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到着
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翌朝、凍らせたボアーズを大きな木の板に乗せ、それを片方の馬に引かせる。
そして村々を通過しつつ、十日ほどが過ぎ……道中で村で、ボアーズを引き渡すことにした。
理由は至極簡単で、道中の村は王都に近いので割と食料に困ってはいなかった。
しかし、辺境に近づくにつれ、徐々に雲行きが怪しくなってきた。
街道整備も進んでおらず、少しずつ寂れていく風景や村々が目に入った。
なので、この辺りで引き渡すことにしたというわけだ。
「おおっ! これを我々に!?」
「うん、食べきれないしみんなで食べちゃって」
「みなの者! 聞いたか!? エルク様が我々に食料をお渡ししてくれたぞ!」
「「「ウォォォォォォ!」」」
すると、住民たちの間から歓声が上がる。
その中には泣き出す者もいるので、結構切羽が詰まっていそうだ。
周りを見ると、痩せている子も多いので食料が足りてないのだろう。
「やっぱり、この辺りに来ると貧困の差が出てくるか」
「はっ……す、すみません! 別にお国を批判しているわけでは……!」
「うん、わかってから平気だよ。むしろ、謝るのはこちらだしね」
「な、なんと……自堕落王子という噂は嘘だったのですな」
……それは合ってるんですよねー。
ただちょっと、貧しい暮らしの辛さも思い出したから他人事とは思えない。
これは、色々と考える必要があるかな。
「はは……まあ、とにかく食べてください。そのうち、この辺りも良くなると思うので」
「それは……いえ、今は感謝して頂くといたします」
「うん、あんまり期待はしないでね」
その後、俺達は空き家の平屋を借り、その中で休息をとる。
夕飯は用意してくれるそうなので、それまではのんびりできそうだ。
「……はぁ」
「どうしたのですか?」
「いや、わかってるようでわかってなかったと思って」
辺境が貧しくなり、寂れてきたのは聞いていた。
でも実際に見ると、このままだとまずい気がする。
「それは私も感じました。ですが、我が国にも余裕があるわけではありません。北と西に対応しないといけませんから」
「うん、そうだね。父上は頑張ってるし、一部の人以外は頑張って国を良くしようとしてる」
「やはり暑さや単純な人口低下、それにより作物や魔獣の収穫量が減ったことが原因かと」
「そうだね。それにより魔物も増えてきたりして、悪循環してるって感じだ」
まず、暑さによって人々が体力を奪われた。
そして作物が育ちにくい→食料自給力か低下→体力や気力低下により活気や、魔物や魔獣と戦う力がなくなる→結果、ますます悪化する。
簡単だけど、こんな感じかな。
「どうすればいいのでしょう?」
「さあ、それは俺にはわからないよ。ただ……見て見ぬ振りはしたくないかな」
「ふふ、相変わらずですね。困ってる人を見ると放って置けないのは」
「はいはい、あまちゃんの偽善者ですよー」
「いいんですよ。私はその——甘さに救われたのですから」
「そっか……まあ、とりあえず辺境にいる領主と話してみるかな」
その後、用意された食事を取りながら村長の話を聞いた。
どうやら、ここから先は似たような感じらしい。
貧困もそうだけど、若い人達がいないのが一番の問題みたいだ。
◇
翌日の朝、村の人々に見送られながら辺境都市オルフェンへと向かう。
その後も道中の村々を通過するけど、何処も似たり寄ったりといったところだ。
全体的に貧しく、若者も少なく活気もない感じだった。
俺達は出来るだけ魔獣や魔物を倒して、食料を与えつつ進んでいく。
そして、王都を出てから二週間後……辺境都市オルフェンに到着する。
「つ、ついたァァァァ!」
「まだ着いてませんよ。門が見えただけですので」
「わかってるよ! でも、暑いし疲れた!」
いくら途中に村があるとはいえ、ずっと旅を続けるのはしんどい。
こっち方面は王都周辺より気温も高いし、いくら俺の魔法があるといっても限界がある。
これでは、みんなが元気をなくすわけだ。
そこから一時間くらいかけて、ようやく門に到着した。
見た目だけは中々立派な門で、門の前には衛兵らしき人達がいる。
「見慣れない格好……こんなところに旅人ですか?」
「馬鹿言うな! この格好はどう見ても貴族様だ! 部下が失礼いたしました!」
「ううん、平気だから頭をあげてね。その人にも叱らないであげて。えっと、領主の方というか責任者を呼んでくれる? エルクがきたって言えばわかるはずだから」
「エルク様……はっ! 少々お待ちくださいませ! 俺が行ってくるからお前はそこにいろ!」
若い兵士をおいて、上司のおじさんが門の中へと走っていく。
俺はその間に水魔法を使って、コップに冷たい水を入れる。
すると、兵士がそれを見て固まる。
「水……ゴクリ」
「よかったらどうぞ」
「えっ? ……オイラにくれるんですか?」
「うん、暑いから大変でしょ?」
今の昼間の気温は体感で、軽く三十度以上は間違いなくあるはず。
兵士さんは恐る恐る俺からコップを受け取り……口をつける。
「あ、ありがとうございます! っ~!? ……ゴクゴク……!」
目を見開いた兵士さんが、物凄い勢いで水を飲み干していった。
「プハァ! な、なんですか、この冷たい水は?」
「少し氷をイメージして作ったからね」
「氷……?」
「まあ、とにかくもう一杯いる?」
「は、はいっ!」
そして俺達も冷たい水を飲みながら待っていると……門の向こうから人が走ってくる。
片方は先ほどのおじさんで、もう一人は老執事のような男性だった。
ロマンスグレーで歳は五十歳くらい? 身長もあって背筋は伸びてて、ダンディなおじ様って感じ。
「エルク殿下、おまたせいたしました。国王陛下よりオルフェンを任されております、モーリスと申します。手紙により、来ることはわかっていたのですが……」
「モーリスさん、よろしく。ううん、こちらこそ早く来てごめんね」
「……話と違う気がいたしますな」
「どうかした?」
「いえ、何でもございません。とにかく、まずは領主の館に案内いたします」
その後、モーリスさんの後をついて都市の中に入る。
街の中は活気がなく、生気のない人々の視線が突き刺さる。
この顔を俺はよく知ってる……思い出した、前世の時の俺だ。
鏡を見ると、いつも生気のない顔をしていた気がする。
「皆、元気がありませんね」
「うん、これは思った以上だね。国から離れているから仕方がないとはいえ……それに、辺境を省みる余裕もなかっただろうね」
「そうですね……敵国との戦いや魔物達との戦いもありますから」
「あとは、実際に目にしてないから実感がないのかも」
かといって行きに二週間もかかる道を、父上が直に見るわけにいかない。
あの傲慢な貴族達が、こんなところに行くわけないし。
まともな貴族は国を動かすのに必死だし……うん、詰んでるね。
「なるほど、確かにそうかもしれないです」
「あとは情報伝達をしっかりしないと。それを防ぐには中継地点を確保しつつ、もっと早く移動できる方法と、それを持っていく優秀な人材を育てることかな」
「……いつの間に、そんな勉強を? ずっと授業はサボっていたのに」
「はは……これは勉強とは関係ないしね。発想というか、先人たちの知恵ってやつさ」
そんな会話をしていると、周りの平屋に比べて立派な建物に到着する。
二階建ての建物で、敷地面積も大きい……庭も広くて良さげだ。
「ここが領主の館でございます」
「モーリスさん、案内ありがと。それじゃ、領主の人に挨拶したいんだけど……」
「確か、領主はエルク殿下になると聞いておりますが……」
「「……はい?」」
その言葉に、俺とクレハは顔を見合わせるのだった。
そして村々を通過しつつ、十日ほどが過ぎ……道中で村で、ボアーズを引き渡すことにした。
理由は至極簡単で、道中の村は王都に近いので割と食料に困ってはいなかった。
しかし、辺境に近づくにつれ、徐々に雲行きが怪しくなってきた。
街道整備も進んでおらず、少しずつ寂れていく風景や村々が目に入った。
なので、この辺りで引き渡すことにしたというわけだ。
「おおっ! これを我々に!?」
「うん、食べきれないしみんなで食べちゃって」
「みなの者! 聞いたか!? エルク様が我々に食料をお渡ししてくれたぞ!」
「「「ウォォォォォォ!」」」
すると、住民たちの間から歓声が上がる。
その中には泣き出す者もいるので、結構切羽が詰まっていそうだ。
周りを見ると、痩せている子も多いので食料が足りてないのだろう。
「やっぱり、この辺りに来ると貧困の差が出てくるか」
「はっ……す、すみません! 別にお国を批判しているわけでは……!」
「うん、わかってから平気だよ。むしろ、謝るのはこちらだしね」
「な、なんと……自堕落王子という噂は嘘だったのですな」
……それは合ってるんですよねー。
ただちょっと、貧しい暮らしの辛さも思い出したから他人事とは思えない。
これは、色々と考える必要があるかな。
「はは……まあ、とにかく食べてください。そのうち、この辺りも良くなると思うので」
「それは……いえ、今は感謝して頂くといたします」
「うん、あんまり期待はしないでね」
その後、俺達は空き家の平屋を借り、その中で休息をとる。
夕飯は用意してくれるそうなので、それまではのんびりできそうだ。
「……はぁ」
「どうしたのですか?」
「いや、わかってるようでわかってなかったと思って」
辺境が貧しくなり、寂れてきたのは聞いていた。
でも実際に見ると、このままだとまずい気がする。
「それは私も感じました。ですが、我が国にも余裕があるわけではありません。北と西に対応しないといけませんから」
「うん、そうだね。父上は頑張ってるし、一部の人以外は頑張って国を良くしようとしてる」
「やはり暑さや単純な人口低下、それにより作物や魔獣の収穫量が減ったことが原因かと」
「そうだね。それにより魔物も増えてきたりして、悪循環してるって感じだ」
まず、暑さによって人々が体力を奪われた。
そして作物が育ちにくい→食料自給力か低下→体力や気力低下により活気や、魔物や魔獣と戦う力がなくなる→結果、ますます悪化する。
簡単だけど、こんな感じかな。
「どうすればいいのでしょう?」
「さあ、それは俺にはわからないよ。ただ……見て見ぬ振りはしたくないかな」
「ふふ、相変わらずですね。困ってる人を見ると放って置けないのは」
「はいはい、あまちゃんの偽善者ですよー」
「いいんですよ。私はその——甘さに救われたのですから」
「そっか……まあ、とりあえず辺境にいる領主と話してみるかな」
その後、用意された食事を取りながら村長の話を聞いた。
どうやら、ここから先は似たような感じらしい。
貧困もそうだけど、若い人達がいないのが一番の問題みたいだ。
◇
翌日の朝、村の人々に見送られながら辺境都市オルフェンへと向かう。
その後も道中の村々を通過するけど、何処も似たり寄ったりといったところだ。
全体的に貧しく、若者も少なく活気もない感じだった。
俺達は出来るだけ魔獣や魔物を倒して、食料を与えつつ進んでいく。
そして、王都を出てから二週間後……辺境都市オルフェンに到着する。
「つ、ついたァァァァ!」
「まだ着いてませんよ。門が見えただけですので」
「わかってるよ! でも、暑いし疲れた!」
いくら途中に村があるとはいえ、ずっと旅を続けるのはしんどい。
こっち方面は王都周辺より気温も高いし、いくら俺の魔法があるといっても限界がある。
これでは、みんなが元気をなくすわけだ。
そこから一時間くらいかけて、ようやく門に到着した。
見た目だけは中々立派な門で、門の前には衛兵らしき人達がいる。
「見慣れない格好……こんなところに旅人ですか?」
「馬鹿言うな! この格好はどう見ても貴族様だ! 部下が失礼いたしました!」
「ううん、平気だから頭をあげてね。その人にも叱らないであげて。えっと、領主の方というか責任者を呼んでくれる? エルクがきたって言えばわかるはずだから」
「エルク様……はっ! 少々お待ちくださいませ! 俺が行ってくるからお前はそこにいろ!」
若い兵士をおいて、上司のおじさんが門の中へと走っていく。
俺はその間に水魔法を使って、コップに冷たい水を入れる。
すると、兵士がそれを見て固まる。
「水……ゴクリ」
「よかったらどうぞ」
「えっ? ……オイラにくれるんですか?」
「うん、暑いから大変でしょ?」
今の昼間の気温は体感で、軽く三十度以上は間違いなくあるはず。
兵士さんは恐る恐る俺からコップを受け取り……口をつける。
「あ、ありがとうございます! っ~!? ……ゴクゴク……!」
目を見開いた兵士さんが、物凄い勢いで水を飲み干していった。
「プハァ! な、なんですか、この冷たい水は?」
「少し氷をイメージして作ったからね」
「氷……?」
「まあ、とにかくもう一杯いる?」
「は、はいっ!」
そして俺達も冷たい水を飲みながら待っていると……門の向こうから人が走ってくる。
片方は先ほどのおじさんで、もう一人は老執事のような男性だった。
ロマンスグレーで歳は五十歳くらい? 身長もあって背筋は伸びてて、ダンディなおじ様って感じ。
「エルク殿下、おまたせいたしました。国王陛下よりオルフェンを任されております、モーリスと申します。手紙により、来ることはわかっていたのですが……」
「モーリスさん、よろしく。ううん、こちらこそ早く来てごめんね」
「……話と違う気がいたしますな」
「どうかした?」
「いえ、何でもございません。とにかく、まずは領主の館に案内いたします」
その後、モーリスさんの後をついて都市の中に入る。
街の中は活気がなく、生気のない人々の視線が突き刺さる。
この顔を俺はよく知ってる……思い出した、前世の時の俺だ。
鏡を見ると、いつも生気のない顔をしていた気がする。
「皆、元気がありませんね」
「うん、これは思った以上だね。国から離れているから仕方がないとはいえ……それに、辺境を省みる余裕もなかっただろうね」
「そうですね……敵国との戦いや魔物達との戦いもありますから」
「あとは、実際に目にしてないから実感がないのかも」
かといって行きに二週間もかかる道を、父上が直に見るわけにいかない。
あの傲慢な貴族達が、こんなところに行くわけないし。
まともな貴族は国を動かすのに必死だし……うん、詰んでるね。
「なるほど、確かにそうかもしれないです」
「あとは情報伝達をしっかりしないと。それを防ぐには中継地点を確保しつつ、もっと早く移動できる方法と、それを持っていく優秀な人材を育てることかな」
「……いつの間に、そんな勉強を? ずっと授業はサボっていたのに」
「はは……これは勉強とは関係ないしね。発想というか、先人たちの知恵ってやつさ」
そんな会話をしていると、周りの平屋に比べて立派な建物に到着する。
二階建ての建物で、敷地面積も大きい……庭も広くて良さげだ。
「ここが領主の館でございます」
「モーリスさん、案内ありがと。それじゃ、領主の人に挨拶したいんだけど……」
「確か、領主はエルク殿下になると聞いておりますが……」
「「……はい?」」
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