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深刻な体力不足

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気、別名チャクラとも呼ばれる——それは弱い人族に与えられた力と言われている。

エルフには精霊術、竜人族には竜化、獣人には持って生まれた特殊な身体能力が備わる。

生身だと弱い人族が、それに対抗するために編み出した術だとかなんだとか。

まあ、詳しいことはわからない……多分、そんな感じ……知らんけど。

わかることは気は体力を消耗するということ、人族でも使える者は限られてることくらいだ。

「以上が説明となります」

「誰に言っているのですか?」

「なんでもないよ! というか、相変わらず速いな!」

俺の時速は、おそらく六十キロは出ている。
人に当たると危ないので、壁の上や木の上などを利用して移動してるが……。
そんな中、カエラは脚に風をまとい並走していた。

「ふふ、まだまだご主人様には負けませんよ。こっちが、私の本業ですから。それにしても、懐かしいですね? 最近は、こういうのもなかったですし」

「そういや、よく鬼ごっこしたっけなぁ」

「あれは怖かったですねー。旦那様ってば、めちゃくちゃ怖い顔して追ってきましたし」

「ほんとそれ。あの人、見た目が怖すぎるんよ」

うちの父親はかなり厳ついからなぁ……見ず知らずの子供が泣き出すくらいだし。
父親がまだよく帰ってきた頃、カエラの訓練を兼ねて街中で鬼ごっこをしていたなぁ。
その時は、二人して父親に追いかけ回されたっけ。

「また旦那様が帰ってきたらやりますか?」

「うげっ、勘弁してくれ。というか、俺はできれば会いたくない」

「そんなこと言っては可哀想ですよー。旦那様ってば、ご主人様のことが可愛いんですから」

「はたして……あれは可愛がっていると言って良いのか?」
 
出会い頭に斬りかかり、嫡男を殺しそうな人だぞ?
俺はいつも、逃げるのに必死だった気がする。
なのに、マリアには激甘だし……世の中は不公平である。
そんな会話をしつつ、どうにかチャイムが鳴る前に到着できた。

「ま、間に合ったか」

「あらら、鈍ってるんじゃないですか? 以前のご主人様なら、これくらいじゃへばらなかったのに」

「ほ、ほっとけ……やばっ、くらくらする」

「どうします?  今から休みます? 良いところ行きます?」

「休まないし、良いところもいかないよっ! というか、体力を使わせないでくれ……」

「はいはい、わかりましたよー。それでは、私はこれで」

「ああ、行ってくる」

俺は重たい脚を動かし、何とか教室に向かうのだった。
そして、ギリギリで滑り込みセーフとなる。
俺が扉を開けた瞬間に、チャイムが鳴り終わった。

「あ、あぶねぇ」

「お、おはようございます!」

「メルル、おはよう……君は朝から元気そうだね」

「えへへ、元気くらいしか取り柄がないんです」

「いや、良いことだよ。それじゃあ、今日もよろしくね」

「はいっ、頑張ります。きちんと授業受けて、この国のことを知っていきます」

そう言い、両手の拳を握ってフンスフンスしている。
まだ二日目なのに、やる気があって偉いなぁ。
これは、少しは俺も見習っていかないと。









……と思っていたのにいぃぃ!! 気がついたらお昼休みになってるじゃん!

授業受けてないじゃん! 来た意味ないじゃん! 心象良くないじゃん!

「どうしてこうなった!?」

「いや、当然じゃね? あの様子から、チャクラを使ってきたんだろうし。というか、寝すぎじゃね?」

「え、えっと……僕、頑張って起こしたんですけど」

「メルルが謝ることないわ。どう考えてもこいつが悪いわよ。まさか、一限目の授業からひたすら眠り続けるなんて。やっぱり、昨日のあんたは幻だったのかしら?」

「ぐぬぬっ……おのれぇぇ」

しまった、いくらなんでも体力がなさすぎる。

まあ、怠惰な生活を送っていたから無理もないが。

これからは、少しトレーニングでもしないといけないかも……はぁ、めんどい。
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