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トール視点
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乗馬部にいくと言いつつも、俺は部長に早退を告げた。
お付きの者から、すぐに帰るように言われたからだ。
馬車に乗り自宅に着くと、すぐに父親の待つ書斎に案内される。
「父上、ただいま帰りましたよ」
「帰ったか。して、どうだ?」
いきなり俺を呼びつけておいて、この態度である。
いつだって、こちらの都合などお構い無しだ。
俺は、この自己中心的なクソ親父が大嫌いだった。
そんな態度のくせに小心者で、いつも自分の保身ばかりを考えてやがる。
「何がです?」
「馬鹿者が。無論、アレク王子のことだ。お前には、報告する義務があるだろう。そもそも、何故変化に気づかなかった?」
「そんなことを言われましても。別に、四六時中一緒にいるわけではないので」
そもそも、俺にはそんな義務はない。
確かに最初は命令されて近づいた……だが、俺個人の意思であいつと友達になった。
そして、こいつとなら親友になりたいと思ったからつるんでいる。
それをこのクソ親父は、今更何を言ってるんだか。
多分、焦っているのだろうけど。
「この役立たずめ。なんのために、お前をアレク王子につけたのだ。兄であるクラウは、王太子であるネルソン様の懐に入っているというのに」
「別に良いんじゃないですかね。アレク王子は放っておけば。今更、王太子の地位は揺るがないかと」
「しかし、何やら様子が変わったという話だ。もしや、今更王位が欲しくなったのではないか? 再びセレナ様と近づき、なにやら獣人の姫とも仲良くしているとか」
……はぁ、本当に何もわかってねえ。
あいつが、王位なんか望むわけないだろ。
いや、この先はわからないが。
まあ、個人的にはあいつが王位についたら面白いとは思うけど。
「そんな感じはしないですけどね。単純に、解放されたんだと思いますよ。今までのあいつは、鎖に縛られていたようなものなので」
「なに? どういう意味だ?」
「別に難しい話じゃありません。今までは、争いを起こさないために無能を装っていただけかと」
真実はわからないが、そっちの方が信憑性がある。
あいつは優しい性格をしているし、争いを好まないだろう。
「なんだと? あのアレク王子が、そんなことを?」
「さあ、わかりませんが」
ただ俺は、次男坊ということで無能を装っている。
下手な争いは、家臣や市民に迷惑をかけるだけだし。
だから、アレクもそうなんじゃないかと思っただけだ。
「ぐぬぬ……どちらにつくべきか」
「今更、鞍替えをするのですか?」
「これも家のためだ。アレク王子は貴重な黒髪黒目にして第二王子、そして父親は英雄シグルドだ。今までの行動が芝居であれば、何かやらかすかもしれん」
はぁ、相変わらず保身的なことで。
まあ、この先の権力闘争に関わるから仕方ない部分もあるけど。
ただ父の姉である第一王妃様を出しているので、十分な気もする。
でも、王妃になった時点で家とは切り離されるからなぁ。
しかも、兄上をネルソン王子の妹とくっつけようとしてるし。
「まあ、自由にはなったかと。それこそ、恋愛面とかについても」
「うむ、そうなると……どうしたものか」
「別に様子見でいいかと。まだ王太子の子供も生まれてませんし、アレクも学生ですから。どうせ、一年くらいは動き様がないですよ」
「今動くのは危険か……よし、引き続きお前はアレク王子の側にいろ」
「まあ、言われなくても」
さて……ひとまず、時間稼ぎはできたか?
今は、この学生生活を楽しみたいからな。
あいつが楽しく過ごせるように、俺の方で手を回しておくか。
ただ……もし、アレクがその気になったなら——俺が力になる。
あいつは、俺が父親に頼まれて近づいたことを責めなかった。
そして、生涯の友になってくれた。
ならばその力になるのが、相棒である俺の役目だ。
お付きの者から、すぐに帰るように言われたからだ。
馬車に乗り自宅に着くと、すぐに父親の待つ書斎に案内される。
「父上、ただいま帰りましたよ」
「帰ったか。して、どうだ?」
いきなり俺を呼びつけておいて、この態度である。
いつだって、こちらの都合などお構い無しだ。
俺は、この自己中心的なクソ親父が大嫌いだった。
そんな態度のくせに小心者で、いつも自分の保身ばかりを考えてやがる。
「何がです?」
「馬鹿者が。無論、アレク王子のことだ。お前には、報告する義務があるだろう。そもそも、何故変化に気づかなかった?」
「そんなことを言われましても。別に、四六時中一緒にいるわけではないので」
そもそも、俺にはそんな義務はない。
確かに最初は命令されて近づいた……だが、俺個人の意思であいつと友達になった。
そして、こいつとなら親友になりたいと思ったからつるんでいる。
それをこのクソ親父は、今更何を言ってるんだか。
多分、焦っているのだろうけど。
「この役立たずめ。なんのために、お前をアレク王子につけたのだ。兄であるクラウは、王太子であるネルソン様の懐に入っているというのに」
「別に良いんじゃないですかね。アレク王子は放っておけば。今更、王太子の地位は揺るがないかと」
「しかし、何やら様子が変わったという話だ。もしや、今更王位が欲しくなったのではないか? 再びセレナ様と近づき、なにやら獣人の姫とも仲良くしているとか」
……はぁ、本当に何もわかってねえ。
あいつが、王位なんか望むわけないだろ。
いや、この先はわからないが。
まあ、個人的にはあいつが王位についたら面白いとは思うけど。
「そんな感じはしないですけどね。単純に、解放されたんだと思いますよ。今までのあいつは、鎖に縛られていたようなものなので」
「なに? どういう意味だ?」
「別に難しい話じゃありません。今までは、争いを起こさないために無能を装っていただけかと」
真実はわからないが、そっちの方が信憑性がある。
あいつは優しい性格をしているし、争いを好まないだろう。
「なんだと? あのアレク王子が、そんなことを?」
「さあ、わかりませんが」
ただ俺は、次男坊ということで無能を装っている。
下手な争いは、家臣や市民に迷惑をかけるだけだし。
だから、アレクもそうなんじゃないかと思っただけだ。
「ぐぬぬ……どちらにつくべきか」
「今更、鞍替えをするのですか?」
「これも家のためだ。アレク王子は貴重な黒髪黒目にして第二王子、そして父親は英雄シグルドだ。今までの行動が芝居であれば、何かやらかすかもしれん」
はぁ、相変わらず保身的なことで。
まあ、この先の権力闘争に関わるから仕方ない部分もあるけど。
ただ父の姉である第一王妃様を出しているので、十分な気もする。
でも、王妃になった時点で家とは切り離されるからなぁ。
しかも、兄上をネルソン王子の妹とくっつけようとしてるし。
「まあ、自由にはなったかと。それこそ、恋愛面とかについても」
「うむ、そうなると……どうしたものか」
「別に様子見でいいかと。まだ王太子の子供も生まれてませんし、アレクも学生ですから。どうせ、一年くらいは動き様がないですよ」
「今動くのは危険か……よし、引き続きお前はアレク王子の側にいろ」
「まあ、言われなくても」
さて……ひとまず、時間稼ぎはできたか?
今は、この学生生活を楽しみたいからな。
あいつが楽しく過ごせるように、俺の方で手を回しておくか。
ただ……もし、アレクがその気になったなら——俺が力になる。
あいつは、俺が父親に頼まれて近づいたことを責めなかった。
そして、生涯の友になってくれた。
ならばその力になるのが、相棒である俺の役目だ。
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