グーダラ王子の勘違い救国記~好き勝手にやっていたら世界を救っていたそうです~

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
上 下
13 / 46

仲直り?

しおりを挟む
 ……少しは元気になったかな?

 デビルラビットの処理をしながら、こっそりクレハの様子を見る。

 あの時、俺がクレハを傷つけてしまった。

 あんな風に言いたかったわけじゃない。

「どうしたのです?  そんなに見つめて……」

「えっ? あ、ああ、ごめんごめん……何でもないよ」

「変なエルク様ですね。それにしても、凄い魔法でした……盾といい、氷石といい」

「あはは、盾に関しては何も考えてなかったけどね。ただ、クレハを守らなきゃって」

 俺は母がいなく、父親や兄との関係性が薄い。
 自堕落王子ということで、自業自得だけど周りからは人が離れていった。
 そんな中、クレハはずっと側にいてお世話してくれたから。
 だから、俺にとっては大事な人だ。

「そ、そうですか……でも、懐かしい感覚でした。思い出します、私が貴方に助けて頂いた時のことを」

「ん? 何かしたっけ?」

「貴方は私の前に立ち、私を殴ろうとした人から守ってくれました。まだ小さくて戦いなんか出来ないのに。その後ずっと側にいて、優しさでもって私を一人の人間にしてくれました」

「別にあの時も何も考えちゃいなかったよ……あれ? 俺ってば成長してない?」

「ふふ、それで良いのです。貴方が変わらず、優しいままでいてくれたら」

 その優しい微笑に、俺の心音が跳ね上がる。

「と、ともかく! ……あのさ、さっき俺の言葉を無視して飛び出したよね?」

「そ、それは……すみませんでした」

「うんん、別に良いんだ。ただ、なんか焦っていたように見えたからさ」

「私はお役に立ちたかったのです。だから、自分一人でもやれると証明したかったのかと。それが、私が居ていい存在理由になると……」

「……そういうことか。ごめんね、俺が余計なことを言ったからだ」

 クレハは群れから捨てられたからか、自己肯定感が低いのかも。
 だから、誰かに必要とされたいのだろう。
 それを、俺のエゴで傷つけてしまった。
 誰かに必要とされたい気持ちは、前世の記憶が蘇った俺には痛いほどわかる。
 自分がここに居てもいいという、存在理由が欲しいのだ。

「いえ! エルク様は何も……私が弱いだけです」

「うんん、そんなことないよ。ちなみに、必要とか必要じゃないとか関係ないから。俺はクレハがいないと困るよ。だから、これからも側にいること……いいね?」

「……はい、これからもお側に」

「んじゃ、この話はお終い! チャチャっと済ませて帰ろう!」

「ですね。作業を済ませて、日が暮れる前に戻るとしましょう」

 経験上、これは言葉だけじゃだめだ。
 クレハが自分で気づき、気持ちの整理をつけないと。
 もちろん、お世話になったクレハのために俺も頑張って伝えていこう。
 ……ちょっと照れくさいけどね。
 その後、処理を済ませたデビルラビットを魔法で凍らせる。

「では、私が氷ごと手で押していきますね」

「いやいや、流石に大変だよ。それに、クレハの両手が塞がったら誰が俺を守るのさ?」

「もう、そんな堂々ということではないですよ。ですが、他に方法がありますか?」

「そんなの簡単だよ。まだ魔力に余裕はあるから……よっと」

 俺はデビルラビットの真下、更に通ってきた道に薄く氷の道を作る。
 こうすれば、後は氷の上を滑らせるだけでいい。

「何という魔力の無駄使い……」

「いや、だってこっちのが早いし。ほら、こうして押し出せば簡単に……あれ?」

 俺が軽く押した氷の塊……もとい、デビルラビットが凄い勢いで滑っていく。
 それは氷の道を滑り、あっという間に俺たちの視界から消えた。

「……エルク様」

「なんだい、クレハさんや」

「なんだいじゃありません! 何やってるんですか!?」

「わざとじゃないし!」

「もう早く追いかけないと! いきますよ!」

「うひぁ!?」

 そうして俺はクレハに抱き抱えられ、氷の塊を必死に追いかける。

 ……とりあえず、仲直りはできたからいっかな。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます

銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。 死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。 そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。 そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。 ※10万文字が超えそうなので、長編にしました。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...