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一夜明け
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その後、フールさんに護衛されつつ、きた時とは違う道に案内される。
足の動きと敵を避けるように進む様は、一流の斥候に間違いない。
当然隙も見当たらないので、これがA級冒険者だとわかって嬉しくなる。
どうやら、冒険者の高みを目指すのも面白そうだ。
そして、数十分で森を抜けた。
そこには、いくつか馬車が停まっていた。
「さて、ここまでくれば平気ですね。さあ、そこの馬車に乗りなさい。ぐるっと回って、野営地まで送ってくれますから」
「ほっ……ここから歩いて帰るのは流石に厳しいから助かったわ」
「ほ、ほんとですっ……足がかくかくしますぅ」
「うむ、思ったり疲労はあるな」
「そう? まだまだ元気だけど」
すると、三人からジトっと睨まれる。
「一緒にしないで」
「そうですっ」
「全くだ」
「ぐすん……俺以外、息ぴったりだ」
「いやいや、面白い子たちです。また、会えるのを楽しみにしてます」
最後に四人でお礼を言って、俺たちは指定の馬車に乗り込む。
馬車のサイズが少し小さく、体の大きいレオンが対面に一人で座り荷物も置いた。
そして、俺の左右にセリスとカレンが座り……馬車が動き出す。
「ふぅ……これで一息つけるわ」
「ご飯も食べられますしねっ」
「確か達成しなかったり脱落した者は、飯がほとんど抜きとかいう話だったな。我らは、ユウマのせいで危なかったが」
「だから、俺のせいじゃないって。うんうん、みんなで協力したからだねっ」
「良い話にするんじゃないわよ」
「そうですよっ」
二人からほっぺをつねられる。
「ひゃい、すびません……カレンまで酷いや」
「えへへ、ごめんなさい」
「まあ、別に良いけど。でも、今日は心強かったよ」
「えっ? ……わたし、何もしてない気がするんですけど」
「回復役がいるってだけで、物凄く安心感がある。俺も魔力消費をそっちに割かなくて良いしね」
使わないだけで、いざって時にあるだけで安心材料になる。
一歩前に出れたり、恐怖心が減ったりする。
「うむ、それはあるな」
「そっか、何も使わなくてもいるだけで良いんですね」
「そうそう。だから、回復役はパーティーに一人は欲しいよね……あれ?」
何か重みを感じたので振り向くと……セリスが俺の肩に寄りかかっていた。
そして、すやすやと寝息を立てている。
「すぅ……」
「あらら、静かだと思ったら寝ちゃったのか」
「えへへ、頑張ってましたから」
「ふむ、良きリーダーだった」
「そうだね、彼女がリーダーで良かったよ」
俺達三人は、顔を見合わせて頷く。
そして、セリスを起こさぬように静かに過ごす。
ちなみに、夕飯は豪勢でお腹いっぱいに食べることができたのでした。
……ひもじい思いをして睨みつけてくる生徒達を尻目に。
◇
そして、翌日になり……俺は目を覚ましてテントから出る。
久々に沢山寝たので、大きく伸びをして朝日を浴びる。
「くぅー気持ちいいや。さて、何して過ごそうかな」
今日はお昼過ぎまで自由時間となる。
頑張ったご褒美として、好きに過ごして良いのだが……周りを見回すと、他の生徒達は死屍累々といった感じだ。
「うぅー……体が痛い」
「お、お腹が空いた……」
「一歩も動けない……早く帰りたい」
それらは昨日の慣れない演習で疲れ果てた者と、脱落して夕飯が足りなかった者達の屍だ。
せっかくの半休だが、彼らは楽しめそうにない。
そんな光景を眺めていると、レオンもテントから出てくる。
「ふんっ、軟弱な奴らよ。あれしきのことで根を上げるとは」
「仕方ないよ、みんな経験がないし」
「ピンピンしてるお主が言っても説得力がないが」
「まあ、俺は少し特殊らしいし」
「くく、少しどころではない。それでいて驕ることのない……変な奴だ」
「驕るほど強くもないし偉くもないから。上には上がいるし」
こんなんで調子に乗ったら、ライカさんやエリスに偉い目にあう。
そもそも、父上にもどやされちゃうね。
「……我も、ここに来てそれを学んだ。早くに知れたことは幸運だったな」
「俺も獣人とパーティーを組む有用性がわかってよかったよ。ところで、レオンはどうするの? よかったら、どっか行く?」
「ふっ、そこまで無粋ではない。お主は、二人の相手をするが良い。我は昨日の反省を踏まえて鍛錬をしてこよう」
そうして、レオンが足早に去っていく。
なんのことかと思っていると、向こうからセリスとカレンが向かってきた。
「おはよう、二人共」
「ユウマ、おはよう」
「おはようございます」
「それで、どうしたの?」
すると二人が、もじもじしながらコショコショ話をする。
耳をすませば聞こえないこともないが、そんな無粋な真似はしない。
女の子とはそういうものだって、散々言われてきたし。
「ほら、セリスさん」
「わ、わかってるわよ……ユ、ユウマは、何か予定あったりする?」
「いや、特にないよ。この通り、ぼっちだし……悲しみ」
「ふふ、そうみたいね。じゃあ、私達と遊ばない?」
「なんか、近くに川があってそこは安全に遊べるみたいです」
「へぇ、そうなんだ? それじゃ、そうしようかな」
「決まりね。さあ、行くわよ」
先に歩き出すセリスの後を追い、俺も森の中へと行く。
……どうにか、ぼっち回避はできたようで一安心である。
足の動きと敵を避けるように進む様は、一流の斥候に間違いない。
当然隙も見当たらないので、これがA級冒険者だとわかって嬉しくなる。
どうやら、冒険者の高みを目指すのも面白そうだ。
そして、数十分で森を抜けた。
そこには、いくつか馬車が停まっていた。
「さて、ここまでくれば平気ですね。さあ、そこの馬車に乗りなさい。ぐるっと回って、野営地まで送ってくれますから」
「ほっ……ここから歩いて帰るのは流石に厳しいから助かったわ」
「ほ、ほんとですっ……足がかくかくしますぅ」
「うむ、思ったり疲労はあるな」
「そう? まだまだ元気だけど」
すると、三人からジトっと睨まれる。
「一緒にしないで」
「そうですっ」
「全くだ」
「ぐすん……俺以外、息ぴったりだ」
「いやいや、面白い子たちです。また、会えるのを楽しみにしてます」
最後に四人でお礼を言って、俺たちは指定の馬車に乗り込む。
馬車のサイズが少し小さく、体の大きいレオンが対面に一人で座り荷物も置いた。
そして、俺の左右にセリスとカレンが座り……馬車が動き出す。
「ふぅ……これで一息つけるわ」
「ご飯も食べられますしねっ」
「確か達成しなかったり脱落した者は、飯がほとんど抜きとかいう話だったな。我らは、ユウマのせいで危なかったが」
「だから、俺のせいじゃないって。うんうん、みんなで協力したからだねっ」
「良い話にするんじゃないわよ」
「そうですよっ」
二人からほっぺをつねられる。
「ひゃい、すびません……カレンまで酷いや」
「えへへ、ごめんなさい」
「まあ、別に良いけど。でも、今日は心強かったよ」
「えっ? ……わたし、何もしてない気がするんですけど」
「回復役がいるってだけで、物凄く安心感がある。俺も魔力消費をそっちに割かなくて良いしね」
使わないだけで、いざって時にあるだけで安心材料になる。
一歩前に出れたり、恐怖心が減ったりする。
「うむ、それはあるな」
「そっか、何も使わなくてもいるだけで良いんですね」
「そうそう。だから、回復役はパーティーに一人は欲しいよね……あれ?」
何か重みを感じたので振り向くと……セリスが俺の肩に寄りかかっていた。
そして、すやすやと寝息を立てている。
「すぅ……」
「あらら、静かだと思ったら寝ちゃったのか」
「えへへ、頑張ってましたから」
「ふむ、良きリーダーだった」
「そうだね、彼女がリーダーで良かったよ」
俺達三人は、顔を見合わせて頷く。
そして、セリスを起こさぬように静かに過ごす。
ちなみに、夕飯は豪勢でお腹いっぱいに食べることができたのでした。
……ひもじい思いをして睨みつけてくる生徒達を尻目に。
◇
そして、翌日になり……俺は目を覚ましてテントから出る。
久々に沢山寝たので、大きく伸びをして朝日を浴びる。
「くぅー気持ちいいや。さて、何して過ごそうかな」
今日はお昼過ぎまで自由時間となる。
頑張ったご褒美として、好きに過ごして良いのだが……周りを見回すと、他の生徒達は死屍累々といった感じだ。
「うぅー……体が痛い」
「お、お腹が空いた……」
「一歩も動けない……早く帰りたい」
それらは昨日の慣れない演習で疲れ果てた者と、脱落して夕飯が足りなかった者達の屍だ。
せっかくの半休だが、彼らは楽しめそうにない。
そんな光景を眺めていると、レオンもテントから出てくる。
「ふんっ、軟弱な奴らよ。あれしきのことで根を上げるとは」
「仕方ないよ、みんな経験がないし」
「ピンピンしてるお主が言っても説得力がないが」
「まあ、俺は少し特殊らしいし」
「くく、少しどころではない。それでいて驕ることのない……変な奴だ」
「驕るほど強くもないし偉くもないから。上には上がいるし」
こんなんで調子に乗ったら、ライカさんやエリスに偉い目にあう。
そもそも、父上にもどやされちゃうね。
「……我も、ここに来てそれを学んだ。早くに知れたことは幸運だったな」
「俺も獣人とパーティーを組む有用性がわかってよかったよ。ところで、レオンはどうするの? よかったら、どっか行く?」
「ふっ、そこまで無粋ではない。お主は、二人の相手をするが良い。我は昨日の反省を踏まえて鍛錬をしてこよう」
そうして、レオンが足早に去っていく。
なんのことかと思っていると、向こうからセリスとカレンが向かってきた。
「おはよう、二人共」
「ユウマ、おはよう」
「おはようございます」
「それで、どうしたの?」
すると二人が、もじもじしながらコショコショ話をする。
耳をすませば聞こえないこともないが、そんな無粋な真似はしない。
女の子とはそういうものだって、散々言われてきたし。
「ほら、セリスさん」
「わ、わかってるわよ……ユ、ユウマは、何か予定あったりする?」
「いや、特にないよ。この通り、ぼっちだし……悲しみ」
「ふふ、そうみたいね。じゃあ、私達と遊ばない?」
「なんか、近くに川があってそこは安全に遊べるみたいです」
「へぇ、そうなんだ? それじゃ、そうしようかな」
「決まりね。さあ、行くわよ」
先に歩き出すセリスの後を追い、俺も森の中へと行く。
……どうにか、ぼっち回避はできたようで一安心である。
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