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やらかす?

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 その後、仕方ないので更衣室に入り着替える。

 当然、カエラが一緒に入ろうとしたので止めた。

「それにしても、何もみんな出ていかなくてもなぁ」

 男子更衣室には何人かの生徒がいたが、俺を見るなり慌てて逃げていった。
 いや、俺が嫌われてるとかいう話では…ないよね? 大丈夫だよね?
 せっかく変わろうとしたんだから、普通の男友達とか欲しいんですけど。

「それは仕方ないかと」

「……ねえ? どうしているんだい?」

 振り返ると、澄ました顔でカエラが立っていた。

「いえ、着替え終わったので」

「うん、それを知ってる時点でおかしいと思うんだけど」

「お気になさらないでください」

「いや、それは君が言うセリフじゃないよ!?」

「まあまあ、落ち着いて」

 ……だめだ、これは怒ったら負けな気がする。
 ほんと、良い性格になったもんだ。

「はぁ……んで、どういう意味?」

「御主人様は公爵家嫡男にして王位継承権二位の方ですから」

「まあ、近づき難くはあるよね。でも、逃げ出すほどではなかったような……」

 言い方はアレだけど、俺が何か言えば退学くらいにはできる。
 だけど権力者として寄るには、王太子と敵対ということになり……。
 だから、今までも人が近づいてこなかったんだけど。

「多分、ご主人様が変わったというのが広まったのでしょう。そのことで、皆が様子を見ているというか……下手に近づいて火傷するのを恐れているのかと」

「あぁー……俺が権力者として動こうとしてるとか?」

「それもなくはないですが、単純に動きが読めないから怖いのかと。こればっかりは、これからの行動で示すしかないですね」

「まじか……じゃあ、友達を作るには時間がかかるなぁ。俺としては権力が欲しいわけじゃないから、大胆な動きをするのも嫌だし……まあ、仕方ないか」

「……知らぬは本人ばかりですね」

「ん? なんて言った?」

「いえいえ~さあ、お二人が待ってますよ」

「んじゃ、そのためにも部活でもやってみますか」

 他にも友達とか作って普通の学園生活を送りたかったけど、それで派閥を作ってるとか思われるのも嫌だし。
 ひとまずは、地道にコツコツとやっていきますか。





 準備を済ませて、外に出ると……さっきよりも人集りが出来ていた。

 なるほど、これが様子を見てるってことか。

「アレク! 遅いわよっ!」

「アレク君、似合ってますねっ」

 すると、テニスウェアに着替えた二人がやってくる。
 全体的にすらっとしたメルルだが、その生足も脚線美で素晴らしい。
 セレナの方はいい感じむっちりしるので、これまた素晴らしい。
 うむ……前言撤回だ、テニスも良いかもしれん。

「ちょ、何見てるのよ?」

「あ、あのぅ? 変ですか?」

「いや、すまん。二人共、よく似合ってると思って」

 何だかんだ言って、二人とも美少女だし。
 というか、前世では関わることがなかった部類の……やめやめ!
 みんなも己の黒歴史を思い出すのはやめようねっ!

「あ、ありがとぅ……な、なんか、素直に言われると照れるわね」

「えへへ、そうですね」

「別に俺は、思ったことしか言ってないが」

 しかし、思ったことを言わない場合もある。
 例えば……セレナが身をよじった時の谷間がすごいとか。
 それをいえば、どうなるくらいはわかってるのです。

「わ、わかったから! それじゃあ、始めましょ!」

「は、はいっ!」

「まずは、どうするんだ?」

「アレクはルールくらいわかるでしょ?」

「まあ、そうだな」

 アレクの記憶にはあまりないが、前世の俺の記憶にはばっちり入っている。
 剣道場の隣がテニス部だったので、よく遊んでいたし。

「じゃあ、私とアレクでお手本を見せるわ。メルルは、それを見ておいて」

「わかりましたっ」

「カエラ、メルルのことを頼む。俺の言いたいことはわかるな?」

「はい、お任せを。ご主人様好みの女に仕上げます」

「何もわかってなくない?  誰がそんなこと言ったよ? 俺は、ルール説明をしてくれって意味で言ったんだが。見てるだけじゃ、わからないこともあるし」

「あら、紛らわしい言い方するからです」

「なに? 俺が悪いの?」

「ちょっと! イチャイチャしてないでやるわよっ!」

「お前も何処を見てんの!? ……はぁ、疲れた。とりあえず、やるとするか」

 きりがないので、ひとまずセレナとは反対のコートに立つ。
 このラケットの感じ……うん、懐かしいな。
 結局、高校生の時の影響で大学のサークルでもやってたし。
……えっ? テニスサークルは女の子と遊んでるって?
いえいえ、そういうのには呼ばれてないので……やめやめ!

「それじゃあ……行くわよ!」

「よしきた!」

 かなり早いスピードで来た球を反射的に打ち返す!

「……へっ?」

「ありゃ? ……入ってるな」

 俺の打ち返した球は、セレナの位置とは逆方向のコートに入った。
 多分、リターンエースってやつだ。
   飲み会にも合コンにも呼ばれないから、すっかり上手くなってしまったんだよなぁ。

「な、な……あんた、ほとんど初心者だったわよね?」

「まあ、そうだな」

 あくまでも、この世界ではだけど。
 うん、嘘は言ってないはず。

「ま、まぐれよねっ! もう一度やるわよっ!」

「ああ、いいぞ」

「今度こそ……それっ!」

「よっと」

 打ってきたサーブを再び、リターンエースで決める。

 よし、体の感覚が掴めてきたぞ。

「お、おい? ……セレナ様は、女子とはいえ大会常連の方だぞ?」

「それを、いとも簡単に打ち返した……?」

「男子でも、中々取れないのに……」

「そ、そんな……私の玉が……」

 静けさの中、男子のそんな声と、セレナの驚く声だけが響く。

 あれ? なにやらまずいことをしたかもしれない……。
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