元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

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寂しいメルル

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 ひとまずメルルを引っ張っていき、自宅の中に戻る。

「わぁ……広くて大きいですっ! 玄関も広いし、天井も高くて……あれって、螺旋階段って言うんですか?」

「まあまあ、落ち着いて。あとで、案内するからさ」

「ふふ、私がきた時と似たような反応ですね」

「そういや、そうだったね」

 カエラも来た頃は驚いていたもんだ。
 なにせエルフ族というのは、質素な生活を送ることが美徳とされているらしい。
 普段は木の上や森の中に小屋を建てて、静かに暮らしている。
 さらには自然を大事にし、精霊信仰をしている。
 そりゃ、人族とそりが合わないわけだよね。

「これはこれは、可愛らしいお嬢さんですね」

「あっ、セバス。急で悪いんだけど、お客さんを入れても良いかな?」

 基本的に、家の長はセバスだ。
 俺は長男だが、父上はセバスに全権を委ねている。
 ……まあ、グータラ嫡男だから仕方ないね!

「ええ、もちろんですとも。はじめまして、お嬢さん。私の名前はセバスと申します。アレク様のご友人の方ですかな?」

「は、初めまして! はいっ! メルルっていいます!」

「ほほっ、元気なお嬢さんですな。旦那様よりミストルティン家を預かる者として、メルル様を歓迎いたします」

「あ、ありがとうございます!」

「それでは、お靴を脱いで上がってくださいませ」

「わかりました、お邪魔——ヒャァ!? い、痛いよぉ~」

 急いで靴を脱ごうとしたからか、つんのめって転んでしまった。
 そういえば、初日も机に頭をぶつけていたっけ。
 どうやら、ドジっ娘属性もありそうだね。

「コホン……アレク様、そこは受け止めて差し上げないと」

「ええっ!? 俺が悪いの!?」

「そうですよー、きちんと手を押さえてあげないと」

「うぅー……ごめんなさい~」

「へいへい、そうですね。ほら、立って。今度は、しっかり掴まってね」

「は、はいっ」

 こうして無事?にメルルを家にあげて、ひとまず応接室に連れて行く。
 まずはソファーに座ってもらい、リラックスしてもらう。
 セバスには飲み物と軽食を頼んでいるので、今のうちに話を聞く。

「頭は平気? 痛くない?」

「は、はいっ、身体だけは丈夫なので!」

「それなら良かったよ。嫁入り前の娘さんを怪我させるわけにはいかないし」

「よ、嫁入り……親交を深めるために人族でも良いのかな?」

 うん? 何やらもじもじしてる……トイレかな?

「メルル、トイ」

「違いますよ、ご主人様」

「……そうなの?」

「ええ、そうです。流石にお止めしました」

「そ、そうか……」

「ふぇ?  どうしたんですか?」

「い、いや、なんでもない」

 すると、扉がノックされ……お盆を持ったセバスが入ってくる。

「セバス、ありがとう。マリアは?」

「お二人が出て行ってすぐに、お眠りになりました。今日はずっと起きて遊んでいましたから」

「そっか……無理させたかな?」

「いえいえ、とても楽しそうでしたよ」

「えっと?」

「あっ、ごめんごめん。とりあえず、食べようか」

 セバスがお皿をメルルの前に置く。

「ほほっ、それでは召し上がってください。時間がなかったので、ただのサンドイッチですが」

「い、良いんですか? その、お金とか……」

「お客様からお金をとっては、私が旦那様に叱られてしまいます」

「まあ、気にしないで良いよ。さあ、食べて食べて」

「……いただきます……美味しい……はぐはぐ」

 そしてあっという間に食べきってしまう。
 やはり、お腹が空いていたのだろう。

「ほら、紅茶もあるから」

「あ、ありがとうございます……うぅー」

 すると、彼女の目から涙が出てくる。

「ちょっ!? ど、どうしたの?」

「ご、ごめんなさい……学校はセレナさんやトール君、アレク君がいるから楽しいんです……ただ、寮生活がつらくて」

「虐められてもした? だとしたら、国際問題だけど」

「い、いえ! そういうわけではなくて……ただ奇異な目で見られたり、遠巻きにされたり……寮では誰とも話さず独りぼっちで。その学校との温度差っていうか……あっ! 別に皆さんのことを」

「大丈夫、わかってるから。騒がしいところから、物凄い静かになっちゃうから寂しいんだよね?」

「……はぃ」

 ……無理もないよなぁ。
 一人で知らない国にやってきて、違う種族と一緒に暮らして。
 なのに、そんな状態になって……ホームシックになっちゃうよ。







 その後、落ち着くまで待っていると……扉が勢いよく開かれる!

「まあ! お兄様が女性を連れ込んでますわ!」

「妹よ! 言い方っ!」

「しかも、泣いてますの!  ……あら、お耳がついてますわ」

「え、えっと、あの……」

「はぁ……マリア、嬉しいのはわかるがまずは座りなさい。ちゃんと、自己紹介するから」

「はーい」

 そう言い、子供らしく口を尖らせた。
 うちに客人が来ることなど滅多にないから、テンションが上がっているらしい。
 ……色々と、うちは特殊だからなぁ。

「メルル、ごめんね。うちの妹のマリアだ」

「メルルさんですね、マリアと申します」

「は、はじめまして、マリアさん」

「それで、どうなさったのですか?」

「あぁー」

「アレク君、大丈夫です。私が話しますから……」

 そうして、メルルが今日までの出来事を話す。
 わけもわからないまま、突然知らない場所きたこと。
 緊張していたら俺やセレナが助けてくれたこと。
 ただ、寮生活が寂しいということを。

「……わかりますの!」

「……へっ?」

「お兄様! お出かけをしますわ!」

「お、おい? 妹よ?」

 すると、セバスが耳打ちしてくる。

「アレク様、ここはお嬢様に任せてみては?」
  
「ええ、私もそれがいいかと」

「……わかった」

 その言葉に従い、俺達は出かける準備をするのだった。
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