引っ張るなって!」
「こっちの方で受注とかはしとくからなー! では気をつけて行ってこい!」
俺が何も言わないうちに、全てが決まってしまったらしい。
そうして俺は、ハンターギルドから連れ出されるのだった。
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