18 / 46
水魔法の真価
しおりを挟む
モーリスさんの案内の元、都市の中を歩いていく。
すると、道行く人々にお礼を言われる。
「エルク様! 氷をありがとうございました!」
「お陰様で、久々によく寝れました!」
「うんうん、それなら良かったよ」
昨日は寝る前に、俺は大量の氷を作っておいた。
しかも魔力を込めたので、この暑さにも耐えられるように。
それを領主の館に来た有志の方々に配ってもらった。
やっぱり、睡眠も大事だからね。
「しかし、住民全員に行き届く氷の量でしたが……お身体は平気でございますか?」
「うん、まだまだ余裕かなー」
すると、クレハがモーリスさんの肩に触れる。
「モーリス殿、エルク様については考えても無駄です。こっちが疲れてしまいますから」
「ほほ、クレハ殿の仰るですな」
「ちょっと? 人を常識外れみたいに言わないでよ!」
「「………」」
すると、二人に『何言ってんだろこの人』という目で見られた……げせぬ。
そして、人通りか少なくなり……都市の端っこにくると匂いがしてきた。
「あちゃー……鼻にくるね。クレハ、平気?」
「え、ええ、どうにか。しかし、これは獣人の者には厳しいですね」
「はい、なので作業を行っているのは人族ですが……それはそれで不満が溜まっております。獣人は獣人で、自分たちばかりか危険な仕事をすることに不満を抱いております」
「あぁー、そういうことね」
職種と価値観の違いから、どうしても人の仕事は楽に見えたりすることがある。
人族は獣人は狩りだけでいいなと思い、獣人は人族は雑用ばかりで危険がなくていいと。
すると、鼻を抑えながらクレハが言う。
「ですが、実際問題我々には厳しいかと」
「そうなるよね。まあ、そのために来たんだよ」
「では、こちらが入り口になります」
そしてモーリスさんの案内の元、とある建物に入り階段を下りていく。
次第に匂いはキツくなるけど、俺も我慢しつつ進んでいく。
そして、階段を降りた先の扉を開けると……いわゆる長年使ってない公衆便所のような匂いが鼻を襲う。
広い空間の天井には管があり、そこから水や汚れが流れてきて、下水に流れていく感じか。
そんな中、人族がデッキブラシなどで作業をしていた。
「うっ……この中で働くのか」
「え、ええ、そうですね」
「……」
クレハに至っては無言で佇んでいる。
長くは保たないので、急いでやらなきゃ。
すると、俺達に気づいた責任者というバッチをつけた方がやってくる。
「こ、これはエルク殿下! こんなところに何を……」
「うん、視察を兼ねてきたんだ。やっぱり、この中での作業は辛い? 正直に言っていいからね」
「なんと、わざわざこんなところまで……はい、仰る通り辛いものがあります」
まあ、当たり前の話である。
こんな暑くて臭いところで作業なんかしたくない。
それでも、誰かがやらなきゃいけない大事な仕事だ。
「そりゃ、そうだよね。それで、一番の匂いの発生源はわかる?」
「そうですね……やはり、あそこしか」
「それじゃ、そこに案内してくれる?」
「……よろしいのですか?」
「うん、そのために来たんだから。モーリスさん、クレハとここで待機してて」
俺が振り返ると、放心していたクレハが目覚める。
どうやら、限界を超えたらしい。
「い、いえ! 私も!」
「ダメです。大丈夫、君がここにきてくれただけで助かったよ」
実際に、ここにいる人々はクレハを見て目を丸くしている。
俺はもちろんのこと、獣人が来たので驚いているのだろう。
後は、その辛さをクレハが同族に伝えればいい。
「クレハ殿、エルク殿下の仰る通りですよ」
「モーリス殿……はい。エルク様、お気をつけて」
「大丈夫、危険なことはしないから。んじゃ、よろしくね」
クレハをモーリスさんに任せたら、奥の方に行き下水が流れてる場所に着く。
その水は濁っており、目が痛くなるような異臭を放っていた。
本来なら奥に続くトンネルのような排出口を流れていくんだろうけど、それが完全に詰まって奥が見えない。
「うわぁ……酷いや」
「も、申し訳ありません! 作業をしようにも、中に入ったり近づくと倒れる者が続出しまして……」
「ううん、これはどうしようもないかな。むしろ、今までありがとうね」
「はっ? ……あ、ありがとうございます」
前世でもそうだけど、こういう方々がいるから当たり前の生活が出来ていた。
自堕落王子の時は気づけなかったけど、今の俺ならわかる。
……やっぱり、少しはちゃんとしないとだね。
「それじゃ、一度押し流す必要があるね。排水口近くに人が来ないように言ってくれる?」
「わ、わかりました! 皆の者! エルク殿下が何かしてくださると! 一度下がりなさい!」
皆が下がる中、俺は精神を集中する。
生半可な威力じゃ、周りに飛び散るだけで事態を悪化させるだけだ。
ここで必要なのは圧倒的火力、それでいて破壊しない……イメージはアレだ。
「まずはアクアウォール!」
下水から飛び散る汚れをこちらに来させないように水の壁を作る。
「そしたら……収束した水——アクアジェット!」
俺の掌から圧縮された水が排水溝に命中し……詰まった汚れごと押し出していく!
そして、次第に中の空洞が見えてくる。
「おおっ! これは……水魔法にこんな威力の魔法が!?」
「まだまだ! このまま出来る限り掃除しちゃうよ!」
そのまま高圧洗浄機のように排水溝周りも掃除していく。
すると、今まで詰まっていた汚水がトンネルを通過していった。
同時に、匂いも大分収まってきたかも。
「ふぅ……こんなもんかな」
「十分です! 後は我々でも出来るかと!」
「そっか。それじゃ、大変だけどよろしくね。働く環境は、これから良くしていくからさ」
「は、はい! ……こんな仕事を認めてくれる王族の方がいたなんて」
「そんなのは当たり前だよ。だって、これがないと人はちゃんとした生活を送れないんだから」
匂いだけならまだしも、これを放っておくと病気にもなりやすくなる。
おそらく、あと数年放っておいたら危なかったかもしれないね。
すると、道行く人々にお礼を言われる。
「エルク様! 氷をありがとうございました!」
「お陰様で、久々によく寝れました!」
「うんうん、それなら良かったよ」
昨日は寝る前に、俺は大量の氷を作っておいた。
しかも魔力を込めたので、この暑さにも耐えられるように。
それを領主の館に来た有志の方々に配ってもらった。
やっぱり、睡眠も大事だからね。
「しかし、住民全員に行き届く氷の量でしたが……お身体は平気でございますか?」
「うん、まだまだ余裕かなー」
すると、クレハがモーリスさんの肩に触れる。
「モーリス殿、エルク様については考えても無駄です。こっちが疲れてしまいますから」
「ほほ、クレハ殿の仰るですな」
「ちょっと? 人を常識外れみたいに言わないでよ!」
「「………」」
すると、二人に『何言ってんだろこの人』という目で見られた……げせぬ。
そして、人通りか少なくなり……都市の端っこにくると匂いがしてきた。
「あちゃー……鼻にくるね。クレハ、平気?」
「え、ええ、どうにか。しかし、これは獣人の者には厳しいですね」
「はい、なので作業を行っているのは人族ですが……それはそれで不満が溜まっております。獣人は獣人で、自分たちばかりか危険な仕事をすることに不満を抱いております」
「あぁー、そういうことね」
職種と価値観の違いから、どうしても人の仕事は楽に見えたりすることがある。
人族は獣人は狩りだけでいいなと思い、獣人は人族は雑用ばかりで危険がなくていいと。
すると、鼻を抑えながらクレハが言う。
「ですが、実際問題我々には厳しいかと」
「そうなるよね。まあ、そのために来たんだよ」
「では、こちらが入り口になります」
そしてモーリスさんの案内の元、とある建物に入り階段を下りていく。
次第に匂いはキツくなるけど、俺も我慢しつつ進んでいく。
そして、階段を降りた先の扉を開けると……いわゆる長年使ってない公衆便所のような匂いが鼻を襲う。
広い空間の天井には管があり、そこから水や汚れが流れてきて、下水に流れていく感じか。
そんな中、人族がデッキブラシなどで作業をしていた。
「うっ……この中で働くのか」
「え、ええ、そうですね」
「……」
クレハに至っては無言で佇んでいる。
長くは保たないので、急いでやらなきゃ。
すると、俺達に気づいた責任者というバッチをつけた方がやってくる。
「こ、これはエルク殿下! こんなところに何を……」
「うん、視察を兼ねてきたんだ。やっぱり、この中での作業は辛い? 正直に言っていいからね」
「なんと、わざわざこんなところまで……はい、仰る通り辛いものがあります」
まあ、当たり前の話である。
こんな暑くて臭いところで作業なんかしたくない。
それでも、誰かがやらなきゃいけない大事な仕事だ。
「そりゃ、そうだよね。それで、一番の匂いの発生源はわかる?」
「そうですね……やはり、あそこしか」
「それじゃ、そこに案内してくれる?」
「……よろしいのですか?」
「うん、そのために来たんだから。モーリスさん、クレハとここで待機してて」
俺が振り返ると、放心していたクレハが目覚める。
どうやら、限界を超えたらしい。
「い、いえ! 私も!」
「ダメです。大丈夫、君がここにきてくれただけで助かったよ」
実際に、ここにいる人々はクレハを見て目を丸くしている。
俺はもちろんのこと、獣人が来たので驚いているのだろう。
後は、その辛さをクレハが同族に伝えればいい。
「クレハ殿、エルク殿下の仰る通りですよ」
「モーリス殿……はい。エルク様、お気をつけて」
「大丈夫、危険なことはしないから。んじゃ、よろしくね」
クレハをモーリスさんに任せたら、奥の方に行き下水が流れてる場所に着く。
その水は濁っており、目が痛くなるような異臭を放っていた。
本来なら奥に続くトンネルのような排出口を流れていくんだろうけど、それが完全に詰まって奥が見えない。
「うわぁ……酷いや」
「も、申し訳ありません! 作業をしようにも、中に入ったり近づくと倒れる者が続出しまして……」
「ううん、これはどうしようもないかな。むしろ、今までありがとうね」
「はっ? ……あ、ありがとうございます」
前世でもそうだけど、こういう方々がいるから当たり前の生活が出来ていた。
自堕落王子の時は気づけなかったけど、今の俺ならわかる。
……やっぱり、少しはちゃんとしないとだね。
「それじゃ、一度押し流す必要があるね。排水口近くに人が来ないように言ってくれる?」
「わ、わかりました! 皆の者! エルク殿下が何かしてくださると! 一度下がりなさい!」
皆が下がる中、俺は精神を集中する。
生半可な威力じゃ、周りに飛び散るだけで事態を悪化させるだけだ。
ここで必要なのは圧倒的火力、それでいて破壊しない……イメージはアレだ。
「まずはアクアウォール!」
下水から飛び散る汚れをこちらに来させないように水の壁を作る。
「そしたら……収束した水——アクアジェット!」
俺の掌から圧縮された水が排水溝に命中し……詰まった汚れごと押し出していく!
そして、次第に中の空洞が見えてくる。
「おおっ! これは……水魔法にこんな威力の魔法が!?」
「まだまだ! このまま出来る限り掃除しちゃうよ!」
そのまま高圧洗浄機のように排水溝周りも掃除していく。
すると、今まで詰まっていた汚水がトンネルを通過していった。
同時に、匂いも大分収まってきたかも。
「ふぅ……こんなもんかな」
「十分です! 後は我々でも出来るかと!」
「そっか。それじゃ、大変だけどよろしくね。働く環境は、これから良くしていくからさ」
「は、はい! ……こんな仕事を認めてくれる王族の方がいたなんて」
「そんなのは当たり前だよ。だって、これがないと人はちゃんとした生活を送れないんだから」
匂いだけならまだしも、これを放っておくと病気にもなりやすくなる。
おそらく、あと数年放っておいたら危なかったかもしれないね。
282
お気に入りに追加
655
あなたにおすすめの小説
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています
ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら
目の前に神様がいて、
剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに!
魔法のチート能力をもらったものの、
いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、
魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ!
そんなピンチを救ってくれたのは
イケメン冒険者3人組。
その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに!
日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる