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お城にて

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その後、二人で馬車に乗って中央区画にある王城へと向かう。
この国の都市は、王城を中心に成り立っている。
南西には俺たちが住む貴族街、北西には学校や研究所、南東には商業区域、北東には平民達
が住む場所と……大まかに言えば、この四つに分かれている。

「にしても、久々に王城なんかに行くなぁ」

「そうね、アレクがくるなんていつ以来かしら?」

「うーん……下手すると、一年以上行ってないかも」

「い、一年以上……王位継承権第二位とは思えないわね」

なにせ、いく用事がない。
あんな堅苦しいところにはいきなくないし、行ったとしても良い気分にはならない。
そもそも、俺がくるのを嫌がる人たちもいるし。
それこそ第二王妃や、その取り巻きや息子達とか。
俺自身王位には興味ないのに、全くご苦労な事だ。

「仕方ないだろ。俺が行っても、何も良いことないし」

「そ、それはそうだけど……」

「何よりめんどい」

「……もう! そっちが本音でしょ!?」

「ばれたか」

これ以上、セレナに気を遣わせるわけにはいかないな。
というか、俺の婚約者になったばかりに苦労しただろう。
……今の俺が出来るだけ責任を取るしかないか。
よし、セレナに良い男を見つけてあげよう。




王城に着いたら、護衛に案内されてスルスルと進んでいく。

セレナは王女だし、俺は王位継承権を持ってるから当然なんだけど。

ただ、会う人全てが頭を下げてくるのは違和感を覚える。

この辺がまだ、俺の前世の影響があるってことだと思う。

「相変わらず、堅苦しいところだな。静かなのは良いが、空気が堅苦しすぎる」

「当たり前じゃない。ここには、この国の重要人物が揃っているのよ? というか、本来ならアレクも住んでるはずだし」

「そういや、そうだったらしいな」

「そしたら、もっと早く……ううん、だからこそ良かったのかもね」

「なんの話だ?」

「な、なんでもないわ。でも、許されたのはシグルド様がいたからでしょうね」

「まあ、それもあるか」

なにせ王太子のスペアなので、死なれたりしたら困る。
なので普通なら王城で暮らすはずだったが、様々な事情によりそうはならなかった。
まあ、俺としてはこんな所に住みたくないから良いけどね。
そのまま歩いていくと、銀の鎧に身を包んだ騎士がいる扉の前に到着する。

「これはアレク様にセレナ様」

「ロランさん、御機嫌よう。もうお父様はいる?」

「ええ、お待ちしておりますよ」

「ロランさん、お久しぶりです」

えっと……この方は近衛騎士団長であるロランさんだよね。
伯爵家出身の人で、身長も高いし頭も良く顔もよく性格も良い……なんか腹立ってきたな。
まあ、めちゃくちゃ良い人なんだけど。
俺の親父の弟子でもあるから、俺も良く遊んでもらった記憶がある。

「ええ、本当に。その際は、成人の挨拶もせずに申し訳ありませんでした」

「別に良いですよ。貴方がここを離れるわけにはいきませんから。国王陛下を守るのが、貴方の仕事ですし」

「そう言って頂けると助かります」

別に近衛騎士団長というのは、騎士をまとめる人を指していない。
その肩書きは、何より国王陛下を守る者という一点にある。
要は、国王陛下に一番信頼されている人が近衛師団長に就くってことだ。

「それより、こっちこそすみません。多分、うちの親父がご迷惑をかけたかと……」

「はは……昨日は打ち負けてしまい、みすみす国王陛下を連れ去られてしまいましたよ」

「本当にすみません!」

本当に何をやってんの!?
近衛騎士団長をぶっ倒して、国王陛下を攫ったってことだよね!?

「いえいえ、私も自分の未熟さを実感しました。まだまだ、あの方には追いついていないということに。これからも、研鑽を積んでいこうと」

「はぁ……ご立派ですねー、俺はほどほどにしときます」

「何を仰っているのですか。貴方の才能は、シグルド様に勝るとも劣らないというのに」

「煽てても何も出ませんよ」

「いえいえ、思ったことを言ったまでです」

すると、痺れを切らしたセレナにど突かれる。

「ほら、話なら後にしなさいよ」

「おっと、申し訳ありません。それでは、お入りください」

「はぁ、緊張するなぁ」

「一応、公式じゃないから安心して良いからね?」

「そいつは助かる。というか、公式なんかにしたら勘ぐる奴とかもいるから面倒だ」

「……まあ、そういうことね。さあ、いくわよ」

……国王陛下か。

俺としては、悪い人ではないって感じなんだよなぁ。
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