元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

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校外学習その六

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結局、お祭り騒ぎになり、生徒や先生達もはしゃいでいる。
もちろん、護衛や見回りの兵士さんがいるからできることだ。
なので話あった結果、砦の中の兵士や、外で見回りをしている方々にも配ることにした。
外の方にはトールとメルルが、砦の中は俺とセレナが担当する。

「アレク、どうするの? 一人一人に配っていく?」

「うーん、相手によっては気を使うしね」

「まあ、私達は王族ですし」

「責任者の方に言うのが一番……あれかな?」

トレイを持って砦に入ってきた俺たちを、兵士の方々が遠巻きに見ていたが……。
その奥から、騎士服を着た男性が駆けてくる。

「こ、これは! アレク様にセレナ様! 如何なさいましたか?」

「お疲れ様です。お仕事中に申し訳ないですが、貴方が隊長さんですかね?」

「 はっ! 私が部隊長を務めているイアンと申します!」

「イアンさんですね。えっと、食事が余ったので、皆さんもどうかなと思いまして。短い間ですが、お世話になりますから」

「わ、我々にですか? しかし、我々は仕事で……」

すると、周りにいた方々がざわざわする。

「あれって、さっきの美味そうなやつ?」

「ここからでも良い匂いがしたよな……」

「腹減ったよなぁ」

そんな声が漏れてくる。

「お、お前たち! 申し訳ありません!」

「いえいえ、お気になさらずに。とりあえず、食べきれないので食べてくれると助かります」

「……そ、そういうことでしたら……お前達! アレク様とセレナ様が自らが作った食事を分けてくれるそうだ!」

「「「ウォォォォ!」」」

「ふぅー! やったぜ!」

「アルカディア王国万歳!」

「アレク様! セレナ様! ありがとうございます!」

……ありゃ、予想以上に盛り上がってる。
みんな、そんなにお腹を空かしてたのかな?

「もしかして、支給が足りてないのですか? もしそうなら、我々の方から国に……」

「い、いえ! それは問題ありません! ただ、クレイジーボアを食べられるのは珍しいのです。特に親子連れとなると、見つけるのも一苦労ですから」

「あっ、なるほど。実は、獣人の留学生であるメルルが見つけてくれたんです」

「そういうことでしたか……これは認識を改める必要がありそうですね」

「ええ、そうしてくれると嬉しいです。彼女は良い子ですから。では、後はお願いします。我々がいると、気を使うでしょうから」

「わかりました。それに、ご配慮に感謝いたします」

俺とセレナはトレイを渡し、砦から出て行く。
そこでふと気になったことを聞くことにした。

「おい、随分と静かだったな?」

「へっ? わ、私?」

「お前以外に誰がいるんだよ? 

「い、いや、アレクがきちんとしてるから……つい、その……かっこ」

「柄じゃないってか?」

「そ、そうよ! 急にどうしたのよ? 言い出しっぺも貴方じゃない。貴方のことだから、人気取りのためとかじゃないだろうし」

確かに今回のことは、俺から提案をした。
ふと、前世の出来事を思い出したからだ。
自分が社畜だった頃、上司の方が差し入れをしてくれた時嬉しかったなと。
会社自体はクソだったけど、それだけはいい思い出として残ってる。

「まあ、今更人気取りしても仕方ないし。別に大したことじゃないさ。こうしておけば、きちんと仕事もしてくれるだろうし。あっちも得して、こっちも得……良いことづくめだろ? それに、彼らのおかげで俺たちは校外学習ができる訳だし」

「それはそうね。ほんと、最近のアンタはわからないわ」

「はは……あっ、そういや頼みがある」

ちょうど二人きりだし、早めに言わないと断り辛くなってしまう。
今ならまだ、お互いに誘われてないはず。

「何よ?」

「明日のダンス、お前を誘っても良いか?」

「……ふぇ!? そ、それって……」

「そうした方がお前も都合が良いだろう? ……なんで拳を振り上げてる? お、おい、待て——イテェ!?」

顔を真っ赤にしたセレナに肩パンされる!

「……もう! アレクの馬鹿! そっちもきちんとしなさいよっ!」

「ど、どういうことだってばよ!?」

「知らない!」

「お、おい! ダンスの件は……」

「そ、それは……良いわよ、踊ってあげるわ」

そう言い、俺を置いて走り去る。

「ったく、相変わらず変な奴だな」

まあ、いいか……これで、ひとまずミッションクリアだ。





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