田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~

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吹っ切れる

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 老朽化した建物の破片が崩れたのか!?

 俺の頭の中で、一瞬で思考が行われる。

 一人で避けるのは簡単、セリスと子供も抱えて避けるのは困難。

 成功した場合でも、ここには大勢の人が集まってしまっている。

 あんなのがそのまま落ちたら、怪我人が出てしまう。

 その時、セリスが俺を見てることに気づく。

 そして、その目を見て彼女が逃げないことを悟った。

「ユウマ! 守りは私に任せて!」

「わかった!  バルムンク、力を貸してくれ!」

 足に風をまとった俺は、空中を跳ねて岩に迫っていく。
 そして、既に俺の腰にはバルムンクが収まっていた。
   俺の声に応えて飛んできてくれた……ならば、あとは俺が!

「絶技——双竜連刃!」

 抜刀した状態から、神速の連続斬りを放つ!
 それは岩をバラバラにし、破片が地上に向けて降り注ぐ。
 だけど、心配は要らない……セリスがいるから。

「お、お姉ちゃん!」

「平気よ! 我らの身を守り給え——アースガード!」

 俺の視線の下に土のドームが現れ、それらが降り注ぐ破片を弾いていく。
 一度クッションを挟んだので、勢いをなくした破片があちこちに転がっていった。
 あれなら、当たったとしても大した怪我はしないだろう。
 俺はそれを上から確認しつつ、地面に着地する。

「よっと……」

「す、すげぇ……! あの一瞬で判断したのか!」

「しかも、あの大きな破片を一振りでバラバラにしたわ!」

「いえいえ、賞賛されるべきは彼女ですよ」

「へっ? わ、私は別に何も……」

「お姉ちゃん! 助けてくれてありがとう!」

 すると、周りの人々もセリスに向けて言葉を投げかける。

「お嬢さん! ありがとう!」

「すごい魔法でした!」

「おかげで大きな怪我人はいません!」

「……そうですか……良かった、私でも力になれたのね」

 すると、セリスの目に力が戻る。

「さっきの冒険者の方!」

「お、おう?」

「すみませんが、まずは衛兵を呼んでください!」

「わ、わかった!」

 男が走り去った後、セリスは周りにいる大人達に視線を向ける。

「すみません! もし宜しければ瓦礫を端に寄せるのを手伝ってもらえませんか!?」

「よっしゃ! みんなやるぞ!」

「おうよっ!」

「ありがとうございます! もし怪我をした人は、こちらの彼の元に! ユウマ、良い?」

「うん、もちろん」

 そうして、セリスの指示の元に人々が動き出す。
 俺は擦り傷などをした人を癒しつつ、セリスの行動を横目で観察する。
 率先して動き指示を出す様は……頼り甲斐のある上官のようだった。



 ◇


 その後、騒ぎを聞きつけた衛兵達がやってきて、軽く事情を説明する。
 俺達は一頻りお礼を言われた後、その場を離れた。
 ご馳走やら何やら誘われたけど、少しセリスが疲れてる様子だったから。
 王都中央にある噴水広場のベンチに座り、ひとまずホッと一安心する。

「ふぅ、危なかったや」

「ええ、本当に。ユウマがいなかったらどうなってたか」

「いやいや、あれはセリスのおかげでしょ。俺一人だったら、もっと怪我人が出てたよ」

「本当? 邪魔してなかった?」

「いやいや、助かったって。あの時、焦って……エリスと視線があったよね? そしたら安心して、俺は俺のやるべきをやれば良いって。後は、セリスがどうにかしてくれるって信じれた」

 戦場でも、ああいう場面は多々ある。
 一瞬の判断を求められたり、何かを切り捨てなければいけなかったり。
 意外と、そういう判断が出来る人は少ないとか。

「あの時は……ただ、必死だったわ。あの子を守るためには、人々に怪我を負わせないためにどうしたら良いのか。一人では無理だったけど、ユウマがいたから」

「……セリス、生徒会の話を受けてみたら?」

「えっ? な、何を急に……」

「やっぱり向いてるよ。俺、自慢じゃないけど人に従うの苦手なんだ。もちろん、相手がセリスだっていうのもあったけど、あの時の俺を頼りにさせる力があったから。それは天性の才能で、後からつくことは難しいんだってさ」

 おそらくだけど、彼女には天性の指揮官の素質がある。
 事故処理の指示の出し方、的確な判断、優先順位など。
 そういう人は、上に立つ資格があると思う。
 何より……この人にならという不思議な力がある。

「わ、私に? ……そうなのかしら」

「うん、俺はそう思うかな。あの時のセリスは、頼り甲斐があってカッコよかったよ」

「ユウマ……私に出来るかな?」

「俺が保証するよ。人々のことを考えて行動ができるし、一人では無理ってことも知ってるから。そういう人に、俺は上に立ってほしいかな」

「うん……前向きに考えてみるわ。ユウマ、ありがとう」

 そう言い、すっきりした笑顔を見せる。

 その目からは、迷いが消えていたような気した。
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