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パンサーとオルガ
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さて、朝食を済ませたら行動開始だ。
昨日のうちに、戦える人且つ三十歳以下という条件で住民達に募集はかけておいた。
既に来ているというのでクレハを連れて外に出ると、そこには五人の若い男性がいた。
その中の一人は、黒い豹が二律歩行しているような……獣人だろう。
男性型の獣人の特徴として、獣要素が強くなるとは聞いていた。
「やあ、おはよう」
「おはようございます!」
四人が姿勢を正し、一斉に挨拶をしてきた。
うんうん、やる気がありそうでいいね。
命が関わるから、今回は希望者という形をとった甲斐がある。
……まあ、挨拶をしなかった獣人の彼は後回しにしよう。
「まあ、そんなに固くならないでいいから。とりあえず、今日は採取や探索をメインにやっていきます。この中に、少しでも魔法が使える人は?」
「は、はい! オイラはオルガと言います! 一応、土魔法が使えます……ですが、魔法を飛ばすのが苦手で大した魔法は使えません。魔力自体はあるんですけど……」
「いやいや、魔力があれば十分だよ。ということは、使い用次第って事だ」
人族は唯一四属性を使える素質を持つが、攻撃魔法を使えるほどの魔力を持つ者は少ない。
魔力が多いだけでも、上等といったところだ。
それに魔法を飛ばせなくても、土魔法なら色々と出来そうだ。
「んじゃ、君には俺についてもらうね。魔法の使い方を教えられるかもしれないし」
「が、頑張ります!」
「あれ? 君……そういえば、どっかで見たような?」
今更だけど、オルガさんは見たことある。
短い金髪で、少し気弱そうだけど体格も良い。
多分、年齢は二十五歳くらいかな?
「 昨日までは門番をしておりました! クレス殿下がいらっしゃった時に対応した者です!」
「ああ、あの時の……確か、モーリスさんを呼びに行ってくれた人だね」
「覚えていてくださりありがとうございます!」
「ふむふむ、体格も悪くなくて魔法まで使えると……言っちゃなんだけど、どうして辺境に? 都会に行くとか、他国に行くとか考えなかったの?」
モーリスさんに聞いたところ、辺境には特に二十代が少ない。
耐えられず都会に行く者、夢を追って行く者、家族のためにと様々ではあるけど。
やっぱり、若いうちは田舎には居たくないっていうのはどこの世界でも一緒だろう。
「考えなかったといえば嘘になりますが……小さい頃に、爺さんが言った言葉が忘れられなくて。わしが若い頃は、どの種族も仲が良くて平和だったって。なので、それを目指して頑張っていたんですけど……特に何もできずに腐ってました。オイラは鈍臭いし、あんまり役に立てなくて」
「でも、今は違うんでしょ?」
「は、はい! エルク殿下がきて、もう一度やる気を取り戻しました! どうか、オイラにも手伝わせてください!」
「そりゃ、もちろん。他の三人も同じ気持ちでいいってことかな?」
「「「はい!!!」」」
俺の言葉に、残りの人族が力強く頷く。
となると、残りは後一人か。
俺は、ずっと黙って立っている彼に視線を向ける。
「君はどうする? 一応確認だけど、参加するということでいいのかな?」
「……二つほど確認したい」
おおっ、低いイケメンボイスだ。
というか、黒豹みたいでカッコいい。
それに古いジャケットを着ているのが、逆にワイルドさを増している。
「うん、いいよ」
「まずは、隣にいる銀狼族はお主の何だ?」
「クレハのこと? そりゃ、大事な人に決まってる」
「ふぇ? な、何を!?」
「クレハ、何で慌ててるの?」
「……はぁ、そういう意味ですよね。ええ、わかってましたとも」
何故か、今度はジト目で睨んでくる……げせぬ。
そのやり取りを見た彼が、少しだけ苦笑する。
どうやら、返事としては正しかったらしい。
「ふむ、決して誰にも従わないという銀狼族が惚れ込む男か」
「ほ、惚れ込んでませんから!」
「なに? そうなのか?」
「い、いや、その……もう! ええ! 私が忠誠を誓った方です!」
クオンが耳まで真っ赤にして言い切った。
それを聞くと、なんだかこっちまで照れてくる。
「なら良い。次の質問だが、お主は王族であり人族……何故、獣人や平民に優しくする? 何が目的だ?」
「あれ? 炊き出しの時にいなかったの?」
「……いた。だが、今一度答えてくれ」
その目は敵意というより、俺を見極めてる感じだ。
これは、ふざけるわけにはいかない。
かと言って、嘘を言うわけにもいかない。
「俺の目的は、この辺境を改革することだよ。そのためには、人族と獣人が手を取り合わないといけない。もちろん、貴族や平民もね」
「何故だ? お主に何の得がある?」
「んー……あのね、俺はダラダラしたいのさ。でもね、自分だけがダラダラしてるのは嫌なんだよね。だったら、みんなでダラダラ……のんびり過ごせるようにしたいって思ってる」
「……つまり、自分のためにということか?」
「うん、そういうこと。俺のわがままってことだ……幻滅した?」
「いや、逆に納得がいった。綺麗事や御託を並べられるよりはずっと良い……申し遅れたが、俺の名前はパンサーという黒豹族の男だ。ひとまず、お主の探索に連れて行ってくれ」
「うん、わかった。俺のことはエルクで良いし敬語もいらないから。それじゃ、このメンバーで出かけるとしますか」
自己紹介と話し合いが済んだので、七人で森へと向かうのだった。
昨日のうちに、戦える人且つ三十歳以下という条件で住民達に募集はかけておいた。
既に来ているというのでクレハを連れて外に出ると、そこには五人の若い男性がいた。
その中の一人は、黒い豹が二律歩行しているような……獣人だろう。
男性型の獣人の特徴として、獣要素が強くなるとは聞いていた。
「やあ、おはよう」
「おはようございます!」
四人が姿勢を正し、一斉に挨拶をしてきた。
うんうん、やる気がありそうでいいね。
命が関わるから、今回は希望者という形をとった甲斐がある。
……まあ、挨拶をしなかった獣人の彼は後回しにしよう。
「まあ、そんなに固くならないでいいから。とりあえず、今日は採取や探索をメインにやっていきます。この中に、少しでも魔法が使える人は?」
「は、はい! オイラはオルガと言います! 一応、土魔法が使えます……ですが、魔法を飛ばすのが苦手で大した魔法は使えません。魔力自体はあるんですけど……」
「いやいや、魔力があれば十分だよ。ということは、使い用次第って事だ」
人族は唯一四属性を使える素質を持つが、攻撃魔法を使えるほどの魔力を持つ者は少ない。
魔力が多いだけでも、上等といったところだ。
それに魔法を飛ばせなくても、土魔法なら色々と出来そうだ。
「んじゃ、君には俺についてもらうね。魔法の使い方を教えられるかもしれないし」
「が、頑張ります!」
「あれ? 君……そういえば、どっかで見たような?」
今更だけど、オルガさんは見たことある。
短い金髪で、少し気弱そうだけど体格も良い。
多分、年齢は二十五歳くらいかな?
「 昨日までは門番をしておりました! クレス殿下がいらっしゃった時に対応した者です!」
「ああ、あの時の……確か、モーリスさんを呼びに行ってくれた人だね」
「覚えていてくださりありがとうございます!」
「ふむふむ、体格も悪くなくて魔法まで使えると……言っちゃなんだけど、どうして辺境に? 都会に行くとか、他国に行くとか考えなかったの?」
モーリスさんに聞いたところ、辺境には特に二十代が少ない。
耐えられず都会に行く者、夢を追って行く者、家族のためにと様々ではあるけど。
やっぱり、若いうちは田舎には居たくないっていうのはどこの世界でも一緒だろう。
「考えなかったといえば嘘になりますが……小さい頃に、爺さんが言った言葉が忘れられなくて。わしが若い頃は、どの種族も仲が良くて平和だったって。なので、それを目指して頑張っていたんですけど……特に何もできずに腐ってました。オイラは鈍臭いし、あんまり役に立てなくて」
「でも、今は違うんでしょ?」
「は、はい! エルク殿下がきて、もう一度やる気を取り戻しました! どうか、オイラにも手伝わせてください!」
「そりゃ、もちろん。他の三人も同じ気持ちでいいってことかな?」
「「「はい!!!」」」
俺の言葉に、残りの人族が力強く頷く。
となると、残りは後一人か。
俺は、ずっと黙って立っている彼に視線を向ける。
「君はどうする? 一応確認だけど、参加するということでいいのかな?」
「……二つほど確認したい」
おおっ、低いイケメンボイスだ。
というか、黒豹みたいでカッコいい。
それに古いジャケットを着ているのが、逆にワイルドさを増している。
「うん、いいよ」
「まずは、隣にいる銀狼族はお主の何だ?」
「クレハのこと? そりゃ、大事な人に決まってる」
「ふぇ? な、何を!?」
「クレハ、何で慌ててるの?」
「……はぁ、そういう意味ですよね。ええ、わかってましたとも」
何故か、今度はジト目で睨んでくる……げせぬ。
そのやり取りを見た彼が、少しだけ苦笑する。
どうやら、返事としては正しかったらしい。
「ふむ、決して誰にも従わないという銀狼族が惚れ込む男か」
「ほ、惚れ込んでませんから!」
「なに? そうなのか?」
「い、いや、その……もう! ええ! 私が忠誠を誓った方です!」
クオンが耳まで真っ赤にして言い切った。
それを聞くと、なんだかこっちまで照れてくる。
「なら良い。次の質問だが、お主は王族であり人族……何故、獣人や平民に優しくする? 何が目的だ?」
「あれ? 炊き出しの時にいなかったの?」
「……いた。だが、今一度答えてくれ」
その目は敵意というより、俺を見極めてる感じだ。
これは、ふざけるわけにはいかない。
かと言って、嘘を言うわけにもいかない。
「俺の目的は、この辺境を改革することだよ。そのためには、人族と獣人が手を取り合わないといけない。もちろん、貴族や平民もね」
「何故だ? お主に何の得がある?」
「んー……あのね、俺はダラダラしたいのさ。でもね、自分だけがダラダラしてるのは嫌なんだよね。だったら、みんなでダラダラ……のんびり過ごせるようにしたいって思ってる」
「……つまり、自分のためにということか?」
「うん、そういうこと。俺のわがままってことだ……幻滅した?」
「いや、逆に納得がいった。綺麗事や御託を並べられるよりはずっと良い……申し遅れたが、俺の名前はパンサーという黒豹族の男だ。ひとまず、お主の探索に連れて行ってくれ」
「うん、わかった。俺のことはエルクで良いし敬語もいらないから。それじゃ、このメンバーで出かけるとしますか」
自己紹介と話し合いが済んだので、七人で森へと向かうのだった。
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