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校外学習その二
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皆さん覚えているかわかりませんが、この世界には妖魔という生き物がいます。
元からこの大陸にいて我々が後からきたのかとか、伝説ではそいつらが原因で人類は滅亡しかけたとか……まあ、真実は定かではない。
ただ一つだけ言えることは、彼らは人類の敵ということだけ。
人を見れば見境なく襲ってくるし、食料となる動物などを食べてしまうからだ。
ちなみに彼らのせいで大型の肉食動物は、ほとんど絶滅してしまったらしい。
「以上、今更の説明でした。詳しい話は後ほど出てくるかと」
「何をぶつぶつ言ってるのよ?」
「いや、自分に言い聞かせてた。妖魔なんて見たことないし」
「私だってないわよ。そりゃ、絵とかではあるけど」
「流石に俺もないっすね。メルルちゃんは?」
「僕はあります……森にいた頃は、結構出会うことが多いんです。それこそ、お散歩中とかに」
「「「こわっ」」」
「そ、そうなんですよ! それもあって、人族達のやり方とか暮らしとかを学ばないといけないってことらしいです」
そんな会話をしつつ、他のクラスメイトとすれ違いつつ森の中を歩いていく。
道中には薪や葉っぱ、山菜などがあるので一頭だけ連れてきた馬に乗せる。
「それにしても、俺達は浮いてるなぁ。すれ違う生徒達いるけど、全然話しかけてこないし」
「それはお前のせいだよ」
「一緒にしないでくれる? アレクのせいよ」
「え、えっと、アレク君って王子様だから……」
「がーん……」
「ははっ! それを口に出して言う奴初めて見たぜ!」
「ほっとけ!」
まあ、気楽だから良いんだけど……別に寂しくなんかないんだから!
それにしても、トールやセレナがいてくれて良かった。
もちろん、メルルも……俺に気遣って一緒の班になってくれたし良い子だよな。
ある程度進んだ先で、メルルが俺たちの前に立つ。
すると、その耳がピクピクと動いていた。
「メルル、どうした?」
「あっちから生き物の気配がします。おそらく、人ではないですね」
「あら、そういうのも分かるの?」
「はい。僕たちの頭についてる耳は音というより、気配とか音波とかを感知できるんです」
「なるほど、それは便利だね」
多分、蛇のピット器官みたいな感じか。
森の中において、獣人の強さは発揮されると言われるわけだ。
斥候しては、とてつもなく優秀だろうね。
「んで、どうします? セレナ様がリーダーなんで決めてください」
「そうねぇ……武器の適正的に、アレクが先頭が良いんだけど」
「うげっ……まあ、良いけど。俺が前衛向きなのは確かだし」
「それじゃあ、決まりね。みんな、油断せずに行くわよ」
俺たちは頷き、メルルの指示で森の中を進んでいく。
先頭の俺は剣、次に短剣のメルル、三番目のセレナは弓、殿のトールは槍を使う。
魔法のない世界においては、パーティーバランスは悪くない。
「アレク君、近くです……あそこの草むらをかき分ければいるかも」
「わかった。いっぺんに行って気づかれるのは困るから、まずはメルルが見てきてくれるか?」
「はいっ、任せてください」
俺たち三人はその場で静かに待機して、メルルを待つことにする。
そして、ものの二、三分でメルルが戻ってきた。
「メルル、どうかしら?」
「クレイジーボアが一頭と、小さい個体がいました。多分、母親と子供かと思います。今はのんびりと草を食べてますね」
クレイジーボア。
それはでかいイノシシで、何でも食べてしまう雑食性の生き物だ。
畑などを荒らしてしまうので、見つけ次第狩ることになっている。
何より、その突進は人くらいは簡単に殺せてしまう。
「ありがとう、メルル。そうなると、同時に仕留めた方が良いわね。怒った親ほど、怖いものはないし……私が弓で子供に仕掛けるわ。そこを素早いメルルがとどめを。でかい方は、男性陣に任せるわ」
「まあ、それが妥当か。トール、俺が突っ込むから掩護をよろしく。隙さえ作れば、俺がどうにかする」
「はいよ、任せとけ。突進される前に仕留めるのが良いわな」
「それが良いわね。さて、私達はぐるっと回って向こう側から。その仕掛けたタイミングで、二人は親の方をお願い」
「「了解」」
作戦を決めた俺たちは二手に分かれて、行動を開始する。
俺とトールは草むらの陰から、クレイジーボアを監視する。
ちなみに、その大きさは体長二メートルを超えていた。
まず、前の世界ではお目にかかれないサイズ感である。
「アレク、チャクラの準備は平気か?」
「余裕さ。こちとら、最近は親父に……ガクブル」
「そういや、そうだったな。俺も挨拶に行かないと……さて、そろそろかな?」
「多分ね」
その言葉通りに『シュッ!』という風切り音が聞こえたと思ったら、子供のボアに矢が突き刺さっていた。
「プギ!?」
どうやら胴体に刺さったらしく、痛みによって暴れ出す。
それに気づいた母親が、そっちに気を取られたので……。
「トール!! 一瞬で決めるぞ!」
「おうよ!」
足にチャクラを溜めて——二人当時に、一瞬で相手に肉迫する。
「ブルァ!」
「遅いっ!」
トールの槍が、相手の前脚に突き刺さる。
当然、相手はバランスを崩すので……。
「悪いな、せめて苦しまずに——」
その隙をつき、チャクラを込めた斬撃を首に振り下ろすと……少し遅れて首と胴体が分かれる。
その横では、メルルが子供のイノシシを仕留めていた。
初めての連携だったが、どうやら上手くいったらしい。
元からこの大陸にいて我々が後からきたのかとか、伝説ではそいつらが原因で人類は滅亡しかけたとか……まあ、真実は定かではない。
ただ一つだけ言えることは、彼らは人類の敵ということだけ。
人を見れば見境なく襲ってくるし、食料となる動物などを食べてしまうからだ。
ちなみに彼らのせいで大型の肉食動物は、ほとんど絶滅してしまったらしい。
「以上、今更の説明でした。詳しい話は後ほど出てくるかと」
「何をぶつぶつ言ってるのよ?」
「いや、自分に言い聞かせてた。妖魔なんて見たことないし」
「私だってないわよ。そりゃ、絵とかではあるけど」
「流石に俺もないっすね。メルルちゃんは?」
「僕はあります……森にいた頃は、結構出会うことが多いんです。それこそ、お散歩中とかに」
「「「こわっ」」」
「そ、そうなんですよ! それもあって、人族達のやり方とか暮らしとかを学ばないといけないってことらしいです」
そんな会話をしつつ、他のクラスメイトとすれ違いつつ森の中を歩いていく。
道中には薪や葉っぱ、山菜などがあるので一頭だけ連れてきた馬に乗せる。
「それにしても、俺達は浮いてるなぁ。すれ違う生徒達いるけど、全然話しかけてこないし」
「それはお前のせいだよ」
「一緒にしないでくれる? アレクのせいよ」
「え、えっと、アレク君って王子様だから……」
「がーん……」
「ははっ! それを口に出して言う奴初めて見たぜ!」
「ほっとけ!」
まあ、気楽だから良いんだけど……別に寂しくなんかないんだから!
それにしても、トールやセレナがいてくれて良かった。
もちろん、メルルも……俺に気遣って一緒の班になってくれたし良い子だよな。
ある程度進んだ先で、メルルが俺たちの前に立つ。
すると、その耳がピクピクと動いていた。
「メルル、どうした?」
「あっちから生き物の気配がします。おそらく、人ではないですね」
「あら、そういうのも分かるの?」
「はい。僕たちの頭についてる耳は音というより、気配とか音波とかを感知できるんです」
「なるほど、それは便利だね」
多分、蛇のピット器官みたいな感じか。
森の中において、獣人の強さは発揮されると言われるわけだ。
斥候しては、とてつもなく優秀だろうね。
「んで、どうします? セレナ様がリーダーなんで決めてください」
「そうねぇ……武器の適正的に、アレクが先頭が良いんだけど」
「うげっ……まあ、良いけど。俺が前衛向きなのは確かだし」
「それじゃあ、決まりね。みんな、油断せずに行くわよ」
俺たちは頷き、メルルの指示で森の中を進んでいく。
先頭の俺は剣、次に短剣のメルル、三番目のセレナは弓、殿のトールは槍を使う。
魔法のない世界においては、パーティーバランスは悪くない。
「アレク君、近くです……あそこの草むらをかき分ければいるかも」
「わかった。いっぺんに行って気づかれるのは困るから、まずはメルルが見てきてくれるか?」
「はいっ、任せてください」
俺たち三人はその場で静かに待機して、メルルを待つことにする。
そして、ものの二、三分でメルルが戻ってきた。
「メルル、どうかしら?」
「クレイジーボアが一頭と、小さい個体がいました。多分、母親と子供かと思います。今はのんびりと草を食べてますね」
クレイジーボア。
それはでかいイノシシで、何でも食べてしまう雑食性の生き物だ。
畑などを荒らしてしまうので、見つけ次第狩ることになっている。
何より、その突進は人くらいは簡単に殺せてしまう。
「ありがとう、メルル。そうなると、同時に仕留めた方が良いわね。怒った親ほど、怖いものはないし……私が弓で子供に仕掛けるわ。そこを素早いメルルがとどめを。でかい方は、男性陣に任せるわ」
「まあ、それが妥当か。トール、俺が突っ込むから掩護をよろしく。隙さえ作れば、俺がどうにかする」
「はいよ、任せとけ。突進される前に仕留めるのが良いわな」
「それが良いわね。さて、私達はぐるっと回って向こう側から。その仕掛けたタイミングで、二人は親の方をお願い」
「「了解」」
作戦を決めた俺たちは二手に分かれて、行動を開始する。
俺とトールは草むらの陰から、クレイジーボアを監視する。
ちなみに、その大きさは体長二メートルを超えていた。
まず、前の世界ではお目にかかれないサイズ感である。
「アレク、チャクラの準備は平気か?」
「余裕さ。こちとら、最近は親父に……ガクブル」
「そういや、そうだったな。俺も挨拶に行かないと……さて、そろそろかな?」
「多分ね」
その言葉通りに『シュッ!』という風切り音が聞こえたと思ったら、子供のボアに矢が突き刺さっていた。
「プギ!?」
どうやら胴体に刺さったらしく、痛みによって暴れ出す。
それに気づいた母親が、そっちに気を取られたので……。
「トール!! 一瞬で決めるぞ!」
「おうよ!」
足にチャクラを溜めて——二人当時に、一瞬で相手に肉迫する。
「ブルァ!」
「遅いっ!」
トールの槍が、相手の前脚に突き刺さる。
当然、相手はバランスを崩すので……。
「悪いな、せめて苦しまずに——」
その隙をつき、チャクラを込めた斬撃を首に振り下ろすと……少し遅れて首と胴体が分かれる。
その横では、メルルが子供のイノシシを仕留めていた。
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