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料理人は人々と交流する
お礼に頼みごと
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仕上げに入る頃、セバスさんも仕事を終えてやってくる。
「これはこれは良い香りですね」
「ありがとうございます。もう仕上げに入るので、席に着いてください」
これで全員が揃ったし、仕上げに入るとしよう。
最後に、バターと小麦粉を入れてとろみをつける……これで料理の完成だ。
パンを用意して、全員でテーブルに着く。
「では、どうぞ。これが、オークの赤ワイン煮込みです」
「おおっ、感謝する……ッ!? う、美味い! ブトウの酸味と肉の甘みが混ざり合い、絶妙なハーモニーを奏でている!」
「そいつは良かった。おかわりもあるから沢山食べていいぞ」
「なんと!? ぐぬぬ……! これは何かしなければ、我の気がすまないぞ」
「だから、そういうのはいいって」
ふと横を見ると、セバスさんが綺麗な所作で食べていた。
その姿は英国紳士のようである……英国紳士見たことないけど。
「これは……美味しいですね。あのオーク肉が、これほど柔らかくなるとは」
「玉ねぎと一緒に炒めると、お肉が柔らかくなりますから」
「ほほう、そんな効果があるのですね。いやはや、いくつになっても新しいものは良いですな」
よし、大人組の評判は上々だ。
さて、この三人は静かだが……問題なさそうだ。
「もぐもぐ……ごくん」
「熱っ……もぐもぐ」
「ハフハフ……」
ほぼ無言で、ひたすら食べ進めていた。
ワインをよく飛ばしたので、子供でも平気そうだ。
「さて、俺も食べてみるとしようか……美味い」
オーク肉が口の中でほろほろと溶けていく!
とろみがあることにより、味が綺麗に纏まっている。
オーク肉は割と庶民的なもの……これはメニューに加えて良いかもしれない。
その後、みんな満足いくまで食事を済ませる。
ハクと二人の子供は、端っこのソファーでスヤスヤと寝てしまった。
セバスさんはお礼を言って仕事に戻ったので、ドランと共にお茶をすることにした。
「とても美味で、素晴らしい食卓であった……タツマ、感謝する」
「いやいや、料理人にとって最高の褒め言葉だよ。こちらこそありがとう」
「ふっ、お主は変わり者だな。獣人を保護し、我を恐れない。さらに、フェンリルまで連れているとは」
「わかるのか?」
「我らにも伝わっておる、出会ったなら絶対に敵対してはいけないと。その爪は全てを切り裂き、神速の動きは瞬間移動のよう。気がついた時には、もう死んでいるとか。なにせ、我らの神である龍とも対等に渡り合える存在だからな……なのはずなのだが」
「ピスピス……」
俺とドランの視線は、お腹を出してスヤスヤ寝ているハクに向けられる。
なんか、みんな同じ反応をするよなぁ。
やっぱり、イメージと違うのだろう。
「やれやれ、伝承とはあてにならん」
「はは……この子は特別なのかも。実は、一人でいたところを拾ったんだ」
「ふむ、不思議なこともあるものだ」
「それより、龍が神ってどういうことだ?」
「この見た目通り、我らの祖は龍だと言われている。大昔、邪神が現れて世界を滅ぼそうとした。その時、偉大なる神龍が分体を生み出して力を貸したと言われている。その人物こそが、我々の祖だという話だ」
「おおっ……神話の話ってやつか」
やはり俺も男なので、そういう話は好きだったりする。
なにせ田舎だったし、親父さんは娯楽には厳しかった。
邪神とか、神龍とかワクワクする単語だ。
「いや、実際に合ったことなのだ。多分、ハイエルフの奴らなら当時のことを知っているはず。それに我らは寿命が三百年ほどしかないが、里にいる光龍様は一万年を生きておられる」
「……すごい話だ。一万年もびっくりだが、竜人は三百年も生きるのか」
「エルフなら千年単位、ドワーフなら二百年といったところだ。人族と獣人は六十から八十前後だろう」
「ふむふむ、面白いな」
「こんなもので良ければいつでも話そう。それより、我はお主に礼がしたいのだが……これは受け取って貰わねば、我ら竜人の名折れである」
その目は真剣で、とてもじゃないが断れる気がしない。
おそらく、そういう義理堅い種族なのかも。
「そこまで言うなら……普段って何をしてるんだ?」
「我はダンジョンに潜ったり、未開の地を彷徨ったり、この都市で食べ歩きをしたりしている。休みの日は読書を嗜んたり、部屋にいることが多い」
「なるほど……それじゃ、休みの日でいいんだけど、カイルとエルルの面倒を見てくれるか? 特に何かしなくても良いんだけど、気にかけてくれるだけで良い。その間に、ダンジョン探索をしようかと思って」
「ふむ……この幼子二人だと、奴隷商人の格好の餌食であろうな」
「やっぱり、そうだよな」
そういう話は、スラムの説明を受けた時にも聞いた。
魔法が使えない獣人の立場は弱く、それでいて身体は頑丈。
労働力や奴隷として適してるということらしい……反吐が出る。
「承知した。事前に言ってくれれば、数日の間は面倒を見よう」
「ありがとう、ドラン」
「そ、その代わりと言ってはなんだが……」
「わかってるよ。また作るから安心してくれ」
「おおっ友よ! 感謝する!」
その現金な姿に、俺は思わず笑ってしまうのだった。
「これはこれは良い香りですね」
「ありがとうございます。もう仕上げに入るので、席に着いてください」
これで全員が揃ったし、仕上げに入るとしよう。
最後に、バターと小麦粉を入れてとろみをつける……これで料理の完成だ。
パンを用意して、全員でテーブルに着く。
「では、どうぞ。これが、オークの赤ワイン煮込みです」
「おおっ、感謝する……ッ!? う、美味い! ブトウの酸味と肉の甘みが混ざり合い、絶妙なハーモニーを奏でている!」
「そいつは良かった。おかわりもあるから沢山食べていいぞ」
「なんと!? ぐぬぬ……! これは何かしなければ、我の気がすまないぞ」
「だから、そういうのはいいって」
ふと横を見ると、セバスさんが綺麗な所作で食べていた。
その姿は英国紳士のようである……英国紳士見たことないけど。
「これは……美味しいですね。あのオーク肉が、これほど柔らかくなるとは」
「玉ねぎと一緒に炒めると、お肉が柔らかくなりますから」
「ほほう、そんな効果があるのですね。いやはや、いくつになっても新しいものは良いですな」
よし、大人組の評判は上々だ。
さて、この三人は静かだが……問題なさそうだ。
「もぐもぐ……ごくん」
「熱っ……もぐもぐ」
「ハフハフ……」
ほぼ無言で、ひたすら食べ進めていた。
ワインをよく飛ばしたので、子供でも平気そうだ。
「さて、俺も食べてみるとしようか……美味い」
オーク肉が口の中でほろほろと溶けていく!
とろみがあることにより、味が綺麗に纏まっている。
オーク肉は割と庶民的なもの……これはメニューに加えて良いかもしれない。
その後、みんな満足いくまで食事を済ませる。
ハクと二人の子供は、端っこのソファーでスヤスヤと寝てしまった。
セバスさんはお礼を言って仕事に戻ったので、ドランと共にお茶をすることにした。
「とても美味で、素晴らしい食卓であった……タツマ、感謝する」
「いやいや、料理人にとって最高の褒め言葉だよ。こちらこそありがとう」
「ふっ、お主は変わり者だな。獣人を保護し、我を恐れない。さらに、フェンリルまで連れているとは」
「わかるのか?」
「我らにも伝わっておる、出会ったなら絶対に敵対してはいけないと。その爪は全てを切り裂き、神速の動きは瞬間移動のよう。気がついた時には、もう死んでいるとか。なにせ、我らの神である龍とも対等に渡り合える存在だからな……なのはずなのだが」
「ピスピス……」
俺とドランの視線は、お腹を出してスヤスヤ寝ているハクに向けられる。
なんか、みんな同じ反応をするよなぁ。
やっぱり、イメージと違うのだろう。
「やれやれ、伝承とはあてにならん」
「はは……この子は特別なのかも。実は、一人でいたところを拾ったんだ」
「ふむ、不思議なこともあるものだ」
「それより、龍が神ってどういうことだ?」
「この見た目通り、我らの祖は龍だと言われている。大昔、邪神が現れて世界を滅ぼそうとした。その時、偉大なる神龍が分体を生み出して力を貸したと言われている。その人物こそが、我々の祖だという話だ」
「おおっ……神話の話ってやつか」
やはり俺も男なので、そういう話は好きだったりする。
なにせ田舎だったし、親父さんは娯楽には厳しかった。
邪神とか、神龍とかワクワクする単語だ。
「いや、実際に合ったことなのだ。多分、ハイエルフの奴らなら当時のことを知っているはず。それに我らは寿命が三百年ほどしかないが、里にいる光龍様は一万年を生きておられる」
「……すごい話だ。一万年もびっくりだが、竜人は三百年も生きるのか」
「エルフなら千年単位、ドワーフなら二百年といったところだ。人族と獣人は六十から八十前後だろう」
「ふむふむ、面白いな」
「こんなもので良ければいつでも話そう。それより、我はお主に礼がしたいのだが……これは受け取って貰わねば、我ら竜人の名折れである」
その目は真剣で、とてもじゃないが断れる気がしない。
おそらく、そういう義理堅い種族なのかも。
「そこまで言うなら……普段って何をしてるんだ?」
「我はダンジョンに潜ったり、未開の地を彷徨ったり、この都市で食べ歩きをしたりしている。休みの日は読書を嗜んたり、部屋にいることが多い」
「なるほど……それじゃ、休みの日でいいんだけど、カイルとエルルの面倒を見てくれるか? 特に何かしなくても良いんだけど、気にかけてくれるだけで良い。その間に、ダンジョン探索をしようかと思って」
「ふむ……この幼子二人だと、奴隷商人の格好の餌食であろうな」
「やっぱり、そうだよな」
そういう話は、スラムの説明を受けた時にも聞いた。
魔法が使えない獣人の立場は弱く、それでいて身体は頑丈。
労働力や奴隷として適してるということらしい……反吐が出る。
「承知した。事前に言ってくれれば、数日の間は面倒を見よう」
「ありがとう、ドラン」
「そ、その代わりと言ってはなんだが……」
「わかってるよ。また作るから安心してくれ」
「おおっ友よ! 感謝する!」
その現金な姿に、俺は思わず笑ってしまうのだった。
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