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料理人、異世界生活を始める

釣りとオーク

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その後もゴブリンくらいしか出ないので、ハクに任せることにした。

戦いの才能があるのか、戦うたびに動きが良くなってくる。

これならそう遠くない未来、守られる存在ではなくなりそうだ。

そして、再びあの場所に戻ってくる。

「キャン!」

「ああ、戻ってこれたな。今思うと……ここは街道から外れているし、上にある森があるから見つかりにくいな。良かった、助けることができて」

だからこそ、アリアさんはクリーンニジマスが珍しいと言っていたのだろう。
ここは、いわゆる穴場というやつかもしれない。

「そうなると、ハンターとしては数を取り過ぎてもいけないか。ハク、少し川をたどって数を見てみよう」

「ワフッ!」

川沿いを上流に向かって歩いていく。
その間、俺は目に意識を集中して水の中を眺める。
すると、魚が泳いでいるのが見えた。
ここから十メールは離れているのに。

「……これがステータスの効果か」

「クゥン?」

「いや、あの時は分からなかったが、ズームされることがあってな。ここからでも魚が見えるんだよ」

「ワフッ!」

多分『すごい!』とか言っているのだろう。
考えなくても、少しずつ何が言いたいかわかってきたな。
そして、川を一通り見て回ると……数は多いので、これなら獲っても平気そうだ。
そうと決まったら、壺から買っておいた物を取り出す。

「よし、せっかくだし釣りをするか」

「クゥン?」

「すまんが、ハクにはできないな。そういや……さっき買ったボールがあったな」

ついでに、サッカーボールサイズの玉を取り出しておく。
何かに使えないかと買っておいたが正解だった。

「ほら、これで遊んでなさい」

「キャウン!」

すると嬉しそうにボールに飛びつき、転がっていくのを追いかけていく。
その姿は子犬そのもので、とても可愛いらしい。

「ハク、俺の近くから離れるんじゃないぞ?」

「ワフッ!」

「よしよし。どうやら、喜んでくれたみたいだな。さて、まだ時間はあるしのんびりと釣りをしますか」

ハクが戯れてるのを眺めながら、のんびりとした時間を過ごす。
もちろん、その間にも魚を釣り上げている。
警戒心が強いとか聞いていたのだが、そこまでじゃないような気がする。
俺の釣りの腕が良いってわけでもなし……なんだろうな。

「あぁー、それしても……こういう時間って良いよな、色々と整理されてくっていうか」

俺は今後、どうしたらいいだろうか?
もちろん、料理人として生きていくことができれば良い。
しかし、そのためにはこの世界のルールや常識は学んでいかないと。

「うん? 種族によっては食べられないものとかあるのか? 外国人が納豆を食べられないように……ありえるな」

都市には色々と種族がいるから、その辺りも考慮してメニューを考える必要があるか。
その辺は、種族ごとの意見を聞きたいところだ。

「ドワーフとエルフ、獣人の知り合いはできたし……頼んでみるのも手かもしれない」

そんなことを考えながら、無心で釣竿を引いていく。
気がつくとバケツの中には、六匹の魚が入っていた。

「おっ、結構釣れたな。これだけあれば足りるか。あんまり取り過ぎても行けないし」

「キャンキャン!」

「ん? ハク、どうした?」

何やら慌てた様子で、俺に駆け寄ってくる。

「ガウッ!」

「……敵か?」

「ワフッ!」

「わかった、すぐに片付ける」

まだ俺の目には敵は見えない。
だが確認するまでもなく、ハクの勘を信じることにした。
野生の勘というのは馬鹿にできないし。
俺は急いでバケツを壺に入れ、周辺を警戒する。
すると……俺の目にも見えてきた。

「ブルルッ!」

「……オークか?」

毛むくじゃらの豚が二足歩行で歩いていた。
身長は百六十程度、体型は肥満型、手には槍を持っている。



【オーク】

下級の魔物だが、ゴブリンよりは強い。
人類の雄を食べ、雌を捕まえて繁殖する。
なんでも食べ、家畜も食べるし畑も荒らす。
女性にとっての敵。



あぁー、なるほど。
ハンターとして、これは倒さないと。
何より、少しでもお金は必要だ。

「ハク、まだお前には早そうだから下がってろ」

「ワフッ!」

「良い子だ」

ハクが下がったのを確認し、剣を上段に構えて待つ。

「ブルルッ!」

「フシュー!」

「さあ、どっからでもかかってこい」

「「ブルル!」」

挑発に乗って二体が並んで走ってくる。
先頭の個体が槍を突き出してくるので……こちらに届く前に大剣を振り下ろす!

「ふんっ!」

「ブルァ!?」

槍の穂先を失ったオークが後ろに退こうとするので……。

「遅いっ!」

「ブガアァ!?」

上段斬りからの逆袈裟斬りにもって行き……相手を両断する。
その隙をついて、もう一体が横から槍を突き出してくる!

「甘いっ!」 

「フゴッ!?」

大剣から左手を離し、刃のついた穂先を受け止める。
今の俺の動体視力なら、なんてことはない。

「セァ!」

「ブカァ!?」

相手は力を入れようともびくともしないので、そのまま右手で大剣を振り下ろして仕留めた。

「ふぅ、こんなものか」

「キャンキャン!」

ハクが俺の足元をぐるぐる回って、キラキラした瞳で見つめてくる。
どうやら『すごいすごい!』と言っているらしい。

「ありがとな、ハク。ひとまず、戦うことは問題なさそうだ」

環境適応のおかげもあるだろうが、俺は元々戦いの経験がある。

それに魔物ではないが、猛獣とも戦ったことも。

虐待を受けてきた俺に対する親父さんの荒療治だったんだけど……今はそのことに感謝しないとな。













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