元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

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不条理

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 そんな物思いにふけていると、運動場へ到着する。

 早速着替えて準備を済ませ、俺はテニスコートに立つ。

 相手はメルルで、その補佐としてセレナが付いている。

「アレク~! 良い!?」

「ああ、いつでも」

 俺は少し腰を落とし、両手でラケットをくるくると回す。
 ……別に意味はない。
 ただ、かっこいいかなと思っただけである……みんなはわかってくれるはず!

「メルル、思いっきりやりなさい」

「い、良いんですか?」

「ええ、平気よ」 

「わ、わかりました——いきます!」

 くると思った瞬間——気がつけば、球は俺の真横を通り過ぎていた。

「……はい? 速すぎじゃない!?」

「ふふん。そりゃ、そうよ。私がみっちり教え込んだもの。今では、期待の新人さんといったところね」

「えへへ、セレナさんの教え方が良いからですよ」

「いや、貴女の実力だわ。まさか、獣人の能力がここまで高いなんて」

 確かに、今の球のスピードは異常だ。
 俺の高校に150キロを投げる投手がいたが、そのスピードより明らかに速かった。
 凄い人は二百キロを超えるとはいえ、女子とは思えないスピードである。

「す、すごいなぁ」

「あんたも本気を出したら?」

「……よし、やってみるか」

「あら、珍しい」

「言ったろ……少しやる気を出すって」

「それじゃあ、いきますよっ!」

 高いトスを上げ、そっから弧を描くようなサーブが飛んでくる!
 俺は球が打つ方を予測して、その着地点に向かい跳ね返す!
 その打ち返した球は、メルルの反対の方に行き、こちらのポイントとなる。

「ふっ、どんなもんよ」

「むむっ……! 悔しいです!」

「いや、そこは顔をしかめて……悔しいですっ! ってしないと」

「ふえっ?」

「いや、すまん」

 いかんいかん、ついつい前世の癖が出てきてしまう。
 まあ、お陰で球は返せたんだけど。
 伊達にテニスの王子○は見てないぜ! 王子違いだけど!

「さすがは、腐っても英雄シグルドの息子ね。そうよ、昔から生意気だったわ。何でも器用にこなして……なんか、私も腹が立ってきたわ」

「おい? 人を腐ったとかいうなし。というか、どうしてお前までラケットを構えてんの?」

 とても嫌な予感しかしないんですけど?
 なぜニヤニヤしているのですかね?

「ふふ、なんでかしらね? メルル! 手加減はいらないわっ! 二人でやるわよ!」

「い、良いですか?」

「もともと、男子と女子では力に差があるのよ。それくらいのハンデはあって良いわ」

「抗議します! それは男女差別です!」

「うるさいわねっ!  大人しくやられなさい!」

「うひぁ!?」

 次々と玉が飛んでくるので、必死に返していく。

「メルル!」

「はいっ!」

「くっ!?」

 あちらは交互でいいので、余裕で返してくる。

 俺は必死にコートを走り回り、ひたすら球を返すのだった。

 俺は爽やかなスポーツをしたかったのに……どうしてこうなったァァァァ!?
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