自由を求めた第二王子の勝手気ままな辺境ライフ

四章

出来上がり

何とか死なずに済んだクレス君ですが、正座をしていたのでお膝が痛いです。

やれやれ、アスナをからかうのは大変だ。

姉さんはよくわからないけど、足が痺れた俺をツンツンして遊ぶし。

そんなことをやっている間に、アイスも完成したらしい。

「クレス様！ できましたわ！」

「早く食べましょう！」

「まあまあ、落ち着いて。これだけだと前と同じだから、一工夫加えよう」

すると、姉さんがいつのまにかアイスの容器を持っていた。
そして、厨房内から出て行こうとする。

「いつの間に！？ ちょっと待って！？」

「クレス、お姉ちゃんは早く食べたい。これ、なんだか美味しそう」

その顔は無表情に見えるが、僅かに頬が緩んでいた。
こんな顔の姉さんを見るのは初めてだ。

「わかりましたからと少しだけ待ってください。レナちゃん、卵の残りはどれくらい？ クオン、生で食べられる期間は？」

「えっと、大分減ってしまいましたの」

「……残念ながら、もうすぐ厳しいかと。いくら主人殿の氷魔法があっても、これくらいが限界のようですね」

「そっか……それじゃ、美味しいうちに全部使い切った方が良いね。二人共、すぐに出来るから手伝って」

二人に手伝ってもらい、ボールに卵と小麦粉、砂糖と牛乳を加えて混ぜる。
本当ならバターが欲しいところだけど、まだその余裕はない。
えっ？ 姉さんとアスナは何をしてるって？
……俺の両隣から、じっと作業を見つめております。
この二人はそもそも戦力外なので、むしろ助かったり。

「じっー、クレス、これは何？」

「それは出来てからのお楽しみだよ」

「ねえねえ、これってお菓子を作る時の材料よね？」

「そうそう、基本的には一緒かな」

当然、この世界にも簡易的なお菓子はある。
菓子パンなどがそれにあたり、クッキーなどもある。
ただし、それらは当然高級品で、庶民の口に入ることは少ない。
そもそも、バターなしなど寂しすぎる。
バターさえあれば、色々と料理の幅も広がるんだけどなー。
そんなことを思いながら、熱したフライパンにタネを注いでいく。

「これで、表面がふつふつと穴が空いてきたらひっくり返すよ。二人共、同じようにやってみて」

「はいですの！」

「わかりました」

アイスが溶けてしまうので、三人で一気に生地を焼いていく。
二分ほど待つとふつふつしてきたので、ささっとひっくり返す。

「うん、  焼き色だ。アスナ、お皿くらい出してよ」

「仕方ないわね」

アスナがそう言い、俺の側から離れていく。
実は良い香りがして、ドキドキしてたからとは言えない。
黙ってれば美少女だからなぁー……これも言えないけどね！
そんなことを考えていると、姉さんの手がちょんちょんと肩に触れる。

「クレス、お姉ちゃんも手伝いたい」

「あぁー……それじゃ、アイスをスプーンで丸くなるようにほじってくれるかな？ それを最後に載せるから」

「ん、頑張る」

すると、姉さんがアイスの器の中から、スプーンで丸を作っていく。
それはディッシャーを使ったように綺麗だった。

「おおっ！ 姉さん凄い！ めちゃくちゃ綺麗だね！」

「っ～！？ ク、クレスに褒められた……！」

そう言い、花が咲いたように笑う。
なんだ、こんな風に笑うなら……もっと早く知りたかったな。

「いやいや、めちゃくちゃ器用だよ」

「ふふ、よく人の身体をくり抜いていたのが良かったのかしら」

前言撤回！ あんまり知りすぎるのは良くないです！
これ以上聞いてはまずいと思い、俺は作業に集中する。
そして、数分で全ての生地を焼き終える。
そしたら皿にパンケーキを乗せ、その上にアイスクリームを置く。

「これで完成！  パンケーキのアイス乗せです！」

「美味しそうですの！」

「これは……早く持っていきましょう！」

「クレス！ 急ぐわよ！」

「クレス、お姉ちゃんも待てない」

それぞれが自分の皿を持ち、厨房から出て行く。

……頑張った俺を置いて。

まあ、良いんですけど……女の子は、甘味には目がないというしね！