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メルルは迷子
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午前中はマリア達とトランプやゲームをしながらのんびり過ごし……。
お昼近くになったので、妹の私室でサンドウィッチで軽めの昼食を取る。
そっちの方が、兄妹水入らずできるというセバスの心遣いだ。
「そういえば、親父が帰ってくるの明日だっけ?」
「はい、そうですわ。時間はわからないですけど」
「まあ、あの親父のことだから急いで帰ってくるだろ」
「えへへ、きっとそうですね」
なにせ、マリアに激甘な親父である。
今頃、超速で帰っているに違いない。
その反面、俺にはすこぶる厳しい……違う意味で。
「俺は、明日は何処かに泊まろうかなぁ」
「あら、ダメですわ。お父様だって、お兄様に会いたいですから」
「俺は嫌なんだけど」
「たまには、家族で一緒がいいです」
「……はぁ、仕方ない」
たった一人の妹を寂しがらせるわけにはいかないよな。
頑張れ、明日の俺……潔く、ボコボコにされるとしよう。
食事を済ませると、何故かカエラが窓から入ってくる。
言っておくが、ここは二階である。
「あら、カエラ」
「何してんの?」
「はい? 窓から入りましたが?」
「見りゃわかる。なんで表からこないんだってこと」
「いえ、屋根の上で待機していたので」
「ああ、なるほど」
……まあ、一応護衛でもあるしな。
別に、叱るようなことじゃないか。
「ふふ、ありがとうございますわ。それで、何かあったのでは?」
「家の近くに、見知った顔があったので。ただ、うろうろしてばかりでよくわからないのです」
「ん? どういうことだ?」
「まあ、ひとまずついてきてください。あのままだと、目立って仕方ないので。お嬢様、申し訳ありませんが……」
「ええ、平気ですわ。お兄様、行ってきてください」
「わかった。とりあえず、行ってくる」
カエラについていき、俺も二階の窓から飛び降りる。
……人のこと言えなかった。
ひとまず、カエラについていき門から出ると……確かに見知った顔があった。
触りたくなるようなピンと伸びた白い耳に、フサフサの丸まった尻尾の美少女がいる。
制服ではなく、白いパーカーに野暮ったいズボンを着たラフな格好だ。
「あれ? メルル? 何してるの?」
「ア、アレク君! ど、どうして?」
「いや、どうしてはこっちのセリフだよ。あそこにあるの、俺の家だから」
「えっ? あのおっきな家が……ふぁ……すごいです」
自分でも忘れそうになるが、俺は公爵家の者。
その家の敷地面積は、二百坪を超えている。
だいたい日本でいうと、それなりの一軒家が四つくらいは入る計算だ。
「それで、こんなところでどうした? 知らないかもしれないけど、ここは貴族街と呼ばれる場所だから。通るには、兵士の方の許可がいるはずだけど」
「あ、あの、一応、王都の中なら自由にしていいって言われてて……だから、休みだし探検しようかなって。そしたら、ここの道が多くて迷子になってしまいました」
……ああ、そういえば立場的には国賓に当たる。
だったら、ある程度は自由に動けるのか。
それに人の暮らしを知ることが目的だったね。
「なるほど、それは良いことだね。ただ、どうして一人なんだい? 言ってはなんだけど、結構危ないよ?」
「うぅ……だって、寮には頼れる人もいないですし……案内してくれるような友達もいないです」
……寮生活は上手くいってない感じかな?
獣人は一人だというし、国賓扱いなのでおそらく個室だろう。
ただ、聞き捨てならないことを言ったね。
「おかしいなぁ、ここに友達がいるんだけど」
「……ふぇ?」
「あれ? 違った? 俺は友達になったつもりだったんだけど……というか、昨日言ってくれればよかったのに」
「そ、そ、そんなことないです! と、友達……えっと! 疑ってたわけじゃないんです! あ、えっ、あの、その……」
両手を頬に当てオロオロする姿はとても可愛らしい。
うむ、ずっと眺めていられる……紳士諸君ならわかってくれるね?
しかし、そうも言っていられないか。
「はい、深呼吸して。大丈夫、時間はあるから」
「は、はい……えっと、友達って言ってくれて嬉しかったんです。ただ、本当に誘って良いのかわからなくて……言おうとは思ってたんですけど、結局言えませんでした」
「ああ、そういうことね。メルル、そういう時は遠慮なく言っていいから。少なくとも、俺やトール……もちろん、セレナも嫌とは言わないよ」
「あ、ありがとうございます!次からは頑張りますっ」
両手を握ってフンスフンスしているが、これは怪しいなぁ。
気が弱いし、優しい女の子みたいだし。
こっちの方で、何か企画でも立てるとするかな。
「了解。それで、この後の予定は?」
「と、特にはないんです。ただ、寮にいてもつまらないなぁって。部活も今日はないって言われたので……」
「そっか。というか、いつから歩いてるの?」
「えっと、朝起きてご飯を食べてからです」
「いや、もうお昼過ぎなんだけど?」
「……あはは……迷子ですかね」
すると、クルルーと可愛い音がなる。
「……そりゃ、腹も減るよ」
「あぅぅ……」
だめだ、この子は放っておいてはいけない気がする。
……世話係だし、少しは面倒見ますか。
お昼近くになったので、妹の私室でサンドウィッチで軽めの昼食を取る。
そっちの方が、兄妹水入らずできるというセバスの心遣いだ。
「そういえば、親父が帰ってくるの明日だっけ?」
「はい、そうですわ。時間はわからないですけど」
「まあ、あの親父のことだから急いで帰ってくるだろ」
「えへへ、きっとそうですね」
なにせ、マリアに激甘な親父である。
今頃、超速で帰っているに違いない。
その反面、俺にはすこぶる厳しい……違う意味で。
「俺は、明日は何処かに泊まろうかなぁ」
「あら、ダメですわ。お父様だって、お兄様に会いたいですから」
「俺は嫌なんだけど」
「たまには、家族で一緒がいいです」
「……はぁ、仕方ない」
たった一人の妹を寂しがらせるわけにはいかないよな。
頑張れ、明日の俺……潔く、ボコボコにされるとしよう。
食事を済ませると、何故かカエラが窓から入ってくる。
言っておくが、ここは二階である。
「あら、カエラ」
「何してんの?」
「はい? 窓から入りましたが?」
「見りゃわかる。なんで表からこないんだってこと」
「いえ、屋根の上で待機していたので」
「ああ、なるほど」
……まあ、一応護衛でもあるしな。
別に、叱るようなことじゃないか。
「ふふ、ありがとうございますわ。それで、何かあったのでは?」
「家の近くに、見知った顔があったので。ただ、うろうろしてばかりでよくわからないのです」
「ん? どういうことだ?」
「まあ、ひとまずついてきてください。あのままだと、目立って仕方ないので。お嬢様、申し訳ありませんが……」
「ええ、平気ですわ。お兄様、行ってきてください」
「わかった。とりあえず、行ってくる」
カエラについていき、俺も二階の窓から飛び降りる。
……人のこと言えなかった。
ひとまず、カエラについていき門から出ると……確かに見知った顔があった。
触りたくなるようなピンと伸びた白い耳に、フサフサの丸まった尻尾の美少女がいる。
制服ではなく、白いパーカーに野暮ったいズボンを着たラフな格好だ。
「あれ? メルル? 何してるの?」
「ア、アレク君! ど、どうして?」
「いや、どうしてはこっちのセリフだよ。あそこにあるの、俺の家だから」
「えっ? あのおっきな家が……ふぁ……すごいです」
自分でも忘れそうになるが、俺は公爵家の者。
その家の敷地面積は、二百坪を超えている。
だいたい日本でいうと、それなりの一軒家が四つくらいは入る計算だ。
「それで、こんなところでどうした? 知らないかもしれないけど、ここは貴族街と呼ばれる場所だから。通るには、兵士の方の許可がいるはずだけど」
「あ、あの、一応、王都の中なら自由にしていいって言われてて……だから、休みだし探検しようかなって。そしたら、ここの道が多くて迷子になってしまいました」
……ああ、そういえば立場的には国賓に当たる。
だったら、ある程度は自由に動けるのか。
それに人の暮らしを知ることが目的だったね。
「なるほど、それは良いことだね。ただ、どうして一人なんだい? 言ってはなんだけど、結構危ないよ?」
「うぅ……だって、寮には頼れる人もいないですし……案内してくれるような友達もいないです」
……寮生活は上手くいってない感じかな?
獣人は一人だというし、国賓扱いなのでおそらく個室だろう。
ただ、聞き捨てならないことを言ったね。
「おかしいなぁ、ここに友達がいるんだけど」
「……ふぇ?」
「あれ? 違った? 俺は友達になったつもりだったんだけど……というか、昨日言ってくれればよかったのに」
「そ、そ、そんなことないです! と、友達……えっと! 疑ってたわけじゃないんです! あ、えっ、あの、その……」
両手を頬に当てオロオロする姿はとても可愛らしい。
うむ、ずっと眺めていられる……紳士諸君ならわかってくれるね?
しかし、そうも言っていられないか。
「はい、深呼吸して。大丈夫、時間はあるから」
「は、はい……えっと、友達って言ってくれて嬉しかったんです。ただ、本当に誘って良いのかわからなくて……言おうとは思ってたんですけど、結局言えませんでした」
「ああ、そういうことね。メルル、そういう時は遠慮なく言っていいから。少なくとも、俺やトール……もちろん、セレナも嫌とは言わないよ」
「あ、ありがとうございます!次からは頑張りますっ」
両手を握ってフンスフンスしているが、これは怪しいなぁ。
気が弱いし、優しい女の子みたいだし。
こっちの方で、何か企画でも立てるとするかな。
「了解。それで、この後の予定は?」
「と、特にはないんです。ただ、寮にいてもつまらないなぁって。部活も今日はないって言われたので……」
「そっか。というか、いつから歩いてるの?」
「えっと、朝起きてご飯を食べてからです」
「いや、もうお昼過ぎなんだけど?」
「……あはは……迷子ですかね」
すると、クルルーと可愛い音がなる。
「……そりゃ、腹も減るよ」
「あぅぅ……」
だめだ、この子は放っておいてはいけない気がする。
……世話係だし、少しは面倒見ますか。
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