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『まて』をやめました 13

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聖騎士団
聖女様御存命の期間だけ存在する騎士団。
聖女様の身の回りの警護を主とするが、一部のものは侍女まがいのものもおり身の回りの世話も進んでしている。聖女の命ならば、王室、神殿とも剣を交わすこともある、絶対主君聖女の為だけの集団。人数ははっきりとはしていないが一個騎士団と同じと言われている。団員でなくとも志だけならば、聖騎士の様に身を挺して聖女を守る騎士は多数いる。さらに聖騎士団の7割が女性だ。
団員は、基本既存の騎士たちから選ばれるが選ぶのは聖女の意思のみ。そこに忖度は一切ない。
性別身分なく、聖女が傍に置きたいと決め、命を下せば本人の意思に関係なく聖騎士になれる。
聖女が望むならば、国王すらも聖騎士として扱われる。時として、孤児院の慰問の際に見出した貧相で後ろ盾のない孤児が聖騎士団長になった過去もあった。
そして、聖騎士になった騎士たちも身分はなくなる。そこには聖女の騎士としての身分のみ。
貴族だろうが平民だろうが孤児だろうが、聖騎士となったものは聖女第一主義として、どの身分の者に対しても対等の立場、時としてそれ以上の権力を持つことを許される。
命じた内容にもよるが、聖女様を守るにふさわしい位を不文律で与えられている。

男爵令嬢と侮るなかれ。足元を掬われるどころか、取り返しのつかない痛い目に合う。
今回だって、そうだ。

外交にまで係わる案件として、聖女様が王妃様の願いで命を出している。つまりは国家を背負った責を負うにふさわしい位を今日は持っていることになる。

国王代理、それに準ずるくらいの・・・

中堅のパイル伯爵家など足元にも及ばない。

「それがなんなのよ!!!」

オ~!なんてこったパンナコッタ。
記憶を無くして常識だと学びなおしたばかりの私でも理解したことだというのに、サビーナ様の頭は理解していないらしい。
おっそろし~。

「聖騎士ってなによ。騎士といっても男爵は男爵でしょ。
私は伯爵令嬢なのよっ!」

嘘でしょ?
聖騎士を知らない?
驚きすぎて、思わずお母様の方にいる夫人を凝視してしまった。
その夫人というと、こちらは理解しているらしく、離れてみてもわかるほど蒼白な顔でガタガタと震えあがっていた。
ということは、このサビーナ様おバカちゃんの勉強不足ということかな?

うん、おバカちゃんサビーナ様ってば、常識をきちんと聞かないから。
って、本音のルビが表に出ちゃった。

「わたくしは聖女レティシア様の命によりここに参加しています。クラウディア様を守るようにとの命です。
クラウディア様を害そうとするのをわたくしは、見ておりましたわ。
貴女がカップに包みの中身を入れるのを見ております。
わたくしだけでないです。其処此処に配置されています、護衛たちも見ていたようですよ。
大人しく自白されたほうがいいのではないでしょか?」

言葉は丁寧だが、声には一切の情も温度もない。
サビーナ様を掴む手に一層力が入ったのか、サビーナ様の顔が歪む。

シラをきるというか、ごまかそうとするというか、言い逃れをしようとするというか、権力を使って逃げられると思っているというか・・・
どうしてそんな考えができるのか?

「煩いわねっ!
これはレティシア様の為にやってるのよ!
殿下を誘惑しているこの悪女を成敗しないと、いけないんだから!
エドワード様をこの女から解放しないといけないんだから!
この女がみんな悪いのよ!!!」

やはりそうか・・・

レティシア様も危惧していた。
レティシア様とヴィクター殿下の不仲の原因と言われていたクラウディア以前の私の存在。
勿論二人の間には何もないし、ヴィクター殿下がただ単にヘタレだったというだけ。今では誤解も解けて、みているこっちが見悶えるほど甘酸っぱい関係を育てている。
だがそんなことを知るものはほとんどいない。
クラウディアが倒れて、ヴィクター殿下の周りをウロチョロしなくなったから、レティシア様との仲が深まったと思っているものがほとんど。
つまりはクラウディアさえいなければ二人の仲は良好になる。
そう勘違いした狂信派が再度、クラウディアを害そうとするのでは?とレティシア様は心を痛めていた。

サビーナ様の独断かパイル伯爵家の総意かはしらない。
他国の王女を母に持つ、外交に長けた国王陛下から一目置かれたザリエル伯爵の令嬢に危害を加えたのだ、ここまで大きくなっては事は簡単に片付けないだろう。

大きな声で叫ぶサビーナ様を押さえつけるように拘束するミリアム様。
ここから先は、騎士団の方で取り調べられるだろう。
夫人の方も大人しく他の騎士に連れられている。
その様子を目の端に映しながら、これで終わったとホッと息をついた。

ただ気になるのは、こんな穴だらけの計画で多くの人の前で毒を盛るなんていくらサビーナ様おバカちゃんでも考えなしにするだろうか?
よくわからないが、一般的にただの令嬢が毒なんてどうやって手に入れたのか?
調べて行けば、もっと詳しくわかるだろうけど・・・

チリッ!

突然だった、どこからともなく焼けるような鋭い視線を感じた。
それと同じくらい後にキラリと光るものが見えた。


その瞬間に、私も背後のクレアも臨戦に入った。
構えた時、しかし殺気との出どころを特定できない内にそれは起こった。

「お前さえいなければっ!」

その人の顔は知っていた。
お母様から、気を付けないといけない人なのよ言われて家名と名前、姿絵を見て特徴を教わった。
挨拶をしたときも、穏やかでゆったりとした優雅な人だと思った。
年は少し上だという。
来月には結婚するのだという。
幸せなのだと言っていた。

そんな幸せだと言っていた人、バロン公爵令嬢シンディー様。





の、お付のメイド。

公爵家の紋が襟に刺繍されているお仕着せを着て、シンディー様に付き従っていた。
影の様に存在感を消していたが、クレア曰くあちらも護衛メイドの様だとのこと。
その時はただ、フ~ンとしか聞いていなかったがその護衛メイドが手に鋭く光る刃物を持ち、振りかぶっている。
いつの間に近くに来ていたのか、クレアとは反対の背後から急に殺気を醸して襲ってきた。

「キャーッ!」

突然の刃物を持ち出した人物が現れたのだ、貴婦人令嬢たちは青ざめ悲鳴を上げて逃げようとする。
近くに迫るキラリと光る刃が、周りがスローに見える。
座る私に迫る白刃。


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