上 下
31 / 69
料理人は異世界で生きていく

お互いを知る

しおりを挟む
 森に抜けて走り、どうにか日が暮れた頃に帰ってきた。

 カルラが持っている時計で確認してくれたが、時刻は夜の七時を過ぎた辺りだ。

 行きと帰りで三時間、森の中に三時間いた計算になる。

「つ、着くとは思ってなかったわ。普通なら、泊りがけで依頼をする位置よ。最低でも、往復で半日が過ぎるはず。そもそも、森の中の探索にも一日はかかるのに……ほんと、貴方は規格外だわ」

「まあ、俺の足だと馬より圧倒的に速いからな。もちろん、カルラも。あと、森の中は慣れてるし」

「わ、私は風に愛されたエルフよ? 体力ならともかく、速さまで一緒くらいあるなんて……」

「あっ、それがあったな。とりあえず、ステータスを見せようか?」

「……そうね、それが手っ取り早いわ」

 都市に入ったら、すぐ近くにある以前借りた部屋に行く。
 幸い、Aランクハンターがいるので問題なく借りられた。
 誰もいないことを確認し、テーブルの上に水晶を置く。

「それじゃあ、まずは私から見せるわ」

「ん? 良いのか?」

「それはそうよ。私が知りたいって言ったんだから、私から見せるのが礼儀じゃない」

「……」

「な、なによ?」

「いや、なんでもないよ」

 どちらにしろ見せるから、細かいことかもしれない。
 ただ、そういう考え方をする人は好ましいと思った。
 そして、そういう人とは仲良くしていきたい。

「そう? ……変な人ね、とりあえず私から見せるから」

「ああ、どれどれ……」

 ◇

 カルラ-ハート   ハイエルフ

 体力 C+ 魔力  A

 筋力  C    知力  B

 速力  B   技力  B+

 ギフト  不老長寿   風の精霊の祝福  世界樹の守り人

 ◇

 これは……高いのだろうな。
 種類こそ違えど、俺に近いステータスだ。
 不老長寿は、ある意味イメージ通りか。
   風とか世界樹とかも、エルフっぽいし。 

「はい、おしまい。他の人に見られたら面倒だし。ちなみに、これは内緒だからね?」

「ああ、もちろんだ。それでは、俺の方も見せるとしよう」

 俺もステータスを見せるとカルラの顔が強張る。
 一度見たことあるので、そのまま待つことにした。
 ……数十秒後、カルラが俺に視線を向ける。

「へっ? 何、このステータス……S級ランクじゃない。道理で、コカトリスを相手に余裕を持って戦えるわけだわ。でも、それもそうね……まさか、神に呼ばれた迷い人なんて」

「アリアさんにも言われたが、やはり俺のステータスは高いのか」

「高いなんてもんじゃない、ほとんど最強クラスに近いわね。私の知る限りだと、この国では五本の指に入ると思うわ。全く、私が負けるわけよ」

「……全然実感がわかない」

 そういや、普通の冒険者の強さとか知らない。
 アリアさんですら、強い方だとは聞いてはいるが。
 そういう普通の冒険者と稽古でもすればわかるか。

「まあ、無理もないわね。大体、送られる時に生きていけるように特別な力を授かるから。むしろ、よく増長しないわね……ほんと、面白い人間」

「増長は身を滅ぼすと育ての親に教わったからな。それより、随分と詳しい気がするが?」

「そりゃそうよ、ハイエルフは長生きなんだから。私はまだ若いけど、長老クラスは五百年生きてる方もいるし。迷い人に会ったことある人が何人か生き残ってるから」

「な、なるほど……アリアさんにも聞いたが、何か目的があって呼ばれたのか?」

「うーん、そういうわけではないみたいね。あえて言うなら、世界のバランスを保つためとか聞いたことはあるけど。あちらとこちらは繋がっていて、どちらが消えても両方消えるとか。詳しいことは、長老クラスじゃないとわからないわ」

 世界のバランス……繋がってる……さっぱりわからん。
 多分、考えたらダメなやつだと思う。
 そもそも、そんなに頭は良くない。

「……聞いたところでわからなそうだから良いや。変に気になって困りそうだ」

「ふふ、それが正解ね。それより、貴方がいた世界はどんなところなの?」

「うーん、そうだなぁ……」

 俺は出来る限り分かりやすく、カルラに説明をする。
 同時に、カルラからもエルフのことなどを聞く。
 どんな種族で、どんな性質があるのとか。
 基本的に風魔法や弓を得意として、森の奥地に住む一族らしい。

「それじゃあ、結構平和な世界なのね?」

「俺の国に限って言えばだけど。他のところでは、そうでもないよ」

「それは、どこの世界も一緒よ……この国は割と平和だけど、戦争をしてる国もあるし。さて、それじゃ報告に行きましょ。いい加減、お腹が空いてるし」

「ああ、ハクも待ってるしな」

「ええ、アリアも心配してそわそわしてるわよ」

 そして、二人でハンターギルドに向かう。

 お互いの秘密を知ったので、少し距離が近くなった気がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜

アーエル
ファンタジー
女神に愛されて『加護』を受けたために、元の世界から弾き出された主人公。 「元の世界へ帰られない!」 だったら死ぬまでこの世界で生きてやる! その代わり、遺骨は家族の墓へ入れてよね! 女神は約束する。 「貴女に不自由な思いはさせません」 異世界へ渡った主人公は、新たな世界で自由気ままに生きていく。 『小説家になろう』 『カクヨム』 でも投稿をしています。 内容はこちらとほぼ同じです。

追放された英雄の辺境生活~静かに暮らしたいのに周りが放ってくれない~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
自分の家族と民を守るために、戦い続けて戦争を終わらせた英雄アイク。 しかし、国に戻ると……褒賞として、彼は辺境で領主を命じられる。 そこは廃れた場所で田舎で何もなく、爵位はもらったが実質的に追放のような扱いだった。 彼は絶望するかと思ったが……「まあ、元々頭も良くないし、貴族のあれこれはわからん。とりあえず、田舎でのんびり過ごすかね」と。 しかし、そんな彼を周りが放っておくはずもなく……これは追放された英雄が繰り広げるスローライフ?物語である。

【完結】女神の使徒に選ばれた私の自由気ままな異世界旅行とのんびりスローライフ

あろえ
ファンタジー
 鳥に乗って空を飛べるなんて、まるで夢みたい――。  菓子店で働く天宮胡桃(あまみやくるみ)は、父親が異世界に勇者召喚され、エルフと再婚したことを聞かされた。  まさか自分の父親に妄想癖があったなんて……と思っているのも束の間、突然、目の前に再婚者の女性と義妹が現れる。  そのエルフを象徴する尖った耳と転移魔法を見て、アニメや漫画が大好きな胡桃は、興奮が止まらない。 「私も異世界に行けるの?」 「……行きたいなら、別にいいけど」 「じゃあ、異世界にピクニックへ行こう!」  半ば強引に異世界に訪れた胡桃は、義妹の案内で王都を巡り、魔法使いの服を着たり、独特な食材に出会ったり、精霊鳥と遊んだりして、異世界旅行を満喫する。  そして、綺麗な花々が咲く湖の近くでお弁当を食べていたところ、小さな妖精が飛んできて――?  これは日本と異世界を行き来して、二つの世界で旅行とスローライフを満喫する胡桃の物語である。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」 主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

処理中です...