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『まて』をやめました 43
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「姉様、終わった?」
サインをもらったところで、いいと勝手に判断をしたのかジェイクが入ってくる。
そのあとには、別室に案内されたはずのレティシア様も。
ジェイクは私の横に、レティシア様は一人掛けの椅子に座り落ち着いたところで私の手にある書類を目にする。
「サインを、したのね?」
そうエドワード様に声をかける。
それに苦渋の顔で頷いたエドワード様。その様子を目に映して、私はこれからの事を思う。
私室で考えた策は、レティシア様も知らない。
命の恩人で敬愛する女神さまを騙すのは良くないけど、このくらいは許されるよね?
ほら、作戦を成功させるために「敵を欺く前に、まず味方から」っていうよね?
あれ?これは違うのかな?
しんみりとしているが、どこか仕方がないと思っているレティシア様。
「クレア、これの保管をお願いね。」
そう言って渡されたクレアは心得たと、書類をトレーに乗せてサロンを出ていった。
ジェイクはそれに不満そうに、入れなおされたお茶を手に取る。
目の前のエドワード様とレティシア様は、えっ?と飲み込めないようだ。
恐らくは、すぐにでも書類の提出をジェイクに頼むと思っていたのだろう。
「エドワード様、私は来月からハイドランジア国に暫く行くことになります。」
「えっ?」
「その間、我が家の金庫で保管管理をしておきます。」
そう言ってにっこりと微笑む。
エドワード様だけでなく、レティシア様までも驚き言葉なくこちらの次を待っている。
綺麗でそっくりなふたりの似揃った表情が嬉しくて、私は緩む口許を隠すため入れられたお茶を飲む。
エドワード様とたくさん話したのと、何度も泣いたことで体が水分を求めているのだ。
ああ、レティシア様がいらしているだけあってとってもいいお茶を使ってる。
香りがよく爽やかでいい。
落ち着く。
エドワード様はとっても驚いているけど、うふふっ、10年の償いがこれで終わると思わないでよね?
「貴方も宰相補佐として政務に関わっていらっしゃるのでしたら、お母様の母国ハイドランジア国から何度も、お父様と家族を大使に任命するようにと催促が来ていましたのをご存知でしょう?
今までは私の我儘で国外に行きたくないと言っていたので、先延ばしにしていたのですが、この度私の記憶がなくなって寧ろ多くを見て学びたいと思ったのでその手配を取ったのです。」
私の説明に、相槌も頷くこともできずに、いきなりの情報に口を半開きになり何も告げなくなっていた。
「もともと姉様が行かないと言って、保留にしていたから姉様が行くと言えばすぐにでも行けるように何年も用意されていたんだ。
ハイドランジア国王のお爺様も、もうご高齢だからね。いっそのこと家族みんなで移住しないかと言われているんだよね。」
呆然としているエドワード様の様子に気をよくしたジェイクが余計なことまで言う。
確かにハイドランジア国にいる国王は、お爺様で高齢だけどいまだに矍鑠とした人だったはず。
「そんな!では、クラウディアに挽回をする機会が・・・」
「ですので、エドワード様──────」
恐らくエドワード様は、サインをした後で私を振り向かせる努力をする決意をしたと思われる。でも、その思惑が外れた。
だって、私が国外に行ってしまえばご自慢の私が大好きな顔を使って誑し込めないものね。
そんなことは、御見通しだ!
「私とたくさんお手紙のやり取りをしましょうね。」
始めからやり直しましょう。
そう告げる。
にっこりと笑うと、呆然としていたエドワード様の顔が目をぱちくりとして驚きのものに変わる。
うふふっ、今日はたくさんの表情を見れた楽しいなぁ。
暫くは見れないのだから、堪能出来てよかった。
サインはもらったけど、提出するなんて一言もいっていませんからっ!!!
ねっ、婚約者様。
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