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魔物退治
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それから数日かけて、村を転々としながら旅を続ける。
模擬戦で勝ったこともあり、穏やかな時間を過ごしていた。
セリスとの関係も、ぎこちなさが消えてきて昔みたいになってきた気がする。
「しかし、今更だけどあのセリスが女の子だったとはね」
「どういう意味かしら?」
「い、いやぁー、あのお転婆だった人とは思えないや。まるで別人のよう——ひゃい」
セリスが俺の両頬を引っ張り、怖い顔をしていた。
その顔は昔見た覚えがある……池に落とした時の顔にそっくりだった。
「ふふ、これでどうかしら? 私のことを思い出した?」
「ふぁい、ひゅいません」
「はい、よろしい。別に私だって、好きで嘘をついてたわけじゃないもの」
「ふぅ……まあ、そうだよね。女の子って知ってたら、仲良くなれてたかわからないし」
「で、でも、その場合は違う意味で……ごにょごにょ」
「ん? どういう意味?」
「べ、別に——きゃっ!?」
俺は咄嗟にセリスに覆い被さり、動かないように位置を固定する。
そして、次の瞬間——馬車が急停車する!
「ヒヒーン!?」
「敵襲ー! 皆の者戦闘準備せよ!」
「やっぱり、そうだったね」
今さっき、あの慣れ親しんだ感覚が俺を襲ってきた。
敵が待ち伏せをして、殺気が漏れた瞬間を——戦場の匂いだ。
「ユ、ユウマ……あの、その」
「あっ——ごめん!」
俺は慌てて、その場から飛びのく。
咄嗟とはいえ、嫁入り前の女の子に覆いかぶさってしまった。
それどころか、抱きしめてしまったし……柔らかかったなぁ。
やっぱり女の子なのだなと思い、つい意識してしまう。
「い、いえ! 私を助けるためですよね?」
「そりゃ、もちろん! とにかく、セリスはここに! 俺はいってくるよ!」
煩悩を振り払うように、俺が馬車から飛び出ると……そこでは、既に魔物達と兵士達が戦っていた。
「この!」
「慌てるな! 数は多いとはいえゴブリンとコボルトだ! 確実に一体一体仕留めろ!」
「ギャキャ!」
「ガルル!」
敵は低級魔物であるゴブリンとコボルトの組み合わせか。
でも、あいつらは頭が悪く、待ち伏せなんかはできない。
となると、何処かに群れのボスがいるはず。
「ガルル!」
「ギャキャ!」
「よっと」
「ガ……」
「ギャ……」
襲ってきた敵の攻撃を避け、抜刀により二体とも一撃で仕留める。
すると、指揮官であるイースさんが俺に気づいた。
「ユウマ殿! 助かります!」
「いえいえ、俺も護衛役ですから。それより、何処かにボスがいるはずです」
「なるほど、道理で連携が取れてるわけですね」
「俺なら探せると思うので、一回みなさんを馬車の周りに集められますか?」
「それは可能ですが、戦ってる最中の兵士達が……」
「それなら問題ないです、一度減らしますから。水の弾よ、敵を撃ち抜け——アクアバレット」
両手の指10本から水の弾を発動させ……兵士達に襲いかかる魔物達を貫く。
すると、煙のように消えて魔石になる。
これが、魔物の特徴だ。
「なっ、なんと的確な……我々兵士には当てずに、魔物だけを貫くとは。そもそも、剣士ではなかったのですか?」
「いえいえ、これくらいの魔法なら使えますよ。剣も使えるので、魔法剣士とかですかね。さあ、一回兵士皆さんを集めてください」
「はっ! 皆の者! 今のうちに体制を整えるのだ! 馬車を中心とした陣形を取れ!」
その言葉に兵士達が反応して、馬車に集まってくる。
その姿に魔物達が一度立ち止まる。
「奴ら、止まりましたね」
「指揮官からの指示を待ってるんですよ」
すると、敵の視線が一瞬だけ動いた。
「あそこか……! 水の槍よ、敵を貫け——アクアランス!」
「ど、どこに向かっ……」
「グギヤァァアァ!?」
右奥にあった茂みから、ホブゴブリンと思わしき魔物が血だらけで飛び出してきた。
それを追うようにして、剣と盾を持った犬に似た顔をしたコボルトナイトが現れる。
「ガルルァ!」
「なんと、あそこにいたのですか! よくお分りになられましたね」
「奴らの視線が一瞬、あちらに向いたので。そこに指揮官がいるだろうなと思いました。さて、皆さんはホブゴブリンにとどめをお願いします。俺は、コボルトナイトの相手をしますので」
「はっ、お手並み拝見させて頂きます」
「まあ、すぐに終わるので」
俺は軽い足取りで、身長が同じくらいのコボルトナイトと対峙する。
俺は基本的に対人戦ばかりやってたから、魔物退治は久々だった。
なので、まずは師匠の教え通りに油断せず相手を観察すること。
「ガルァ!」
「おっと」
上端から振り下ろされる剣を半身をずらして躱す。
俺がいた場所は地面が削れており、中々の速さと威力だ。
「ガルァ! クルァ!!」
「よっ、ほっ……アクアボール!」
「グァ!?」
攻撃をやめて、盾で魔法を防御した。
そして、引き続き避けながら魔法を打ち続けてわかった。
「ふむふむ、攻撃と防御は同時にはできないと。その証拠に、盾を使うときは剣は動いてない。その逆も然り……わざとそう見せてる可能性も低そうだね」
「ユウマ! 大丈夫!?」
「あっ、しまった。心配させちゃったか」
馬車の窓から身を乗り出して、セリスが心配そうに見ていた。
少しこいつの特徴を調べていただけなんだけど。
でも、大体わかったから平気だ。
俺は腰にある鞘に手を当てて、相手に接近する。
当然、相手は剣を振り下ろしてきた。
「ガルァ!」
「遅いよ——抜刀、一の太刀」
相手の攻撃を右に避け、懐に入って刀を振り抜いた。
抜いたら斬るという、居合本来の技だ。
「ガ……? ァァァ!」
「ふぅ、魔石になったね」
「お、お見事です! 新人冒険者の登竜門とも言われるコボルトナイトを容易く倒してしまうとは!」
「あっ、そうなんだ?」
俺は冒険者登録もしてないし、ランクとかよくわかっていない。
そもそも、うちの田舎には支部が存在しない。
戦争と魔獣退治とかだし、冒険者が好んで住むような場所じゃないし。
「そうですよ! 十五歳の成人を迎え、ようやく冒険者登録ができるのに……それを成人したばかり貴方が……これは勝てないわけですな」
「いえいえ、貴方達だけでも勝てましたよ」
「それはそうですが、何人か死んでいた可能性があります。幸い、死者はいないので助かりました」
「あっ、怪我人がいたら連れてきてくださいね」
水魔法の使い手である俺は、回復魔法も多少は扱える。
流石に光属性を持つ者と同じってわけにはいかないけど。
光属性の回復魔法には、四肢を再生させる魔法もあるらしいし。
「有り難いですが、お代金の方が……」
「いやいや、一緒に戦った仲間からお金は取りませんよ」
「あ、ありがとうございます! ……我らの主人以外にも、こんな貴族の方もいるのだな」
「ん? なんか言いました?」
「いえ、すぐに連れてきます」
すると、馬車の中からセリスが飛び出してきて……思い切り抱きついてくる!
「ユウマ! 無事ですか!? どこも怪我してないですか!?」
「わー!? 平気だって! だから離れてって!」
「わ、私としたことが……あぅ」
「い、いや、心配してくれたのは嬉しいよ」
や、柔らかかった……女の子ってあんなに柔らかいんだ。
うちには歳が近い女の子なんていなかったしなぁ。
うんうん、師匠達が女性はか弱いって言ったのはこれだったのか……本人達は別として。
模擬戦で勝ったこともあり、穏やかな時間を過ごしていた。
セリスとの関係も、ぎこちなさが消えてきて昔みたいになってきた気がする。
「しかし、今更だけどあのセリスが女の子だったとはね」
「どういう意味かしら?」
「い、いやぁー、あのお転婆だった人とは思えないや。まるで別人のよう——ひゃい」
セリスが俺の両頬を引っ張り、怖い顔をしていた。
その顔は昔見た覚えがある……池に落とした時の顔にそっくりだった。
「ふふ、これでどうかしら? 私のことを思い出した?」
「ふぁい、ひゅいません」
「はい、よろしい。別に私だって、好きで嘘をついてたわけじゃないもの」
「ふぅ……まあ、そうだよね。女の子って知ってたら、仲良くなれてたかわからないし」
「で、でも、その場合は違う意味で……ごにょごにょ」
「ん? どういう意味?」
「べ、別に——きゃっ!?」
俺は咄嗟にセリスに覆い被さり、動かないように位置を固定する。
そして、次の瞬間——馬車が急停車する!
「ヒヒーン!?」
「敵襲ー! 皆の者戦闘準備せよ!」
「やっぱり、そうだったね」
今さっき、あの慣れ親しんだ感覚が俺を襲ってきた。
敵が待ち伏せをして、殺気が漏れた瞬間を——戦場の匂いだ。
「ユ、ユウマ……あの、その」
「あっ——ごめん!」
俺は慌てて、その場から飛びのく。
咄嗟とはいえ、嫁入り前の女の子に覆いかぶさってしまった。
それどころか、抱きしめてしまったし……柔らかかったなぁ。
やっぱり女の子なのだなと思い、つい意識してしまう。
「い、いえ! 私を助けるためですよね?」
「そりゃ、もちろん! とにかく、セリスはここに! 俺はいってくるよ!」
煩悩を振り払うように、俺が馬車から飛び出ると……そこでは、既に魔物達と兵士達が戦っていた。
「この!」
「慌てるな! 数は多いとはいえゴブリンとコボルトだ! 確実に一体一体仕留めろ!」
「ギャキャ!」
「ガルル!」
敵は低級魔物であるゴブリンとコボルトの組み合わせか。
でも、あいつらは頭が悪く、待ち伏せなんかはできない。
となると、何処かに群れのボスがいるはず。
「ガルル!」
「ギャキャ!」
「よっと」
「ガ……」
「ギャ……」
襲ってきた敵の攻撃を避け、抜刀により二体とも一撃で仕留める。
すると、指揮官であるイースさんが俺に気づいた。
「ユウマ殿! 助かります!」
「いえいえ、俺も護衛役ですから。それより、何処かにボスがいるはずです」
「なるほど、道理で連携が取れてるわけですね」
「俺なら探せると思うので、一回みなさんを馬車の周りに集められますか?」
「それは可能ですが、戦ってる最中の兵士達が……」
「それなら問題ないです、一度減らしますから。水の弾よ、敵を撃ち抜け——アクアバレット」
両手の指10本から水の弾を発動させ……兵士達に襲いかかる魔物達を貫く。
すると、煙のように消えて魔石になる。
これが、魔物の特徴だ。
「なっ、なんと的確な……我々兵士には当てずに、魔物だけを貫くとは。そもそも、剣士ではなかったのですか?」
「いえいえ、これくらいの魔法なら使えますよ。剣も使えるので、魔法剣士とかですかね。さあ、一回兵士皆さんを集めてください」
「はっ! 皆の者! 今のうちに体制を整えるのだ! 馬車を中心とした陣形を取れ!」
その言葉に兵士達が反応して、馬車に集まってくる。
その姿に魔物達が一度立ち止まる。
「奴ら、止まりましたね」
「指揮官からの指示を待ってるんですよ」
すると、敵の視線が一瞬だけ動いた。
「あそこか……! 水の槍よ、敵を貫け——アクアランス!」
「ど、どこに向かっ……」
「グギヤァァアァ!?」
右奥にあった茂みから、ホブゴブリンと思わしき魔物が血だらけで飛び出してきた。
それを追うようにして、剣と盾を持った犬に似た顔をしたコボルトナイトが現れる。
「ガルルァ!」
「なんと、あそこにいたのですか! よくお分りになられましたね」
「奴らの視線が一瞬、あちらに向いたので。そこに指揮官がいるだろうなと思いました。さて、皆さんはホブゴブリンにとどめをお願いします。俺は、コボルトナイトの相手をしますので」
「はっ、お手並み拝見させて頂きます」
「まあ、すぐに終わるので」
俺は軽い足取りで、身長が同じくらいのコボルトナイトと対峙する。
俺は基本的に対人戦ばかりやってたから、魔物退治は久々だった。
なので、まずは師匠の教え通りに油断せず相手を観察すること。
「ガルァ!」
「おっと」
上端から振り下ろされる剣を半身をずらして躱す。
俺がいた場所は地面が削れており、中々の速さと威力だ。
「ガルァ! クルァ!!」
「よっ、ほっ……アクアボール!」
「グァ!?」
攻撃をやめて、盾で魔法を防御した。
そして、引き続き避けながら魔法を打ち続けてわかった。
「ふむふむ、攻撃と防御は同時にはできないと。その証拠に、盾を使うときは剣は動いてない。その逆も然り……わざとそう見せてる可能性も低そうだね」
「ユウマ! 大丈夫!?」
「あっ、しまった。心配させちゃったか」
馬車の窓から身を乗り出して、セリスが心配そうに見ていた。
少しこいつの特徴を調べていただけなんだけど。
でも、大体わかったから平気だ。
俺は腰にある鞘に手を当てて、相手に接近する。
当然、相手は剣を振り下ろしてきた。
「ガルァ!」
「遅いよ——抜刀、一の太刀」
相手の攻撃を右に避け、懐に入って刀を振り抜いた。
抜いたら斬るという、居合本来の技だ。
「ガ……? ァァァ!」
「ふぅ、魔石になったね」
「お、お見事です! 新人冒険者の登竜門とも言われるコボルトナイトを容易く倒してしまうとは!」
「あっ、そうなんだ?」
俺は冒険者登録もしてないし、ランクとかよくわかっていない。
そもそも、うちの田舎には支部が存在しない。
戦争と魔獣退治とかだし、冒険者が好んで住むような場所じゃないし。
「そうですよ! 十五歳の成人を迎え、ようやく冒険者登録ができるのに……それを成人したばかり貴方が……これは勝てないわけですな」
「いえいえ、貴方達だけでも勝てましたよ」
「それはそうですが、何人か死んでいた可能性があります。幸い、死者はいないので助かりました」
「あっ、怪我人がいたら連れてきてくださいね」
水魔法の使い手である俺は、回復魔法も多少は扱える。
流石に光属性を持つ者と同じってわけにはいかないけど。
光属性の回復魔法には、四肢を再生させる魔法もあるらしいし。
「有り難いですが、お代金の方が……」
「いやいや、一緒に戦った仲間からお金は取りませんよ」
「あ、ありがとうございます! ……我らの主人以外にも、こんな貴族の方もいるのだな」
「ん? なんか言いました?」
「いえ、すぐに連れてきます」
すると、馬車の中からセリスが飛び出してきて……思い切り抱きついてくる!
「ユウマ! 無事ですか!? どこも怪我してないですか!?」
「わー!? 平気だって! だから離れてって!」
「わ、私としたことが……あぅ」
「い、いや、心配してくれたのは嬉しいよ」
や、柔らかかった……女の子ってあんなに柔らかいんだ。
うちには歳が近い女の子なんていなかったしなぁ。
うんうん、師匠達が女性はか弱いって言ったのはこれだったのか……本人達は別として。
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