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校外学習最終
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翌朝、きちんと片付けを済ませたら、ノイス先生の挨拶で締めとなる。
「皆さん、これにて校外学習は終了となります。色々なトラブルもありましたが、ひとまず犠牲者が出ることなく終わり正直ホッとしております。不幸中の幸いですが、皆さんにとっても良い経験なったでしょう。妖魔はこちらの事情などわかってはくれません。いつ何処に現れ、我々に牙を剥くかはわからないのです。そのことを肝に命じて、今後も励んでください」
「「「はいっ!!!」」」
「いい返事です。それでは、無事に王都に着くまでは気を引き締めていきましょう」
その言葉で解散となり、順番に砦から出て行く。
そんな中、俺たち四人は最後まで残るように言われていたので待っている。
「なんだろ? トールは聞いてる?」
「いや、知らん」
「私もわからないわ」
「僕もです……あっ、なんか兵士の方々がきますよ?」
メルルの言う通り、砦から兵士達が出てきて俺達の前に並ぶ。
そして、隊長であるイアンさんが前に出てくる。
「皆の者、若き勇者たちに敬礼!」
「「「はっ!!!」」」
「あなた方は守られるべき存在なのに、我々の手助けをしてくださいましたっ! おかげで、我々も一兵も欠けることなく生き残ることができました——誠にありがとうございます!」
「「「ありがとうございましたっ!!!」」」
……なるほど、そのために残されたってわけか。
すると、三人の視線が俺に向けられる。
どうやら、俺に返事をしろってことらしい。
「いえ、お気になさらないでください。生意気を言うようですが、王族にとっては兵士の方々も守るべき対象ですから。お互いに協力しあっていきましょう」
「なんと……諸君! 聞いたなっ! 以後も、鍛錬を重ねていくぞ!」
「「「おうっ!!!」」」
「お付き合い頂きありがとうございました。それでは、我々はこれで失礼いたします」
再び敬礼をして、兵士達が砦に戻っていく。
そのタイミングを見計らって、ノイス先生がやってくる。
「すみませんね、付き合わせて」
「い、いえ、少し驚きましたけど」
「どうしてもお礼が言いたいとのことでしたから。もちろん、私もです……本当に感謝いたします」
「いいですって。あんまり持ち上げられても、どうしていいかわからないですし」
「ふふ、そのあたりもシグルドに似ておりますな」
「うげぇ……それは嫌です」
「ほほっ、全く同じセリフを言ってましたな。さて、我々も行きましょうか」
そして俺達も砦を後にするのだった。
◇
……どうやら、無事に済んだようじゃ。
兵士達からの報告を聞き、ようやく人心地つく。
「それでは、失礼いたします!」
「うむ、御苦労じゃったな」
兵士が下がった後、国王と二人きりになる。
「シグルド殿、良かったですね」
「ふん、別に心配しとらんかったわい」
「いやいや、ずっとイライラしてたのは誰ですか? この部屋の椅子は高いんですけどね……」
視線の先には、勢い余って儂が破壊してしまった椅子がある。
アレクいる場所が襲われたと知らせがきて、その報告を待っている間に。
「グヌゥ……」
「グヌゥじゃないですよ、全く」
「煩いわ、生意気な小僧め」
「私にそんな口を利けるのは、この国では貴方くらいですよ……」
無論、儂も他の家臣がいるときは控える。
しかし、今ここには此奴と儂しかおらん。
「なんじゃ? 今から敬語を使ったり、国王陛下とお呼びするか?」
「それはご勘弁を、逆に怖いので」
「ふん、ならいい。それで、此度の不始末をどうするつもりじゃ?」
「それですね……いやはや、困ったものです。そして、私も舐められたものですね。おそらく、騎士団の件には第二王妃の親族が関わっているかと」
「やはり、そうなるか」
何せ王女と第二王子に加えて、貴族の子供達が向かう砦。
事前に調べるのは当然のことだった。
それを、その一派が疎かにしたということらしい。
「ええ、確証はないですが。だからこそ、こちらも責めにくいですね」
「兵士達を叱り付けるのは簡単じゃ。しかし、その尻尾までは掴めんか。ったく、相変わらずせこい家じゃのう。あのカラドボルグ伯爵家の連中は」
「まあ、仕方ありませんよ。伯爵とはいえ、代々続く家柄ですから。顔も広いですし、勢力も強いです」
「しかし、何もせんわけにはいかんぞ? でないと、儂が乗り込みかねん」
こちとら、可愛い息子が狙われているのじゃ。
うちにいるマリアも、心配で泣きそうになっていたし。
「ええ、わかっています。然るべき対応はしますよ。なので、アレク君には英雄になってもらいましょう」
「ほほう? どうするつもりじゃ?」
「ちなみに、アレク君を餌にしてもいいですかね? まあ、発破をかけるという意味もありますけど」
「ふむぅ……まあ、これも彼奴の試練になるか。わかった、好きにするがいい。今のアレクなら平気だろう」
「では、こんな感じで話を……」
「ふむふむ……それは面白いのう」
ある程度、話を聞き終えた儂は、それを許可する。
アレクよ、お主はよくやった。
後は、儂等に任せておくがいい。
~あとがき~
読者の皆様、最新話まで読んでくださり、誠にありがとうございます。
こちらのミスにより、前話と話が同じだったようで申し訳ありませんでした🙇♂️
ご指摘してくださった方々に感謝いたします!
「皆さん、これにて校外学習は終了となります。色々なトラブルもありましたが、ひとまず犠牲者が出ることなく終わり正直ホッとしております。不幸中の幸いですが、皆さんにとっても良い経験なったでしょう。妖魔はこちらの事情などわかってはくれません。いつ何処に現れ、我々に牙を剥くかはわからないのです。そのことを肝に命じて、今後も励んでください」
「「「はいっ!!!」」」
「いい返事です。それでは、無事に王都に着くまでは気を引き締めていきましょう」
その言葉で解散となり、順番に砦から出て行く。
そんな中、俺たち四人は最後まで残るように言われていたので待っている。
「なんだろ? トールは聞いてる?」
「いや、知らん」
「私もわからないわ」
「僕もです……あっ、なんか兵士の方々がきますよ?」
メルルの言う通り、砦から兵士達が出てきて俺達の前に並ぶ。
そして、隊長であるイアンさんが前に出てくる。
「皆の者、若き勇者たちに敬礼!」
「「「はっ!!!」」」
「あなた方は守られるべき存在なのに、我々の手助けをしてくださいましたっ! おかげで、我々も一兵も欠けることなく生き残ることができました——誠にありがとうございます!」
「「「ありがとうございましたっ!!!」」」
……なるほど、そのために残されたってわけか。
すると、三人の視線が俺に向けられる。
どうやら、俺に返事をしろってことらしい。
「いえ、お気になさらないでください。生意気を言うようですが、王族にとっては兵士の方々も守るべき対象ですから。お互いに協力しあっていきましょう」
「なんと……諸君! 聞いたなっ! 以後も、鍛錬を重ねていくぞ!」
「「「おうっ!!!」」」
「お付き合い頂きありがとうございました。それでは、我々はこれで失礼いたします」
再び敬礼をして、兵士達が砦に戻っていく。
そのタイミングを見計らって、ノイス先生がやってくる。
「すみませんね、付き合わせて」
「い、いえ、少し驚きましたけど」
「どうしてもお礼が言いたいとのことでしたから。もちろん、私もです……本当に感謝いたします」
「いいですって。あんまり持ち上げられても、どうしていいかわからないですし」
「ふふ、そのあたりもシグルドに似ておりますな」
「うげぇ……それは嫌です」
「ほほっ、全く同じセリフを言ってましたな。さて、我々も行きましょうか」
そして俺達も砦を後にするのだった。
◇
……どうやら、無事に済んだようじゃ。
兵士達からの報告を聞き、ようやく人心地つく。
「それでは、失礼いたします!」
「うむ、御苦労じゃったな」
兵士が下がった後、国王と二人きりになる。
「シグルド殿、良かったですね」
「ふん、別に心配しとらんかったわい」
「いやいや、ずっとイライラしてたのは誰ですか? この部屋の椅子は高いんですけどね……」
視線の先には、勢い余って儂が破壊してしまった椅子がある。
アレクいる場所が襲われたと知らせがきて、その報告を待っている間に。
「グヌゥ……」
「グヌゥじゃないですよ、全く」
「煩いわ、生意気な小僧め」
「私にそんな口を利けるのは、この国では貴方くらいですよ……」
無論、儂も他の家臣がいるときは控える。
しかし、今ここには此奴と儂しかおらん。
「なんじゃ? 今から敬語を使ったり、国王陛下とお呼びするか?」
「それはご勘弁を、逆に怖いので」
「ふん、ならいい。それで、此度の不始末をどうするつもりじゃ?」
「それですね……いやはや、困ったものです。そして、私も舐められたものですね。おそらく、騎士団の件には第二王妃の親族が関わっているかと」
「やはり、そうなるか」
何せ王女と第二王子に加えて、貴族の子供達が向かう砦。
事前に調べるのは当然のことだった。
それを、その一派が疎かにしたということらしい。
「ええ、確証はないですが。だからこそ、こちらも責めにくいですね」
「兵士達を叱り付けるのは簡単じゃ。しかし、その尻尾までは掴めんか。ったく、相変わらずせこい家じゃのう。あのカラドボルグ伯爵家の連中は」
「まあ、仕方ありませんよ。伯爵とはいえ、代々続く家柄ですから。顔も広いですし、勢力も強いです」
「しかし、何もせんわけにはいかんぞ? でないと、儂が乗り込みかねん」
こちとら、可愛い息子が狙われているのじゃ。
うちにいるマリアも、心配で泣きそうになっていたし。
「ええ、わかっています。然るべき対応はしますよ。なので、アレク君には英雄になってもらいましょう」
「ほほう? どうするつもりじゃ?」
「ちなみに、アレク君を餌にしてもいいですかね? まあ、発破をかけるという意味もありますけど」
「ふむぅ……まあ、これも彼奴の試練になるか。わかった、好きにするがいい。今のアレクなら平気だろう」
「では、こんな感じで話を……」
「ふむふむ……それは面白いのう」
ある程度、話を聞き終えた儂は、それを許可する。
アレクよ、お主はよくやった。
後は、儂等に任せておくがいい。
~あとがき~
読者の皆様、最新話まで読んでくださり、誠にありがとうございます。
こちらのミスにより、前話と話が同じだったようで申し訳ありませんでした🙇♂️
ご指摘してくださった方々に感謝いたします!
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