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終焉

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……流石にきついや。

魔力はあるけど、戦い慣れてないから体力と精神的に。

俺はその場で仰向けになって倒れこむ。

「ァァァァ! 疲れたァァァァ!」

「ふふ、お疲れ様でした」

「クレハもね。オルガとギレンもありがとう」

「うすっ!」

「い、いえ!」 

全員、俺以外は満身創痍って感じだ。
俺を守るために、身体を張ってくれたんだよね。

「さてさて、これで一件落着!」

「……待ってください、魔物達が引きません」

「へっ?」

体だけ起こし振り向くと、そこには都市に向かっている魔物達の群れが。

「ボスは倒したのに!?」

「おそらく、気づいてないのでしょう。そのまま暴走しているのかと」

「い、行かなきゃ。クレハも……あっ」

立ち上がろうとすると、足腰に力が入らない。
そしてそれは、三人も同じだった。
それはそうだ……限界まで戦ってもうヘトヘトだもん。

「でも、守らないと……俺は領主なんだから」

「エルク様……私も負けてられませんね!」

「お、おぉぉぉ! 俺の身体動けえぇぇ!」

「オ、オイラも手伝います!」

何とか全員で起き上がり、魔物達を追いかけようとする。
その時——何かが魔物達の群れに突っ込んだ。

「ハハハッ!」

「ギャギャ!?」

「ゴガァ!?」

一人の大男によって、オークやゴブリンが紙のように舞う。
そして、大量の魔石が地面に転がる。
最後に立っていたのは……その大男一人だった。

「というか……シグルドおじさん!」

「おおっ、エルクじゃねえか! 間に合ってよかったぜ!」

シグルドおじさんはそう言い、寄ってきて俺の背中を叩く。
剣聖シグルド、それは父上の弟だ。
最強の剣士と呼ばれ、他国と魔物達が攻めてくる北の大地を守護する国の要の存在だ。

「い、いたいって」

「ははっ、すまんすまん」

「まったく、相変わらずガサツなんだから」

すると、クレハが姿勢を正して叔父上に礼をする。
クレハにとっては、叔父上は剣の師匠だ。

「お師匠様、お久しぶりです」

「おう、クレハも元気そうだな……んで、何でエルクが前線にいる? お前には、そのための剣を教えたはずだが?」

「っ——! も、申し訳ありません! 私の力不足で」

「叔父上違う!  クレハはしっかり守ってくれた! それに、俺だって戦えるよ!」

「ふむ……何やら、事情がありそうだな。俺も聞きたいことは山ほどある。さて、その前に……無事な姿を見せてやんな」

 その時、後ろから誰かが抱きついた。

「エルク様!」

「その声……ステラ!?」

「はい! ご無事でなによりですの!」

「どうして君がここに……と、とりあえず、離れようか!」

「はわわっ……私としたことがはしたない事を」

アブナイアブナイ、めちゃくちゃ柔らかなものが背中に当たってた。
戦いの後だからか、俺の体も火照ってるから尚更に。
俺一つ深呼吸をして、二人に向き合う。

「叔父上もそうだけど、ステラもどうして?」

「そりゃ、お前が心配だからだよ。ったく、護衛も置いていきやがって」

「あ、あと、エルク様が氷魔法を使えると!」

「なるほど……どうやら、ゆっくりと話をする必要がありそうだね。ただ……」

「エルク様?」

「も、もう限界……もう、休んでもいいよね」

これでスタンピートは終わった。

俺はダラダラしたいのに……もうヘトヘトです。

そうして、俺の意識は沈んでいくのだった。
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