田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
55 / 60

一夜明け

しおりを挟む
 その後、フールさんに護衛されつつ、きた時とは違う道に案内される。

 足の動きと敵を避けるように進む様は、一流の斥候に間違いない。

 当然隙も見当たらないので、これがA級冒険者だとわかって嬉しくなる。

 どうやら、冒険者の高みを目指すのも面白そうだ。

 そして、数十分で森を抜けた。

 そこには、いくつか馬車が停まっていた。

「さて、ここまでくれば平気ですね。さあ、そこの馬車に乗りなさい。ぐるっと回って、野営地まで送ってくれますから」

「ほっ……ここから歩いて帰るのは流石に厳しいから助かったわ」

「ほ、ほんとですっ……足がかくかくしますぅ」

「うむ、思ったり疲労はあるな」

「そう? まだまだ元気だけど」

 すると、三人からジトっと睨まれる。

「一緒にしないで」

「そうですっ」

「全くだ」

「ぐすん……俺以外、息ぴったりだ」

「いやいや、面白い子たちです。また、会えるのを楽しみにしてます」

 最後に四人でお礼を言って、俺たちは指定の馬車に乗り込む。
 馬車のサイズが少し小さく、体の大きいレオンが対面に一人で座り荷物も置いた。
 そして、俺の左右にセリスとカレンが座り……馬車が動き出す。

「ふぅ……これで一息つけるわ」

「ご飯も食べられますしねっ」

「確か達成しなかったり脱落した者は、飯がほとんど抜きとかいう話だったな。我らは、ユウマのせいで危なかったが」

「だから、俺のせいじゃないって。うんうん、みんなで協力したからだねっ」

「良い話にするんじゃないわよ」

「そうですよっ」

 二人からほっぺをつねられる。

「ひゃい、すびません……カレンまで酷いや」

「えへへ、ごめんなさい」

「まあ、別に良いけど。でも、今日は心強かったよ」

「えっ? ……わたし、何もしてない気がするんですけど」

「回復役がいるってだけで、物凄く安心感がある。俺も魔力消費をそっちに割かなくて良いしね」

 使わないだけで、いざって時にあるだけで安心材料になる。
 一歩前に出れたり、恐怖心が減ったりする。

「うむ、それはあるな」

「そっか、何も使わなくてもいるだけで良いんですね」

「そうそう。だから、回復役はパーティーに一人は欲しいよね……あれ?」

 何か重みを感じたので振り向くと……セリスが俺の肩に寄りかかっていた。
 そして、すやすやと寝息を立てている。

「すぅ……」

「あらら、静かだと思ったら寝ちゃったのか」

「えへへ、頑張ってましたから」

「ふむ、良きリーダーだった」

「そうだね、彼女がリーダーで良かったよ」

 俺達三人は、顔を見合わせて頷く。

 そして、セリスを起こさぬように静かに過ごす。

 ちなみに、夕飯は豪勢でお腹いっぱいに食べることができたのでした。

 ……ひもじい思いをして睨みつけてくる生徒達を尻目に。

 ◇


 そして、翌日になり……俺は目を覚ましてテントから出る。

 久々に沢山寝たので、大きく伸びをして朝日を浴びる。

「くぅー気持ちいいや。さて、何して過ごそうかな」

 今日はお昼過ぎまで自由時間となる。
 頑張ったご褒美として、好きに過ごして良いのだが……周りを見回すと、他の生徒達は死屍累々といった感じだ。

「うぅー……体が痛い」

「お、お腹が空いた……」

「一歩も動けない……早く帰りたい」

 それらは昨日の慣れない演習で疲れ果てた者と、脱落して夕飯が足りなかった者達の屍だ。
 せっかくの半休だが、彼らは楽しめそうにない。
 そんな光景を眺めていると、レオンもテントから出てくる。

「ふんっ、軟弱な奴らよ。あれしきのことで根を上げるとは」

「仕方ないよ、みんな経験がないし」

「ピンピンしてるお主が言っても説得力がないが」

「まあ、俺は少し特殊らしいし」

「くく、少しどころではない。それでいて驕ることのない……変な奴だ」

「驕るほど強くもないし偉くもないから。上には上がいるし」

 こんなんで調子に乗ったら、ライカさんやエリスに偉い目にあう。
 そもそも、父上にもどやされちゃうね。

「……我も、ここに来てそれを学んだ。早くに知れたことは幸運だったな」

「俺も獣人とパーティーを組む有用性がわかってよかったよ。ところで、レオンはどうするの? よかったら、どっか行く?」

「ふっ、そこまで無粋ではない。お主は、二人の相手をするが良い。我は昨日の反省を踏まえて鍛錬をしてこよう」

 そうして、レオンが足早に去っていく。
 なんのことかと思っていると、向こうからセリスとカレンが向かってきた。

「おはよう、二人共」

「ユウマ、おはよう」

「おはようございます」

「それで、どうしたの?」

 すると二人が、もじもじしながらコショコショ話をする。
 耳をすませば聞こえないこともないが、そんな無粋な真似はしない。
 女の子とはそういうものだって、散々言われてきたし。

「ほら、セリスさん」

「わ、わかってるわよ……ユ、ユウマは、何か予定あったりする?」

「いや、特にないよ。この通り、ぼっちだし……悲しみ」

「ふふ、そうみたいね。じゃあ、私達と遊ばない?」

「なんか、近くに川があってそこは安全に遊べるみたいです」

「へぇ、そうなんだ? それじゃ、そうしようかな」

「決まりね。さあ、行くわよ」

 先に歩き出すセリスの後を追い、俺も森の中へと行く。

   ……どうにか、ぼっち回避はできたようで一安心である。






しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...