53 / 60
ゴール
しおりを挟む
三時を過ぎる頃、目的地の近くにやってくる。
まだ日差しはあるし、十分に間に合う距離だ。
「ふぅ、そろそろね」
「つまりは、一番油断してはいけないということだな」
「レオンさんの言う通りですねっ」
「あら、言いたいこと言われちゃった」
「ふんっ、お主にばかり良い格好はさせん」
そんな会話をするくらいに、俺達に余裕はあった。
あの後も結構脱落者を見たから、もしかしたら合格者も少ないのかも。
最初の演習にしては、結構難易度高いと思うし。
「それにしても、いつもこんな大変な思いをしているのね」
「セリスの兵士さん達や、冒険者の方とかはそうかも」
「そのおかげで、わたし達は安全な生活が出来ているんですねっ」
「ふむ、それを知ることも演習の狙いなのだろう。冒険者などは、どうも下に見られがちだ」
レオンの言う通り、冒険者の地位は低い。
便利屋とか、他になるものがないから仕方なくなったとか言われることもある。
彼らがいなければ、俺たちの生活は成り立たないというのに。
「それもあるから、俺は冒険者になりたいんだよね。彼らは、もっと讃えられるべきだ。無論、国を守る兵士たちもね」
「ふっ、良いことをいうではないか……むっ、何かくるぞ。この足音、ゴブリンやコボルトではない!」
「みんな! ここが踏ん張りどころよ! 各自、戦闘態勢!」
「カレン! いけると思ったらいっていい! フォローはするから!」
「わ、わかりましたっ!」
カレンが返事をした瞬間、奴らは現れた。
豚の顔に人の身体をした魔物……オークだ。
強さはゴブリンやコボルトの比ではなく、大人の兵士をも容易く殺す。
「ブヒヒッ」
「フゴッ!」
「くっ……明らかに私とカレンを見ているわ」
「ひぃ……確か、女の人を捕まえて……」
二人の言う通り、オークは少し特殊だ。
基本的に魔物は人を食うために襲う。
しかし、奴らは女の子をいたぶるのが趣味の魔物だ。
故に、女性地には特に忌み嫌われている。
「おい、後ろからゴブリンもきたぞ」
「オークを、女の子に相手にさせるわけにはいかないね。レオン、俺たちでやるよ」
「ふっ、勝負と行くか」
「上等だね。カレン、良い機会だ、ここから撃っても良いかも」
俺とレオンは前に出て、相手を牽制する。
その間に、後ろでカレンが弓を構える……矢も持たずに。
「いきます——シャイニングアロー!」
俺とレオンの間を、光の矢が通り過ぎ……後ろにいるゴブリンの頭に突き刺さる!
そして、そのまま魔石となった。
矢を光魔法で作ることにより、イメージを具変化させたんだ。
こうすれば魔力の消費も抑えられるし、唯一の弱点である矢が足りないという状況もない。
「フゴッ!?」
「ブヒッ!?」
その光の矢に、二台のオークがひるむ。
その隙は——俺達にとっては致命傷だった。
二人同時に踏み込み俺は居合で一閃、レオンは爪で引き裂いた。
こうして、一瞬で戦闘は終わりを迎える。
「カレン! 出来たじゃん!」
「で、出来ましたっ! これも、ユウマさんのおかげです!」
「いやいや、そんなことないって。それをきちんと出来たのはカレンの力だし。これで、魔力消費はそこまで気にしなくて良いはずだ」
「はい! 魔力の減りが全然違います! 魔力効率って、こんなに大事なんですね……」
「ちなみに、他にも応用が効くよ。例えば人体の構造を知っていれば、効果的に回復魔法が使えるとか」
「あっ……そういうことになりますね。ユウマさんは、そういったことも?」
「まあ、それなりにね」
というより、強制的にやらされた。
血みどろになった兵士達を、それこそ何度も吐きながら。
おかげで、回復魔法は上手くなったけど。
「うむ、今のは良い攻撃だった。速さもあるし、牽制にもなりそうだ。お陰で、オークを苦労せずに倒せた」
「とりあえず、引き分けかな?」
「ふっ、我の方が早かった気がするが?」
「「……ほう」」
すると、セリスにほっぺをつねられる。
「あひゃい」
「ちょっと、さっき注意したでしょ。それに、今は置いてけぼりの私を構いなさいよ。まったく、三人であっという間に倒しちゃうんだから」
「「「あっ」」」
「もう、『あっ』じゃないわよ。私だけ、仲間外れみたいじゃない」
その少しいじけた顔に、三人で顔を見合わせ微笑む。
この短期間だけど、パーティーとして結束が深まったような気がする。
その後、歩き続け……俺達は無事にゴールへとたどり着くのだった。
まだ日差しはあるし、十分に間に合う距離だ。
「ふぅ、そろそろね」
「つまりは、一番油断してはいけないということだな」
「レオンさんの言う通りですねっ」
「あら、言いたいこと言われちゃった」
「ふんっ、お主にばかり良い格好はさせん」
そんな会話をするくらいに、俺達に余裕はあった。
あの後も結構脱落者を見たから、もしかしたら合格者も少ないのかも。
最初の演習にしては、結構難易度高いと思うし。
「それにしても、いつもこんな大変な思いをしているのね」
「セリスの兵士さん達や、冒険者の方とかはそうかも」
「そのおかげで、わたし達は安全な生活が出来ているんですねっ」
「ふむ、それを知ることも演習の狙いなのだろう。冒険者などは、どうも下に見られがちだ」
レオンの言う通り、冒険者の地位は低い。
便利屋とか、他になるものがないから仕方なくなったとか言われることもある。
彼らがいなければ、俺たちの生活は成り立たないというのに。
「それもあるから、俺は冒険者になりたいんだよね。彼らは、もっと讃えられるべきだ。無論、国を守る兵士たちもね」
「ふっ、良いことをいうではないか……むっ、何かくるぞ。この足音、ゴブリンやコボルトではない!」
「みんな! ここが踏ん張りどころよ! 各自、戦闘態勢!」
「カレン! いけると思ったらいっていい! フォローはするから!」
「わ、わかりましたっ!」
カレンが返事をした瞬間、奴らは現れた。
豚の顔に人の身体をした魔物……オークだ。
強さはゴブリンやコボルトの比ではなく、大人の兵士をも容易く殺す。
「ブヒヒッ」
「フゴッ!」
「くっ……明らかに私とカレンを見ているわ」
「ひぃ……確か、女の人を捕まえて……」
二人の言う通り、オークは少し特殊だ。
基本的に魔物は人を食うために襲う。
しかし、奴らは女の子をいたぶるのが趣味の魔物だ。
故に、女性地には特に忌み嫌われている。
「おい、後ろからゴブリンもきたぞ」
「オークを、女の子に相手にさせるわけにはいかないね。レオン、俺たちでやるよ」
「ふっ、勝負と行くか」
「上等だね。カレン、良い機会だ、ここから撃っても良いかも」
俺とレオンは前に出て、相手を牽制する。
その間に、後ろでカレンが弓を構える……矢も持たずに。
「いきます——シャイニングアロー!」
俺とレオンの間を、光の矢が通り過ぎ……後ろにいるゴブリンの頭に突き刺さる!
そして、そのまま魔石となった。
矢を光魔法で作ることにより、イメージを具変化させたんだ。
こうすれば魔力の消費も抑えられるし、唯一の弱点である矢が足りないという状況もない。
「フゴッ!?」
「ブヒッ!?」
その光の矢に、二台のオークがひるむ。
その隙は——俺達にとっては致命傷だった。
二人同時に踏み込み俺は居合で一閃、レオンは爪で引き裂いた。
こうして、一瞬で戦闘は終わりを迎える。
「カレン! 出来たじゃん!」
「で、出来ましたっ! これも、ユウマさんのおかげです!」
「いやいや、そんなことないって。それをきちんと出来たのはカレンの力だし。これで、魔力消費はそこまで気にしなくて良いはずだ」
「はい! 魔力の減りが全然違います! 魔力効率って、こんなに大事なんですね……」
「ちなみに、他にも応用が効くよ。例えば人体の構造を知っていれば、効果的に回復魔法が使えるとか」
「あっ……そういうことになりますね。ユウマさんは、そういったことも?」
「まあ、それなりにね」
というより、強制的にやらされた。
血みどろになった兵士達を、それこそ何度も吐きながら。
おかげで、回復魔法は上手くなったけど。
「うむ、今のは良い攻撃だった。速さもあるし、牽制にもなりそうだ。お陰で、オークを苦労せずに倒せた」
「とりあえず、引き分けかな?」
「ふっ、我の方が早かった気がするが?」
「「……ほう」」
すると、セリスにほっぺをつねられる。
「あひゃい」
「ちょっと、さっき注意したでしょ。それに、今は置いてけぼりの私を構いなさいよ。まったく、三人であっという間に倒しちゃうんだから」
「「「あっ」」」
「もう、『あっ』じゃないわよ。私だけ、仲間外れみたいじゃない」
その少しいじけた顔に、三人で顔を見合わせ微笑む。
この短期間だけど、パーティーとして結束が深まったような気がする。
その後、歩き続け……俺達は無事にゴールへとたどり着くのだった。
187
あなたにおすすめの小説
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件
エース皇命
ファンタジー
前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。
しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。
悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。
ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる