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わいわい
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ワイバーンの骨の出汁ができるまで、作業が終わったネコネと話をする。
その間に、厨房内にいる料理人達が調理してくれるそうだ。
作り方は見せたので、彼らなら問題ない。
流石に俺たちだけで、住民全員分を作るのは無理だろし。
「ネコネ、仕事はどう?」
「えっと、頑張ってます!」
「そっか、無理はいけないよ?」
「えへへ、ありがとうございます」
ネコネは年齢の割に小さいし細い。
あんまり無理はさせたくないなぁ……とにかく、栄養のあるものを食べさせますか。
「そういえば、お母さんはいいの? 確か、身体を壊してるとか……結局、ネコネもパンサーさんも住み込みになっちゃったし」
「はい、今は周りの方々がお母さんを見てくれてるんです。それに、お母さんが行きなさいって……私のことはいいから、あなたの好きなことをしなさいって」
「そっか、いいお母さんだね」
「えへへ、お兄さんに褒められると嬉しい。お兄さん、わたしも何かお役に立ちたいです」
そう言い、俺を真っ直ぐに見つめてきた。
こんな小さい女の子が、自分にできることを考えている。
……これは自堕落王子の俺とはいえ、やる気を出さないわけにはいかないね。
「大丈夫、たった今……役に立ったから」
「ふぇ? な、何もしてないですよ?」
「いやいや、十分だよ。とりあえず、料理を仕上げてみんな喜んでもらおう」
俺は大きく伸びをして立ち上がる。
俺も、できることをやるために。
スープの様子を見ると、綺麗な黄金色になっていた。
一時間くらいだけど、これで十分そうだね。
「クレハ、灰汁取りありがとね」
「いえいえ、途中からなんだか楽しくなってきたので」
「あっ、わかるかも。こう、綺麗になっていく感じがいいよね」
「ふふ、その通りかと」
「ウンウン、料理って楽しいから。さて、軽く味見をして仕上げに入ろう」
使ってないスプーンを使い、銅鍋からスープをよそう。
鳥出汁に似た香りが鼻をくすぐり、食欲が出てくる。
「どれどれ……美味しい」
どっしりと重たく、それでいて喉越しが良い。
スープなのに噛めると思ったくらいだ。
後味もよく、これでラーメンとか作ったら絶対に美味い。
「これは……美味しいですね。ただの出汁なのに」
「ほんとです! 骨ってこんなに美味しい出汁を出すんですね!」
「そうそう。骨には、その生き物の本来の旨味が凝縮されてるから。よし、これを使って夕飯作りするよ」
二人が頷き、料理人達と共に調理を再開する。
まずはスープを作るために、ネコネが炒めておいた野菜類に刻んだトマトをいれる。
そこにワイバーンの出汁を入れれば、後は煮込むだけでいい。
「そういえば、卵を使った料理はどこに?」
「あれなら湯煎した後に、俺の作った氷の部屋に閉じ込めてあるよ。ここは暑いから、隣の保存庫でね。もう、完成してるはずだ」
「では、スープとデザートがほぼ完成という事ですね。あとは、何を作るので?」
「メインの唐揚げと……パエリアを作ります!」
「……二つとも、聞いた事ないですね」
それもそのはずで、この世界では見たことない。
油自体はオリーブの木に近いモノがあるので、割と豊富にある。
でもそれはサラダにかけたり、保湿などに使われるのが基本だ。
パエリアも似たようなものはあるが、出汁から煮るタイプはなかったはず。
「ふふふ、これも本で見たから」
「……はぁ、そうですか」
もう若干呆れているけど、もう引き返せない!
ここは押し切るのみ!
「とにかく美味しいから安心して! ささ、作ってこー!」
「おっー!」
俺が拳を突き上げると、ネコネが真似をする。
「おっ、ノリがわかってきたね?」
「えへへ、なんだか楽しいですっ」
「そうそう、何事も楽しまないと」
楽しい空気感の中、次々と作業を進める。
パエリアはネコネに任せ、俺とクレハは唐揚げを作る。
もちろん、ネコネに助言をしつつだ。
「まずはオリーブ油で玉ねぎを炒める。しなってきたら、ワイバーン肉の切れ端とキノコ類追加してね」
「は、はい! メモメモ……」
ネコネは一生懸命にメモを取っている。
この子には色々と教えて、俺の助手になってもらおうかな。
「ある程度火が通ったら、そこに作ったトマトスープを足してく」
「あっ! そのスープでお米を炊くってことですか!?」
「そうそう、そのイメージでいいよ。その美味しい出汁を吸って、お米自体に味が付くんだ」
よく勘違いされるが、本場のパエリアは最初に米を炒めない。
独自のご家庭で美味しいスープを作り、そこにお米を入れて炊くんだ。
だから別に、白ワインや魚介類の具材がなくても良い。
「ふぇ~……もっと知りたいです!」
「おっと……ふふ、料理の道は険しいぞ? 君についてこれるかな?」
「が、頑張りますっ!」
「わかった、では料理の真髄を教えよう。ネコネ君、先生についてきたまえ」
「はいっ! 先生!」
俺達がミニコントをやっていると、クレハに頭をはたかれる。
「何をやっているのですか。ほら、ささっと手を動かしてください」
「ご、ごめんなさい~!」
あれ? 一応、俺は主人なのでは?
……まあ、良いや。
俺は温めたオリーブ油の中に、ネコネが仕込んだワイバーンのモモ肉を入れていく。
実はサラダ油より、オリーブ油の方がカラッと揚がったりするのだ。
「あつっ……」
「確かに暑いですね」
パチパチと音が鳴る中、二人で汗だくになる。
温度が下がるといけないので、俺たちの近くには氷を置いていない。
万が一にも、油の中に入ったら大変だし。
「でも、これが美味しい料理に繋がるんだ。みんなも喜ぶし、この先のためにも頑張ろう」
「エルク様……ええ、私も微力ながらお手伝いします」
「うん、ありがとう」
そしてほんのり色がついたら一度あげ、少し冷まして再び入れて二度揚げをする。
そしたら、唐揚げの完成である。
その工程を繰り返すこと数十分……ようやく、全てを揚げ終える。
「よし、完成だ! 暑いィィィ!」
「ふふ、頑張りましたね」
「いやー、ほんとだよ。さてさて、ネコネの方はっと」
ネコネの方を見ると、既に作り終えたのか皿などを用意していた。
「ネコネ、できたのかな?」
「はい! バッチリです! えっと、さっきモーリスさんがきて、領主の館の前で炊き出しみたいにするみたいです。既に、住民達が並んでいるそうですよ」
「あっ、そうなんだ。それじゃ、出来上がったし持っていくとしよう」
本当は、こんなことしてる場合じゃないかもしれない。
でも暗くなっても仕方ないし、ここは英気を養ってもらう意味でも良いよね。
さて……レッツパーティーだ!
その間に、厨房内にいる料理人達が調理してくれるそうだ。
作り方は見せたので、彼らなら問題ない。
流石に俺たちだけで、住民全員分を作るのは無理だろし。
「ネコネ、仕事はどう?」
「えっと、頑張ってます!」
「そっか、無理はいけないよ?」
「えへへ、ありがとうございます」
ネコネは年齢の割に小さいし細い。
あんまり無理はさせたくないなぁ……とにかく、栄養のあるものを食べさせますか。
「そういえば、お母さんはいいの? 確か、身体を壊してるとか……結局、ネコネもパンサーさんも住み込みになっちゃったし」
「はい、今は周りの方々がお母さんを見てくれてるんです。それに、お母さんが行きなさいって……私のことはいいから、あなたの好きなことをしなさいって」
「そっか、いいお母さんだね」
「えへへ、お兄さんに褒められると嬉しい。お兄さん、わたしも何かお役に立ちたいです」
そう言い、俺を真っ直ぐに見つめてきた。
こんな小さい女の子が、自分にできることを考えている。
……これは自堕落王子の俺とはいえ、やる気を出さないわけにはいかないね。
「大丈夫、たった今……役に立ったから」
「ふぇ? な、何もしてないですよ?」
「いやいや、十分だよ。とりあえず、料理を仕上げてみんな喜んでもらおう」
俺は大きく伸びをして立ち上がる。
俺も、できることをやるために。
スープの様子を見ると、綺麗な黄金色になっていた。
一時間くらいだけど、これで十分そうだね。
「クレハ、灰汁取りありがとね」
「いえいえ、途中からなんだか楽しくなってきたので」
「あっ、わかるかも。こう、綺麗になっていく感じがいいよね」
「ふふ、その通りかと」
「ウンウン、料理って楽しいから。さて、軽く味見をして仕上げに入ろう」
使ってないスプーンを使い、銅鍋からスープをよそう。
鳥出汁に似た香りが鼻をくすぐり、食欲が出てくる。
「どれどれ……美味しい」
どっしりと重たく、それでいて喉越しが良い。
スープなのに噛めると思ったくらいだ。
後味もよく、これでラーメンとか作ったら絶対に美味い。
「これは……美味しいですね。ただの出汁なのに」
「ほんとです! 骨ってこんなに美味しい出汁を出すんですね!」
「そうそう。骨には、その生き物の本来の旨味が凝縮されてるから。よし、これを使って夕飯作りするよ」
二人が頷き、料理人達と共に調理を再開する。
まずはスープを作るために、ネコネが炒めておいた野菜類に刻んだトマトをいれる。
そこにワイバーンの出汁を入れれば、後は煮込むだけでいい。
「そういえば、卵を使った料理はどこに?」
「あれなら湯煎した後に、俺の作った氷の部屋に閉じ込めてあるよ。ここは暑いから、隣の保存庫でね。もう、完成してるはずだ」
「では、スープとデザートがほぼ完成という事ですね。あとは、何を作るので?」
「メインの唐揚げと……パエリアを作ります!」
「……二つとも、聞いた事ないですね」
それもそのはずで、この世界では見たことない。
油自体はオリーブの木に近いモノがあるので、割と豊富にある。
でもそれはサラダにかけたり、保湿などに使われるのが基本だ。
パエリアも似たようなものはあるが、出汁から煮るタイプはなかったはず。
「ふふふ、これも本で見たから」
「……はぁ、そうですか」
もう若干呆れているけど、もう引き返せない!
ここは押し切るのみ!
「とにかく美味しいから安心して! ささ、作ってこー!」
「おっー!」
俺が拳を突き上げると、ネコネが真似をする。
「おっ、ノリがわかってきたね?」
「えへへ、なんだか楽しいですっ」
「そうそう、何事も楽しまないと」
楽しい空気感の中、次々と作業を進める。
パエリアはネコネに任せ、俺とクレハは唐揚げを作る。
もちろん、ネコネに助言をしつつだ。
「まずはオリーブ油で玉ねぎを炒める。しなってきたら、ワイバーン肉の切れ端とキノコ類追加してね」
「は、はい! メモメモ……」
ネコネは一生懸命にメモを取っている。
この子には色々と教えて、俺の助手になってもらおうかな。
「ある程度火が通ったら、そこに作ったトマトスープを足してく」
「あっ! そのスープでお米を炊くってことですか!?」
「そうそう、そのイメージでいいよ。その美味しい出汁を吸って、お米自体に味が付くんだ」
よく勘違いされるが、本場のパエリアは最初に米を炒めない。
独自のご家庭で美味しいスープを作り、そこにお米を入れて炊くんだ。
だから別に、白ワインや魚介類の具材がなくても良い。
「ふぇ~……もっと知りたいです!」
「おっと……ふふ、料理の道は険しいぞ? 君についてこれるかな?」
「が、頑張りますっ!」
「わかった、では料理の真髄を教えよう。ネコネ君、先生についてきたまえ」
「はいっ! 先生!」
俺達がミニコントをやっていると、クレハに頭をはたかれる。
「何をやっているのですか。ほら、ささっと手を動かしてください」
「ご、ごめんなさい~!」
あれ? 一応、俺は主人なのでは?
……まあ、良いや。
俺は温めたオリーブ油の中に、ネコネが仕込んだワイバーンのモモ肉を入れていく。
実はサラダ油より、オリーブ油の方がカラッと揚がったりするのだ。
「あつっ……」
「確かに暑いですね」
パチパチと音が鳴る中、二人で汗だくになる。
温度が下がるといけないので、俺たちの近くには氷を置いていない。
万が一にも、油の中に入ったら大変だし。
「でも、これが美味しい料理に繋がるんだ。みんなも喜ぶし、この先のためにも頑張ろう」
「エルク様……ええ、私も微力ながらお手伝いします」
「うん、ありがとう」
そしてほんのり色がついたら一度あげ、少し冷まして再び入れて二度揚げをする。
そしたら、唐揚げの完成である。
その工程を繰り返すこと数十分……ようやく、全てを揚げ終える。
「よし、完成だ! 暑いィィィ!」
「ふふ、頑張りましたね」
「いやー、ほんとだよ。さてさて、ネコネの方はっと」
ネコネの方を見ると、既に作り終えたのか皿などを用意していた。
「ネコネ、できたのかな?」
「はい! バッチリです! えっと、さっきモーリスさんがきて、領主の館の前で炊き出しみたいにするみたいです。既に、住民達が並んでいるそうですよ」
「あっ、そうなんだ。それじゃ、出来上がったし持っていくとしよう」
本当は、こんなことしてる場合じゃないかもしれない。
でも暗くなっても仕方ないし、ここは英気を養ってもらう意味でも良いよね。
さて……レッツパーティーだ!
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