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平和な日々

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それから三日が過ぎ……特に変わりはなく生活ができている。

てっきり、何か難癖をつけられるかとも思っていたが……。

どうやら、あっちもそれほど馬鹿ってわけじゃないらしい。

俺がいくらグータラ公爵子息とはいえ、第二王子にして王位継承権を持つ。

それと正面から喧嘩することの意味はわかってるってことか。

……無論、あんまり好きじゃない手なんだけど。

「あの場合は仕方ないよなぁ」

「お兄様? どうしたのですか? 珍しく悩んでますが……明日のお天気は大丈夫でしょうか??」

「妹よ? 酷くない? 兄だって、悩みくらいはあるさ」

「クスクス……冗談ですの」

最近のマリアは、前よりも明るく元気になった。
メルルという友達が出来たことと、セレナが来るということを伝えたからだろう。
この笑顔が見れるなら、俺の苦労など安いものだ。
文句があるなら、どっからでもかかってこい……やっぱり、やめてくれると助かります!
出来るだけ、平穏な日々を過ごしたいものです。

「それより、父上はいつまでこっちにいるんですかね?」

「んっ? 儂は暫く帰らんぞ?」

「はい? ……どういうこと?」

「今は比較的妖魔も大人しいし、エルフ族とも揉めとらんしな。そもそも、いずれ死ぬ儂に頼りきりではいかん。何より、こっちでやることがあるからのう」

理由はわからないが、春の時期は妖魔は大人しいらしい。
夏から秋にかけて活発的になるとされている。
なので国境の守りの要である親父も、こうして休みを取ってるってことか。

「それはわかるけど、こっちですることってなんだ?」

「大したことじゃないわい。鈍りきった騎士団を鍛え直したり、国王の相手をしたりな。あとは……まあ、色々とあるんじゃ」

「へぇー、そうなんだ?」

「何を他人事みたいに言っとるんじゃ?  その中には、お主の鍛錬も含まれているのだが?」

「げげっ!? いやぁ~俺は遠慮しとくよ。ほら、親父も歳だから無理するとアレだし」

これはまずい。
親父がいるということは、俺の平穏が侵されるということだった。

「何を言っとる。まだまだ儂は現役だから心配するな」

「別に心配していってるんじゃないし! 俺は鍛錬が嫌だから言ってるんだよ!」

「何を!? この可愛い父上を心配せんか!」

「イテッ!? すぐに殴る父親の何が可愛いんだよ! というか、全然元気じゃねえか! 心配するだけ損だっ!」

「儂はそれでも息子に心配されたいのじゃ!」

「理不尽!!!!」

「ふふ、お二人共……お食事中ですわ」

「「はぃ……」」

マリアに冷たい目で見られ、俺と親父も大人しく座る。
くそっ、俺は何も悪いことをしてないのに。
朝は忙しいし、夕飯くらいはゆっくり食べたい。

「ですが、お父様もお身体だけにはお気をつけてくださいね?」

「うむ、わかっておる。だが、そうも言ってられん。民が危険を感じずに、健やかに過ごすのはいい。それを守ることが、我々貴族の役目だからだ。だが、平和ボケした貴族や騎士が多すぎる」

「それは仕方ないことですわ。この王都近くでは妖魔や野党もあんまりいませんし……人はその立場になってみたり、経験がないとわからないものかと」

「その通りじゃ。ゆえに、儂が奴らを死ぬ目に遭わせんといかん。いざという時に使えないのでは話にならんからのう」

ノブレスオブリージュ……貴族の義務か。
民の税金で生きてる以上、民の為に働くということ。
それが本来の貴族のあり方であり、国が定めているんだけど……。
果たして、何人の貴族がそう思っているかねぇ。

「アレクお兄様も気をつけてくださいね?」

「ん? なんのこと?」

「えっ? ……確か、二年生は校外学習があるとか……戦闘訓練を兼ねた」

「……そうだった」

前の世界でもあった、いわゆる親睦を深めるためのオリエンテーションの一環だ。
新しいクラスに馴染むためと、連帯感を生むために。
一緒に食事を作ったり遊んだり、前の世界と違うのは戦闘訓練をすることくらいか。

「……お父様、お兄様を扱くことを許可しますの」

「マリアさん?」

「流石に腑抜けすぎですわ。これだと、心配になりますの」

「ククク……マリアの許可があれば怖い物ものはないわい。アレクよ、覚悟するがいい。丁度良かった、お主を鍛え上げる必要があったからのう」

「嫌だァァァァ!?」

「問答無用! 夕飯を食べたら鍛錬を始めるぞ!」

「ヒィィィ!?」

その後、ゆっくりするはずだった俺は……寝る前にボロボロになる羽目に。

俺はただ、静かに過ごしたいだけなのに!

どうしてこうなったァァァ!?
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