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ネコネ

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頭の天辺からはお耳がぴょこぴょこ、お尻からは長い尻尾が生えている。

セミロングの髪は金色に輝き、小柄で華奢な感じ。

そこには黒いメイド服を着た、可愛らしい猫耳少女がいた。

「あれ? その子は誰かな?」

「ふぇ!? わ、忘れられちゃった……グスッ」

その女の子は、今にも泣き出しそうである。
エルク君ピンチです!  男の子は女の子の泣き顔には弱いのである!

「わわっ!? タンマ!?」

「はいはい、エルク様。少し落ち着いてください。貴女はネコネという猫の獣人ですね?」

「は、はい!」

「ネコネ……あっ! デビルラビットを獲ってきた時に、俺に話しかけてきた女の子か!」

「えへへ、思い出してくれました」

俺の言葉に、女の子が笑顔で頷く。

「そりゃ、気づかないよ。言っちゃなんだけど、見違えたし」

「こ、ここの方に綺麗にしてもらいました!」

「ここの方……モーリスさん、どういうこと?」

「実は先日、この少女が領主の館に訪ねて参ったのです。そして、仕事が欲しいとお願いに来たのでございます」

「お、お兄さんが、仕事欲しかったらきなさいって……」

……うん、確かに言ったね。
別に嘘で言ったわけではないし、俺としては問題ない。
ただ、これが職権濫用になってはいけない。

「でも、モーリスさん的にも良かったの? 俺が言ったからとかだったら……」

「いえ、私にとっても……ともかく、私がきちんと面接をした上で採用いたしました。これからは仕事内容に関係なく、どの種族でも働けるということを示すためにも」

「そっか、なら良いんだ。それで、この子の仕事内容は?」

「エルク殿下さえ良ければ、お側に置いて頂けると幸いかと。この子は、そのために来たのですから」

その言葉を受けて、俺はネコネに近づく。
そして、以前と同じように目線を合わせる。

「ネコネ、俺のところで働きたい?」

「うん!  じゃなくて……はい! 働きたいですっ!」

「良い返事だ。いやー、働きたいなんてえらいね」

「えへへ……褒められちゃった」

その頭を思わず撫でてしまう。
すると、後ろから殺気を感じたので振り向くと……むすっとしたクレハがいた。

「ど、どうしたの? 雇うのはだめ?」

「だ、ダメですか……?」

「ちがっ……いいえ、構いませんよ」

クレハは腕を組んで複雑そうな表情で答えた。
なんだろ、ネコネというより俺をジト目で睨んでいます……こわい。

「そう? じゃあ、よろしくね。まあ、俺のことは好きに呼んで良いから」

「お、お兄さんって呼んでも……?」

そう言い、上目遣いで見てくる。
可愛い……エルク君に大きなダメージ! 
俺は思わす膝をつく。

「ぐはっ!?」 

「え、えっと……?」

「ふっ、やるね」

「ネコネ、このアホ王子は放っておいていいですよ」

振り返ると、凍った表情でクレハが見ていた。

「いや、それより……アホって言った!?」

「何か?」

「い、いえ! なんでもありません!」

「ふえっ? わ、わたしはどうしたら……」

とりあえずネコネが困っているので、冷静さを取り戻す。

「コホン……とりあえず、いいよお兄さんで」

「ほんとですか!?  わぁい~! お兄さん!」

そう言い、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。
うむ、可愛らしい……もちろん、純粋にだよ?
俺ってば末っ子だから、妹とか弟とか欲しかったんだよね。


その後、モーリスさんがネコネを連れて部屋を出て行く。
今日は仕事内容や実習訓練を受けて、明日以降から少しずつ働くらしい。

「やれやれ、びっくりしたよ。ほんと、女の子って見違えるよね」

「随分とデレデレしてましたが?」

「い、いやー別に……なんか、昔を思い出してさ。出会った頃のクレハは、あんな感じだったなって。いつもビクビクしてさ、俺の顔色を伺ってた気がする」

「そ、そんなことは……いえ、そうでしたね。自ら望んでついていきましたが……後になってこの人族は痛いことしないのとか、私に何をさせる気なんだろうって思ってました」

「はは……そうだよね。というわけで、デレデレしてたわけでないのです」

「ふふ、そういうことにしておきましょう」

ほっ、どうにか言い逃れができた。

さてさて、次は何をしようかなー。
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