もう一度やりなおせるのなら

かみい

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もう一度やりなおせるのなら、わたくしは・・・

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思い付き発進のため、でき次第更新となりますが
皆さんの暇つぶしによろしくお願いします。











整然と並んだ建物、その中にある緑豊かな街路樹や民が憩い集う公園広場。この国が豊かである象徴は随所にある。
太陽の光を弾いて輝く屋根瓦は、カラフルで白い壁が映えひび割れや欠けた所は見受けない。
建物が並ぶ一角には、間にテントを張りバザールが開かれる。バザールには大都市らしく、各地からたくさんの食べ物が集まる。食べ物だけじゃなく日常品も衣類も、宝飾品だってこの豊かな国で手に入らないものなどない。
この国には、異国のようなスラム街などない。
多種多様な職も多く、孤児や浮浪者を見つけたものは保護施設に連れていき子供は保護して教育を施し、健康な大人は職の斡旋、病人は入院施設で治療療養させる。異国の人々からみたら、この国は理想郷と勘違いをさせるだろう。
街の見目も美しく、旅人たちはこの国が豊かであると広めてくれる。
世界で一番、笑顔と幸せに溢れる豊かな国。
神に愛された国。
神に愛された聖王妃が選んだ聖王が治める国。


─────だった。



美しい町並みは、土埃をもうもうと立てて進み来る一団によって破壊され、豊かな物資は強奪されていた。
町の住民には、避難の指示をだし誰も残っていないだろうから、人的被害はないと思いたいが何代もの王の時代を得て整われた町並みが壊される様は見ていて胸がいたい。

そして、役割を果たせなかったことが辛く申し訳ない。

手を置いていたバルコニーの手すりを、思わず強く握りしめる。

既婚者にも関わらず結い上げす、背中に流したままの薄茶の髪には、神の花を模したティアラが輝く。ティアラに劣らぬ輝きの金茶色の瞳は、今は憂いに彩られている。
無意識に指が鎖骨の下をなぞる。そこには白い肌に浮かぶ神の花の痣。
不安に心が揺れる時、いつもそこに触れる。触れると神と繋がっているような気がするから・・・
今、この時決断を迫られていた。
問うように痣に触れて長い睫毛を伏せ、暫し瞳を閉じる。
時間は数秒。
そして決意したように開いた瞳には強い光を浮かべ、町を見下ろしていたバルコニーから室内へ戻った。

室内は、広々とした大理石と金を主体とした豪華で重厚な飾りで彩られた王座の間。
数段高い階段で上がった先には存在感ある王の座する椅子と離れたところに置かれた優美な曲線を描く椅子。
そのどちらも背もたれから手すり、脚に至るまで繊細な細工をされ、さらに金をはり宝石を嵌め込みクッションには暖かな赤い天鵞絨が張られている。
一級の職人による技が随所にみられる、正しく豊かなこの国の王と王妃に相応しい権力の象徴の椅子。
その座り心地は、さぞかし・・・

その荘厳な王座に深く腰掛け、強く肘掛けを握りしめている男。
銀の髪、紺碧の瞳。年は20半ばの線は細いが精悍な男性。

「アンドレア、貴様のせいだ!」

王座に座る男は、憎々しげに顔を歪め睨み付けながらバルコニーから戻ったばかりのアンドレアに向かって叫ぶ。
男の声に反応して、室内に控える騎士たちが殺気立つ。
それをアンドレアは、片手をあげるだけで制する。

「ローレンス兄上!なにをいっているんですか!?
アンドレア様は、何一つ悪く」

「いいえ、リオン様。
どうやら、わたくしが悪かったようですわ。」

騎士たちの中にいる年若い青年、王座にいるローレンスの5才下の弟リオンが怒りで噛みつくように反論するが、それを遮るようにアンドレアは肯定する。
柔らかく優しい声で、感情のない微笑みさえも浮かべて。

「やはり、王に在らずものをそこに座らせたのが間違えのようね。」

「「「っ!!!」」」

「なにを、言うか貴様っ!」

アンドレアの慈愛滲む優しい声から発された言葉は、室内にいるすべてのものたちを驚かせるものだった。

ただ一人、王座にいるものが声をあげる。

「わたしは神に選ばれた王だ!
それは貴様が一番知っていよう。
聖王女たる貴様が私に触れ光が差した。それが何よりも証拠だ!」

「いいえ、違います!
貴方は王に選ばれましたが、未だに王に在らず。」

王座の間に入ってから、ゆったりとした歩みで王座に向かうアンドレアの視線は一点、ただ一人を見つめている。
グレーに近い銀髪も、晴れ渡る夏の空のような紺碧の瞳も初めて会った時と同じなのに、触れると柔らかった銀髪は、何年も触れていないが男らしく短く刈られて堅そうだし、何よりもその瞳が・・・
敵を見るような嫌悪の滲む視線を感じたのはいつのころだったのだろう。
それでも、いつかは───神から祝福された夫婦になるはずと思っていた。
だが、7歳で会って気が付けば多感な少女時代にはローレンスには幾人もの恋人がいた。それでも、それでもと信じて結婚式を迎えた・・・だが。

出会いは7歳の時、今のアンドレアは22歳になった。
15年の年月が流れ、その数少ない思い出が脳裏を掠める。

─────本当にいいのか?

どこからともなく聞こえる声。

それに是と胸中で答えて、止めない歩みのまま段を上る。
断罪の場へ。
荘厳で大きな王座。そこに座るは、アンドレアが7歳で選んだ王。
だが、彼をこのまま王にしておくわけにはいかない。
なぜなら、この城にはもう彼の命令を聞くものはいない。
王の幼馴染で片腕だった宰相も、信頼している王の身を守る騎士も、王の癒しとなっていた元男爵令嬢の愛妾も誰一人、もうこの城にはいない。
いるのはアンドレアに忠誠を誓い、その身が亡びるまで守ると神に宣誓を上げた聖王妃の騎士たちと王弟リオンだけ。彼らは、アンドレアの命令で城に働く下々のものまで安全に避難させる任務にあたっていた。そのまま、避難しておくこともできただろうに態々、危険を冒してまでこの場に帰ってきた忠義者。
先にあげた宰相たちなど、クーデターが起きると我先に逃げ出し寝返った。いや、端から裏切り者だったのかもしれない。城に進行する一団を先頭で率いているのは、あの宰相と若くしてその地位についた騎士団長だった。
この先このクーデターを抑えても、ここまで求心力を失っているものを王と認めるわけにはいかない。

そして、それを選んだわたくしも・・・

カツンッ

最後の階段を登り切れば、そこは王座にしがみつくように座るローレンスただ一人。
まるで追い詰められた獣だ。怯えを見せないよう威嚇するかのように強く睨んでいる。

「・・・わっ、私が王だ!」

悲鳴のように叫ぶが、そこには賛同するものは誰一人いない。
哀れな・・・
スッと、アンドレアはローレンスに顔を近づけてその耳に囁く。

「わたくしと、初夜の契りをせず真に結ばれていない貴方は、・・・王に非ず。」

一語一語、ゆっくりと耳に言葉を注ぎ込む。こんな顔を近くに寄せたのは婚儀の誓いの口づけ以来。
囁かれた内容に目を見開き固まるローレンスは、次には理解したのか男性なのに女性のように白い肌を乙女のようにパッと朱色に染めた。

「貴方は神に選ばれた王の儀式をしただけの男。真実にわたくしとのをしていない貴方など、いまだ王子となんら変わらないわ」

今度は周りにも聞こえるような、はっきりとした声で告げる。
近づけた顔を離して、座るローレンスを見下ろす。その時、顔を見つめた時に口の端が自然に上がってしまった。それを嘲笑と捉えたローレンスは瞬間、あまりなアンドレアの言葉に羞恥もあってカッとなり手を振りかざした。

ローレンスは、腹立だしいことがあっても暴力に出る男ではなかった。
幼少より、身の回りを世話する侍従や仕事の補佐をする側近には勿論、城で働くもの全てに気を配り声をかけたりする優しい王だ。

ただ一人、アンドレアに対してを除いては・・・

それでも手を出すことなどなかった。
その証拠に振り上げた手を下ろすとき、我に返ったのか驚いた表情を浮かべた。
しかし、気がついても遅い。
勢い良く上がった手は、我に返っても振り下ろした後、止めることが出来ずそのままの勢いで振り下ろされた。

バンッ!

「っく!」

振り下ろされた手は、アンドレアに触れることはなかった。
いつの間にかアンドレアの後ろに控えていた、守護聖騎士の一人、白の騎士レナードがローレンスの手を掴み阻止したのだ。白い鎧に身を包み、漆黒の髪は長く白い玉飾りのついた飾りひもで高い位置で結われている。

「くっ!離せ、っ。」

アンドレアの幼少より守護騎士として侍り守り食事と寝る外は鍛練をかかさぬ騎士の力は、嗜み程度しか体を鍛えたことのないローレンスでは到底ほどけない。
必死に捕まれた腕を振りほどこうと身を捩るがビクともしない。逆に掴む強さが増し、骨が折れるのではないかというほとギリギリと握り込まれる。
掴んでいるレナードは、恐ろしい程の無の表情で怒気を放っていた。

「・・・・・・」

アンドレアは、それを感情の籠らない冷ややかな表情でみつめていた。
決してローレンスを嘲笑ったのではない、寧ろ自分自身を嗤った。
情けないことこの上ないが、愛されていなかったと自覚すると15年という年月、ひたすら一途に愛を捧げたこと我ながら哀れに思った。
顔を合わせた7才の一目惚れ。ローレンスの濃紺の瞳の中に星のような煌めきを見た瞬間、身体中の血が沸騰したように熱くなった。
恋をしたと自覚した瞬間だった。
そしてその瞬間、神から祝福の光が降り注いだ。
伝承にあるような、輝く七色の奇跡の光。
彼と私は結ばれる、神から王と王妃になる運命の二人なのだと喜んだ。
幼い子供の何も知らない子供の頃の話。

「レナード、その座に相応しくないこの者を降ろしなさい。」

冷ややかな視線を王であったものに向けながらアンドレアは、ローレンスをつかんだままのレナードに命を出す。
レナードは器用に片手でローレンスを抑えたまま片手を胸に当て、礼をしてそれまでよりさらに力を込めてローレンスを引きずるように段を降りる。

「離せっ!私こそが王だ。あの椅子は私のものだ。痛っ、やめろっ!」

必死に抵抗するが腕一つ振りほどけないローレンスに為す術などなく、受け身をとることなく階段の下に降ろされ、さらにもう一人の守護騎士の手によって堅い床に押さえつけられた。

「ふっ、このような状況で王だとは、よく言ったものですね。その気概だけは褒めてあげましょう。」

「なっ?!・・・」

ローレンスは目を見張った。
押さえつけられて、首を持ち上げて王座に顔を向ければ今まで見たことにない侮蔑の籠った瞳で、しかし見惚れるような艶然とした顔を向けられていた。
ローレンスはアンドレアと出会ったあの運命の日から今日まで、どんなにひどい扱いをしてもその瞳には親愛の温かみがあった。それは消えることはないと思っていた。何故なら神の定めた夫婦となるよう運命付けられていたから。国の未来の為には、アンドレアと婚姻するしかないから。
それに、知っていたから。
アンドレアは、ローレンスに恋慕っている。それも、かなり深く。
実際にローレンスがいない者のように無視しようが、恋人を作ろうが、アンドレアから見放されることはなかった。こちらに向ける瞳には、熱い恋情が見てとれた。
だから、慢心していた。
だが、今この時、寄りにもよって今になってアンドレアはローレンスを見放したのだ。

「俺が王でなく誰がなるというのだっ!
神が認めているのは俺だけだ」

「奢るのも大概になさい!」

叫ぶローレンスの声を遮るように、アンドレアが凛とした良く通る声を響かした。

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