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主君

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よしよし、オルガさんの顔つきが変わった。

まだぎこちないけど、おどおどした感じは減ったかな。

やっぱり、何かを成すと人は自信がつくよね。

すると、オルガさんが突然……俺の前で膝をつく。

「ど、どうしたの? どっか怪我でもした?」

「い、いえ! あの、その……主君と呼んでもいいでしょうか!?」

「……はい? 主君? どういうこと?」

「え、えっと……もう一つの夢が騎士になることだったんです」

「でも、俺に任命権はないよ? ちゃんとした騎士になるなら、紹介状くらいは書いてあげるけど……俺ので効果があるのかは謎だけどね」

第二王子とはいえ、俺は有名な自堕落王子でそういう権利は一切ない。
そんなのあったら、反乱の元になるし。

「そ、そういうのではなく……エルク殿下の騎士になりたいのです」

「えっと……?」

俺が首を傾げていると、クレハが割って入ってくる。

「エルク様、彼はエルク様個人に仕えたいのかと……私と同じように」

「あっ、そういうことか。でも、どうして? じいちゃんの夢は?」

「オイラ、エルク殿下に仕えるのが一番の近道だと思って……何より、オイラみたいな鈍臭い奴を信じてくれた。オイラ、その恩返しがしたい」

「そういうのは気にしなくていいって」

「そう言わずに! お願いします!」

あんまり人に傅かれるのは得意じゃない。
前世の記憶を思い出したから尚更に。
俺はそんなに立派な人間でもないし。

「エルク様、受けてあげてください」

「クレハ?」

「きっと、私と同じく……そ、その……」

クレハは尻尾を振りながら、何やらもじもじしている。
うん……クーデレ美人さんがやると破壊力抜群ですね!
すると、覚悟を決めたのか顔を上げる。

「あ、貴方の側にいたいのかと! そして、お役に立ちたいのだと思います!」

「そっか……その気持ちは嬉しいけど」

「そうです! お願いします!」

「……言っておくけど、俺はそんなに立派な人間じゃないよ? それでもいい? 君をいいように利用するかもしれないよ?」

「はいっ! この力を好きに使ってください!」

……こりゃ、断るまでテコでも動かないかな。
仕方がない、ひとまず受けるとしよう。

「わかった。それじゃ、好きにしていいよ」

「っ!? あ、ありがとうございます! クレハさんも!」

「いえ……共にエルク様を守りましょう。先ほどの盾は見事でした……あれならば、エルク様を任せられますね」

「こ、こちらこそよろしくお願いします!」

そして、クレハとオルガさんが握手を交わす。
確かにオルガさんがいれば、クレハは自由に動ける。
俺も魔法に集中できるし、いいこと尽くめではあるのか。
……やれやれ、この期待を裏切るのは難しいなぁ。




その後、クレハが辺りを見渡す。

「どうしたの?」

「いえ、卵があると思いますので」

「そうだった! 俺とオルガさんで処理するから探してきて!」

「……そんなに遠くにはないはず。オルガ殿、エルク様を頼みましたよ」

「はいっ! この命に代えても!」

「ふふ、頼もしいですね」

「いやいや、代えちゃダメだし。二人共、命は大事にしてね」

そんなやり取りの後、クレハが木の上を移動していく。
相変わらず、身ごなしの軽いこと。

「んじゃ、俺達でやっちゃおう。俺が水を出すから、腹の中を洗ってくれる?」

「わかりました!」

「おっ、手慣れてるね」

「へへっ、じいちゃんに仕込まれたんです」

手際は見事で、俺は少し離れた位置から水を出すだけでいい。
なので、今後のことを考える。

「フンフフーン、何を作ろうかなー。オルガさんは、何か食べたい?」

「オイラですか? ……豪快な食べ物とか好きです」

「おっ、それもいいね」

そうなると親子丼? でも、タイ米系はあっても白米はないし。
香辛料や薬味は充実しているし……あれで行くか。
卵は、別の用途で使うとしよう。
そうして、処理をしているとクレハが戻ってくる。
そして、その手には……卵様が!

「ヤッタァ! 卵だ!」

「やはり、ありましたね。おそらく、出産のために山から降りてきたのかと」

「ん? 山じゃダメなの? 群れがいるんだし」

「……多分、何かがあったのかと」

「ふむふむ……魔物の大量発生と関係ある?」

「その可能性はあるかと。とにかく、 一度戻りましょう」

そしてワイバーンを処理したら、氷漬けにする。
それをクレハが担いで、元の場所に戻ってくる。
すると、パンサーさんが出迎えてくれた。
他の三人は倒れこみ、どうやら眠っているようだ。

「無事に戻ったか」

「うん、見ての通り。そっちは問題なさそうだね」

「ああ、特にない。それと、眠っているが叱らないでくれ。本人達は起きて待つと言ったが、それでは帰りに耐えられないと言っておいた」

「うん、平気だよ。確かに、そろそろ帰らないとまずいよね」

できれば日が暮れる前に、帰りたいところだ。

ワイバーンもそうだけど、卵も日持ちしないだろうし。

なので全員を起こし、急いで領地へと帰還するのだった。




~あとがき~

皆様、本作を読んでくださり誠にありがとうございます。

アルファポリスにて私が原作を務めているコミカライズ作品「前世では家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる」という漫画が掲載されております。

ただ今3話まで進んでいるので、よろしければこちらも応援してくださると嬉しいです🙇‍♂️
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