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元アラフォーのおっさん、転生前の記憶を取り戻す

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……うん? やけに体が軽いな。

アラフォーになり、最近は起きるときは体の節々が痛くなっていた。

しかし、今日はそんなことはない。

むしろ、驚くほどに軽い。

「まあ、いいか。とりあえず、起きるとし……へっ?」

目を開けてみて驚く。
そこは、見たこともない場所だった。
見渡す限りの広い部屋……おそらく、二十畳以上はあるだろう。
昨日まで、6畳半のボロアパートに住んでいたはずなのに。

「しかも、西洋系の部屋? まるで、テレビで見た高級ホテルのようだ……」

すると、ドタドタと足音が聞こえてきて……すぐに扉が開かれる。

「御主人様! 起きてくだ……御主人様が自分で起きてらっしゃる? これは、何かの前触れでしょうか? いや、天変地異が……」

「……カエラ? いやいや、起きてるくらいで……」

どうして、俺は彼女の名前がわかる? 
いやそもそも、どうして?……その時、頭に電気が走る!

「っ~!?」

物凄い情報量が、頭の中を駆け巡る!
前世の記憶、今現在の記憶、それらが一気に入ってくる!
そして、それらが混じり合い……頭痛が収まる。

「……そうか、そういうことなのか?」

「御主人様? 本当に大丈夫ですか?」

「あ、ああ、平気だよ。ごめんね、心配かけて。ちょっと、シャワーを浴びて良いかな?」

「はい、大丈夫です。では、私は外に出てますね」

そう言い、銀髪エルフ……カエラが部屋から出て行く。
ひとまず疑問を押し込み、俺は部屋にあるシャワーを浴びることにする。

「えっと……転生? 憑依? ……いや、転生か」

落ち着いてみれば、十六年間アレクとして過ごしてきた記憶がある。
混乱したのは、地球での約四十年の記憶が突然蘇ったからだ。
そのことによって、今現在の記憶が混濁している。

「前世の俺は多分、知らない間に死んでしまったのかも」

特に死んだという記憶はないから、おそらく突然死の可能性がある。

「まあ、無理もないか」

天涯孤独の身だったし、高卒でブラック企業に勤めてしまって……二十年近く、ほぼ休みのない過酷な日々を送っていた。
自分でも、いつ死んでもおかしくないと思ってたし。

「まあ、死んだ記憶がないのは助かる」

おかげで苦しくもないし、そこまで悲壮感はないし。
それに、良いところに転生できたみたいだしね。

「このアルカディア王国の、二つあるうちの公爵家の嫡男として生まれたってわけだ」

公爵家とは王家の分家という扱いだ。
ただ、俺の知ってる公爵家とは少し事情が違う。
イメージでは、王位を継ぐことが出来なかった者が家をたてる。
だが、この世界において公爵家の役割は大きい。
いざという時に、王位を継ぐためのスペアという意味合いもある。

「だから、俺にも王位継承権はある」

しかも、それはつい最近まで……王太子の次である序列二位だった。
まあ、俺が継ぐなんてことにはならなかったけど。

「……そうだった、思い出してきた」

記憶を取り戻す前の俺は不幸中の幸いか、傍若無人な振る舞いはしてなかったらしい。

ただ、一日中ほとんどダラダラと過ごし……評判はすこぶる悪い。

国民の税金を使っているにも関わらず、学校もサボってばかり。

ついた名前は確か……無駄飯食らいのアレクだった。
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