自由を求めた第二王子の勝手気ままな辺境ライフ

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2巻

2-2

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 みんなで朝食を済ませたあと、俺の部屋にて、前領主のマイルさんとクオンと話をすることに。
 口火を切ったのはマイルさんだった。

「さて、クレス殿下……ひとまずお疲れ様でした」
「あはは……ありがとうございます」
「主人殿ってば、カルラ様にあーんされてましたね?」
「勘弁してよ。俺はもう成人してるし、恥ずかしかったよ」

 朝ご飯の時、カルラ姉さんが隣に座ってあれこれと世話を焼いてきた。
 別に嫌な気分ではなかったけど、流石に恥ずかしい。
 こちとら、前世の記憶ではアラフォーなのだ。
 そんな俺の心中を見透かしたようにクオンが尋ねる。

「ですが、うれしそうでしたよ?」
「……否定はしない」
「ふふ、素直でよろしいですね」

 ああいう風に甘やかされたことはないし、悪い気分ではない。
 ただ、できればもっと小さい時にやってほしかったけどね!

「さて、そんなクレス殿下を溺愛できあいするカルラ様がやってきたわけですが……」
「マイルさん、顔が笑ってるのバレてるからね?」
「い、いえ……ふふふ……す、すみません」

 こらえきれなかったのか、ついにマイルさんが笑い出す。

「ほら、お二人共。それでは話が進みませんよ」

 クオンの言葉に、俺とマイルさんが顔を見合わせる。
 クオンの言う通りだ。気持ちを切り替えて真面目モードにしなきゃ。

「そ、そうですね……コホン、失礼いたしました。では、本題に入るとしましょう。まずはカルラ様が来たことで、クレス殿下がある程度自由に動けるようになりました」
「うん、そうだね。すぐには無理だけど、色々仕事の引き継ぎができたら、南にある騎士の国……エトラス王国に行けるかな」
「はい。ただし、の国は礼儀や作法を重んじる国柄とか。なので、訪問する際は早い段階で事前に手紙を送る必要があります」
「うんうん、なんだって騎士道の国っていうくらいだからね。できるだけ、印象をよくした方がいいかな」

 海に面する国で、我が国とは交流が断絶している。
 むしろ攻めてこないだけありがたい話だ。
 敵対もしてないし、味方でもないといったところかな。
 すると、クオンが俺に視線を向ける。

「そうなると、主人殿は気をつけないと。普段のちゃらんぽらんな姿ではダメですよ?」
「ぐぬぬ……否定ができないや」
「まあまあ、クオン殿。クレス殿下も、やる時はやってくれるでしょう」
「ふふん、マイルさんの言う通りだよ。俺ってば、 第二王子なんだから。そういう教育は受けてはいるし」
「「……そういえばそうでしたね」」

 二人が、まるで今思い出したかのように、顔を見合わせてハモった。

「グスッ……酷い」
「と、とにかく! 私は手紙を出してきますので! あとのことはクオン殿にお任せします! 王都にいる国王陛下にも許可を取らないといけないので!」
「あっ! 逃げるのですか!?」
「いえ! これは適材適所というものです!」

 クオンの制止もむなしく、マイルさんが慌てて部屋から出て行った。
 残されたのは、俺とクオンの二人である。

「……なんだか、扱いが雑になったね」
「まあ、仕方ないです。それに、気を遣われるよりはいいかと」
「それは言えてるかも。うんうん、マイルさんものびのび仕事してくれたらいいね」

 そういえば、マイルさんから不満とか聞いたことないけど……
 その辺りのことは、どう思っているのだろう?


    ◆  ◆  ◆


 私の名前はマイル・レカント。
 子爵家の当主にして、国王陛下よりこの地を任された者です。
 そんな私ですが、今現在はクレス殿下の元で働いております。
 私は自室にて国王陛下への手紙を書きながら、これまでのことを考えました。

「クレス殿下に来ていただいて本当によかった」

 国王陛下にこの辺境を任されましたが、私には荷が重くて現状維持が精一杯。
 そんな中、クレス殿下が来てくれたことで全てが変わりました。
 やはり、水魔法と氷魔法による環境改善が一番大きいです。
 しかし、それだけではありません。魔法が目立ってしまい忘れそうになりますが、彼の突出した点は、そこではありません。
 クレス殿下のすごいところは、人をきつける魅力があること。
 最初はおそれ敬っていた住民達も、今では気軽に話しかけるほど。
 それに気難しい獣人のタイガ殿、偏屈と言われるドワーフ族までにも好かれています。

「本当に不思議な方です。クレス殿下がまとう空気感は、とても柔らかくて優しい」

 王族という立場なのに、偉ぶった様子は微塵みじんもない。
 きっと、それも好かれる一因なのでしょう。
 あとは、いつの間にかあちらのぺースに巻き込まれ……そう、私自身も。

「ふふ、おかげ様で普段はしないであろう行動をしてしまいましたね」

 この歳になって、あんな風にふざけ合うとは思いませんでした。
 ですが、悪くないと思ってる自分がいます。
 クレス殿下が来てから、私の仕事にもやりがいが出てきましたし。
 まだまだやることは沢山あるので、頑張らないとですね。

「これまでの私は、どこか腐っていた。それをクレス殿下が変えてくれた……この先、クレス殿下がなにをするのか楽しみです」

 そして微力ながら、私もお手伝いをしたいと思います。
 幸いなことに、私がお役に立てることは多そうなので。
 それが、私に活力を与えてくれたクレス殿下に対する、恩返しにもなる。私はそう思っています。


    ◇  ◆  ◇


 俺が昼ご飯を食べて、執務室でクオンと共に再び仕事をしていると……ノックもせずに姉さんが入ってきた。


 そのまま、姉さんは俺の机の前まで来て、ぐいっと顔を近づける。

「クレス、ひまだわ」
「はい? 暇ですか?」
「ん、ここではやることがないし」
「だけど、姉さんは休暇でここに来たんでしょ? のんびりしてもバチは当たらないと思うけど」
「そうなんだけど。私ってば、ずっと働いていたから……よく考えてみると、休み方を知らない」

 できれば、俺が代わりに休暇をもらいたいくらいなのに……これは、いい案が浮かんだぞ!

「じゃあ、俺の代わりに仕事をしますか!? それで、俺が代わりに休むとか!」
「そしたらクレスは喜ぶ?」
「もちろんです……ウソウソ! クオン、冗談だからにらまないでぇぇ!」

 ふと視線を感じ、気配のした方を見ると、クオンがジト目で睨んでいた。
 美人さんのジト目は怖いですよね!

「全く、仕方ない方ですね。カルラ様もあまり甘やかさないでください。今やってる仕事は、領主である主人殿が確認しないといけない書類ですから」
「ん、気をつける。クオンの意見には耳を傾けなさいって、お父様達にも言われていたから」
「……ちなみに俺については?」
「なるべく無視しなさいって言われた」
「ですよねー」

 どうやら、代わりに仕事をやってもらうわけにいかないようだ。
 こうなったら、次の作戦に移ろう!

「……主人殿、なにかよからぬことを考えてますね?」
「ぎくっ……」
「ぎくって言う人、初めて見ましたよ」

 クオンが呆れ顔でため息をついた。

「ぐぬぬ……ふふふ、そんなこと言っていいのかな?」

 俺の言葉にクオンが怪訝けげんな表情を浮かべた。

「……なんです?」
「せっかく姉上が来たから、アイスクリームでも作ろうかなーって思ったのに」

 その瞬間のクオンの動きは目で追えなかった。
 気がついた時には、俺の目の前にはクオンの綺麗なお顔があった。
 みるみるうちに、俺の心拍数が上がっていく。

「――さあ、今すぐにでも材料を採りに行きましょう」
「ま、待って! 近い近い!」
「予定は変更です。カルラ様の相手をするのも、主人殿の仕事ですから」
「ん、よく分からないけど、クレスと出かけるなら行く」

 こうして、俺は二人に引きずられるように部屋から連れ出された。
 なんか思ってたのと違うんですけど!?


 そのあと、部屋を出てすぐに会ったマイルさんに、仕事の引き継ぎを頼む。
 これで合法的に休めるね!
 そんなことを考えながら階段を降りると、そこにはアスナがいた。
 そこで俺は、めずらしい光景を目にする。

「あ、あの! カルラ様!」
「ん、なに? 貴女は確か、公爵家のアスナね」
「は、はい! 覚えていていただき、嬉しいです!」

 ……なにあれ? アスナがガチガチに緊張してるけど。
 俺は後ろで話してる二人を見ながら、クオンに耳打ちをする。

「ねえねえ、あれってどうしたの? 俺が知らない間になにかあった?」
「いえ、特には。というか、あの態度が普通かと。相手は王女様なのですから」
「……あれ? 俺も王子なんだけど?」
「では、今から敬語にしてとアスナ様に頼みますか?」

 その姿を想像して……寒気がしてきた。
 俺は黙って首を横に振り、このままでいいと思い直す。
 そして、屋敷の敷地内にある飼育小屋の前に着くと、そこで作業をしていたドワーフのガルフさんに話しかけた。
 飼育小屋の中には近くで捕獲したモウルという牛の魔物が暮らしている。
 モウルの肉は実は食用になる。

「ガルフさん、こんにちは」
「おおっ、クレスか。そこの女性は……昨日、軽く挨拶をしたカルラ殿じゃったか」
「はい、ガルフ王弟おうてい殿下。改めまして、カルラ・シュバルツと申します」
「よしてくれ、ここではただのガルフじゃ」

 おおっ、姉さんがちゃんとしてる。
 というか、こっちが本来のイメージだ。

「そっか、ガルフさんって王弟殿下なんだ。全然、そんな感じに見えないや」
「クレス、それはブーメランだわ」
「ええ、アスナ様に同意見です」
「クレス、それはお姉ちゃんも庇えない」

 アスナの痛烈な一言に、クオンと姉さんが同意する。
 ……これは俺が分が悪いようです。
 俺はガルフさんに肩を叩かれ、なぐさめられるのでした。
 そんな挨拶をしたあと、ガルフさんにモウルの所まで連れてってもらう。
 小屋を改造してもらい、小屋から草木がある外に出られる、放牧に近い形になっている。
 そこでは二頭のモウルがのんびりと過ごしていた。

「おおっ、いつの間に」

 驚く俺に、ガルフさんが話しかけてくる。

「暑がりとはいえ、小屋の中ではストレスが溜まるかと思ってな。どんな生き物だろうと、ストレスがかかると乳の出も悪くなる」
「ふんふん、これなら、暑くなったら小屋に戻ればいいもんね」

 小屋には俺特製の氷塊ひょうかいが常に置いてある。
 朝と昼、それと寝る前に屋敷に誰かがやってきては、それを小屋まで持っていくのだ。

「そういうことじゃな。それで、目的は乳か?」
「うん、そうだよ。今は平気そう?」
「ふむ、構わんだろう。先ほど子供にはあげたし、栄養を取って徐々に回復してきておる」
「それはよかった。となると、あとは雄を探してくれば、数も増えていくし、乳の供給も安定してくるかな?」
「子供を見たところ、まだ生後間もないだろう。なので、搾乳さくにゅうできる期間にはまだまだ余裕がある。しかし長い目で見れば休息期間も必要じゃし、継続して乳を出すには、妊娠をし続けなくてはならない」
「そっか。じゃあ、乳の安定供給には、雌も数がいるってことだね」

 ガルフさんとそんな会話をしていると、クオンが俺の服の端を掴む。

「どうしたの?」
「その……早く食べたいです」

 クオンはそう言って、もじもじしながら上目遣いをしてきた。
 美人さんの攻撃により、クレス君に五のダメージ!

「ぐはっ……やるな」
「……なんの話です?」

 俺の精神的ダメージに気づいていないクオンが首を傾げる。

「無自覚ですかー。んじゃ、やりますかね」
「入るなら、お主は氷を出していった方がいい。わしが入るとたまに威嚇いかくされるが、お主なら平気じゃろう」
「うん、そうするよ」

 ガルフさんがそう忠告してくれ、俺は小屋に入る。
 アスナと姉さんはなにやら話しているので、クオンと二人で作業をすることにした。
 柵の中に入り、手のひらの上に氷魔法を出しながら近づくと……二匹のモウルがのそのそと近づいてくる。

「「モウー」」
「おおっ、可愛い……」

 俺の氷に近づき、鼻を擦りつけてくる。
 やはり、涼しいのがお好みのようだ。

「ふふ、そうですね。でも、食用でもあることを忘れずに」
「あっ……そっか。だから、名前とかつけなかったわけだし」
「すみません、水を差すようで」
「ううん、言ってくれてありがとう」

 そうだ、彼らはペットではない。
 いずれはお肉になって、俺達の血肉になる運命だ。

「いえ、動物をかわいいと思う気持ちは分かりますから。それに、人間に飼われることは、彼らにとっても悪いことではありません。自然に生きていれば、子供を死なせることだってあるわけですから」
「でもさ、そういう考えこそがアレじゃない? こっち本位というか……」
「まあ、そうですね。ですが、本当の気持ちなど分かりませんから。少なくとも、この二頭は主人殿に会ってなければ死んでいた可能性が高いかと」
「そっか……うん、少しスッキリしたかも。クオン、ありがとう」
「いえいえ、それでは作業をしましょう」

 そして氷があるおかげでモウルは大人しくしてくれ、あっさりと作業……乳搾ちちしぼりを終えた。
 ガルフさんに挨拶をし、四人で屋敷へと戻る。
 四人で厨房の前に立って、これからどうするかを話し合う。

「姉さんとアスナはどうする? アイスクリームができるまで見る?」
「私はクレスを眺める」

 姉さんがそう即答する。

「なんか違くない?」
「違くない、それが私の趣味」
「はへー……変わった趣味だこと」

 すると、アスナが遠慮がちに手を挙げた。

「それなんだけど、私はカルラ様にお話があって……」
「そうなの? じゃあ、姉さん、聞いてあげて」
「ん、クレスの頼みじゃ仕方ない。アスナ、行こう」
「は、はい! ありがとうございます! クレスもありがとねー!」
「いえいえ。んじゃ、できたら持っていくね」

 そうして二人が並んで去っていく。
 残された俺とクオンは二人で首を傾げた。

「一体、なんの話だろう?」
「確かにそうですね」

 すると、厨房から小さい女の子が顔を出す。
 うちの人気者、可愛いレナちゃんですね!

「クレス様、クオンさん、こんにちは。あれ? お姉様の声が聞こえた気がしたんですけど……」
「アスナは姉さんに話があるみたい」
「カルラ様に話……ふふ、そうですか」

 レナちゃんはクスクスと笑い、なにか意味ありげな表情だ。

「なにか知ってるの?」
「いえいえ。ただ、クレス様は覚悟しておいた方がいいですよ?」
「なになに? 怖いんだけど?」
「まあまあ、今は気にしないでください。それで、どうしたんですの?」

 レナちゃんに尋ねられ、俺は当初の目的を思い出す。

「いや、アイスクリームを作ろうかと思ってね。姉さんが来たし、クオンが食べたいっていうから」
「あらあら」

 レナちゃんがそう言って微笑むと、クオンが慌てて厨房に入っていく。

「ほ、ほら! 早く作りますよ!」

 それを見て、俺とレナちゃんは顔を見合わせて笑い合うのだった。
 厨房に入ったら、早速作っていく。
 とはいえ、クオンとレナちゃんは自分が食べたいからか、率先して作業を始めたので、俺は氷を出すくらいしかやることがない。
 なので、この先のことについて考えていた。

「うーん、どうしよう?」
「主人殿、どうしたのです?」
「いや、牛乳は量は少ないけど手に入る……卵はどうしようかなって。コカトリスなんて滅多にいるもんじゃないし、というかアレは流石に飼えないし」

 もちろん、牛乳があるだけでも作れる料理は増える。
 チーズにシチュー、ヨーグルトや牛乳プリンなど。
 でも、卵がないとできないことも沢山あるよね。
 そんなことを考えながら、ふと顔を上げると……そこには絶望の表情を浮かべたクオンがいた。

「た、卵がないとアイスクリームができない?」
「い、いや。できないことはないけど。ただ、やっぱり卵がないと濃厚な味は出ないかなと」
「すぐに卵を取りに行きましょう!」

 作業を中断して、飛び出そうとするクオンを、俺は急いで止める。

「お、落ち着いて! 今日の分はあるし!」

 どうやら、俺が思っている以上に、アイスクリームを気に入っているらしい。
 ひとまずクオンを宥めて、引き続き作業をしてもらう。
 すると、レナちゃんが手を挙げる。

「クレス様、卵はまだありますよ?」

 そう、この屋敷には、先日手に入れたコカトリスの卵が残っている。

「まあ、でかい卵だったからね。でも、卵は日持ちしないから。火を通すならまだいいけど、生だと特にね」
「確かに……領地にいたシェフに、お腹を壊したとか聞いたことありますの」
「そうそう、暑いから特に気をつけないと。どちらにしろ、牛乳と同じように定期的に手に入るようにしたいかなって」

 卵と牛乳が定期的に手に入れば、食事のバリエーションも増える。
 それに卵は栄養価も高く、健康を保つためにもってこいだ。

「そうなると、なにを狙いますの?」

 レナちゃんの質問に、俺は頭を悩ませてしまう。

「危険性が低くて、それでいて卵を生む魔獣がいればいいけど……難しいよね」
「そもそも、魔獣とは危険な生き物ですの。それに卵を生む鳥系の魔獣は管理が難しいですわ」
「確かにそうだよね。飛んでいって逃げちゃうし。飛べない鳥だったらいいけど……そういえば、コカトリスの雌は危険じゃない?」

 この前、雄のコカトリスを狩猟した時に聞いた話では、雄のみが毒蛇どくへびの尾を持っていて、凶暴性きょうぼうせいが強いということだった。
 雌は見たことないけど、アレより相当小さいとは言っていたし。

「確か、大人しいと聞いたことがありますわ。というより、臆病おくびょうな性格で、戦闘力もそこまで高くないとか」
「ほんと!? なら、雌を見つけて飼育すればいいかな?」

 ただそれだと、安定して供給するのが難しいから、どこかで繁殖はんしょくさせる必要があるか。
 だけど、あの雄を捕まえるとか無理な話だ。
 ましてや、飼うなんて不可能だろう……でも、待てよ?

「ねえ、レナちゃん」
「なんでしょうか?」
「コカトリスの卵を見つけて、それを温めて孵化ふかさせようって人はいなかったの? 雄でも赤ん坊から育てれば、割と安全って可能性はないのかな?」

 もし、雌のコカトリスを捕獲できたら、野生のコカトリスの巣から卵を拝借してきて、雄が孵化するまでそれを繰り返せば、つがいを誕生させることができるのでは?

「えっと、確か……そういうのを試した方もいたみたいですの。いわゆる、刷り込みというか、本能に呼びかけられるのではないかと。でも、そもそも生まれることがなかったみたいですわ」
「なるほど……ちょっと難しそうかな? でも、試すだけならタダだよね」
「それはそうですの。もちろん、雌であっても捕まえるのは困難かと思いますが……」

 気楽な俺とは対照的に、レナちゃんの言葉から元気がなくなっていく。

「まあ、そこはあとで考えるとするよ。俺じゃなくて、他のみんながね」
「ふふ、クレス様らしいですの。そうですね。成功すれば、コカトリスの卵がこの都市の名産の一つになりますわ」
「そうだね。自分達の領地でコカトリスの卵が賄えたら、それを売りにできるか。そこに温泉やプール、そしてビールに美味おいしいご飯……うん、スローライフっぽくていいね。みんなのいこいの場所っていうか、観光スポットっぽい」
「はい、素敵だと思いますの。名産があれば人も集まりますし、商人や冒険者の方々も来るかと」
「そっか、そういう連鎖れんさを生むのか。流石はレナちゃん、どっかの脳筋のうきんの姉とは違うわけだ」

 アスナは猪突猛進ちょとつもうしんタイプで、考えるより先に行動するからなぁ。
 それはそれで魅力だけど、相談相手には向かない。


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