元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

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夕暮れ

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無事に服を買った後は、マリアがメルルを連れまわして街を散策する。

俺とカエラは、それを眺めつつ、後を追っていき……時間が過ぎていく。

そして、日が暮れてくると……。

「えっと、次は……コホッ、コホッ」

「へ、平気ですか!?」

……この辺が限界かな。
マリアは身体が弱いので、長時間外に出るのは厳しい。

「マリア、帰ろう」

「い、いえ、まだ案内したいところが……」

「ぼ、僕なら平気ですから」

……ふむ、随分と気を許してるな。
やはり、自分を特別視しない相手は良いよね。
その気持ちは、俺にも痛いほどわかる。
そうなると、俺がマリアのためにできることは……。

「メルル、良かったらまた来てくれるか?」

「……ふぇ?」 

「いや、無理にとは言わないが……マリアが喜ぶかと思ってな」

「ぼ、僕でよければ!」

「ほんとですの? ……わぁーい!」

「こら、あんまりはしゃぐと倒れるぞ」

俺は、はしゃぐマリアを優しく抱きかかえる。

「お、お兄様!?」

「良いだろ、たまには兄らしいことをさせてくれ」

「……お兄様は、いつだって兄らしいですよ?」

「そうかい」

「知ってるんですよ? お家から出れない私のために、お兄様が家にいることは……」

「ふっ、そいつは買い被りすぎたな。俺は、ダラダラしたいだけさ」

「……それでも良いんです……私は嬉しかったので……すぅ」

そう言い、眠りに着く。
どうやら、安心したらしい。
俺は起こさぬように、静かに馬車に乗せる。

「カエラ、マリアを頼む。俺はメルルを送ってくるから」

「かしこまりました。それでは、お嬢様はお任せを」

「わ、悪いですよ! 僕、一人で帰れますから!」

「おいおい、俺達と会った原因を忘れたのか?」

「……そういえば、僕は迷子でした」

……うむ、やはり放ってはいけない気がする。
天然ドジっ子というのは存在したらしい。

「何より、日が暮れてきてる。こんな中、女の子を一人で返すわけにはいかない」

「……ふえっ!? お、女の子扱い……」

「いや、どっからどう見たって女の子じゃん。それに、何かあったら国際問題になっちゃうし」

「……じゃあ、よろしくお願いします。カエラさんも、今日はありがとうございました」

「いえいえ。ご主人様、送り狼にならないでくださいね?」

「ならないよっ! というか、俺が国際問題じゃん!」

「送り狼ですか……?」

「はいはい、気にしない。さあ、門限があるはずだし早く帰ろう」

俺はメルルの背を押して、学校へと向かう。
そして夕暮れの中、二人で並んで歩く。

「今日は、本当にありがとうございました」

「いやいや、こちらこそ。マリアと遊んでくれてありがとう。少し特殊で、中々対等な立場の友達がいなくてね」

「僕で良かったら、いつでも遊びに行きます」

「ありがとう。じゃあ、マリアに伝えとくよ」

「はい! それにしても……ほんとに凄いところですね」

「うん?」

「人も多いし、こんなに建物がいっぱいです」

「まあ、無理もないよね」

見渡す限り、西洋風の家がびっしりと並んでいる。
道も多く、俺自身も王都全体を把握はしてない。
散策するだけでも、数日を要するだろう。

「ここに向かってくるまでの道は、そうでもなかったのに」

「ここは一番都会だしね。メルルが通ってきた関所付近は田舎だから、そこまで発展はしてないかな。何より、獣人族やエルフ族を刺激したくないし」

彼らは自然を大事にしている。
無駄に領地を広げたり、森や自然を壊す人族は嫌いだろう。
ゆえに、その付近は開発しないようになっている。

「そうですね。人族は野蛮だと教わってきました。でも、そんなことはなかったです。確かに変な目で見られたりしますけど……アレク君達は優しいです。それがわかっただけでも、この国に来て良かったです」

「まあ、獣人だろうが人族だろうが、結局は人それぞれだと思うけどね。悪い人もいるし、良い人もいるかな」

「それは……そうですね」

「ただ、何も知らずに悪く言うのは違うと思ってる。だから、メルルにも俺達のことを知って欲しいし……逆に、メルル達のことを教えて欲しい。その上で分かり合えないことがあったら、話をすれば良いだけさ」

「はいっ、こちらこそよろしくです!」

別に無理に仲良くする必要もないし、理解することもない。
 
ただ、お互いに線引きをして割り切れば良い。

……いやいや、何を小難しいことを考えているんだか。

そういうのは、王位を継ぐ王太子に任せておけば良いね。
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