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第一章 転生物語においてフラグは折るものです
私はモブです。彼は───です
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<ルーカス視点>
僕の前に少し体を硬くして馬上で座っている女の子。
いつものふわふわとしている光の加減で明るくも落ち着いても見える茶色の髪は、乗馬の為にサイドに流すように纏められている。それでいつもよりも大人っぽく見える。髪型一つで、違って見えるなんて、女の子の不思議だ。
それにしても顔もが強張っていて、初めての乗馬に緊張していると思いたいけど、無理かな?
姿こそは、しっかりと背筋を伸ばして座って愛馬のサムの歩く揺れに身を任せている。
「クリス、このサムはとても穏やかな馬なんだ。
そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
そう声をかけると、まだ少し白くなっている顔をこちらに見上げてぎこちなく微笑んだ。
その瞳がゆらりと揺れる。かなり、目元に力を入れている。気を抜けばその瞳から零れ落ちるものがあることは、容易に想像できる。
厩舎の前での出来事が、大いに原因だとはわかっているがそれは口にすることはしたくない。
今回のこのことは、僕にとってはとても喜ばしい事だから。
───兄上を初めて出し抜いた。
「ルーカス様ごめんなさい。わたくしが我が儘を言ったから・・・」
そう言いながら既に潤んでいた瞳が、更に膜が濃くなった気がする。
兄上は、クリスが僕と一緒に乗ることを望んだことで少し拗ねている。拗ねている?いや、あれは拗ねているなんてかわいらしいものじゃない。
じゃあ、なにかと言われても言いようがない。
あの状態はいうなれば、初めてのクリスからの拒否を自分の中で処理しきれず醜態を晒す前に逃げた───が、一番近いかもしれない。
グイっと、華麗なフリルの付いたブラウスの袖口で目元を拭う。
ああ、そんなに乱暴に拭ったら赤くなるだろうに・・・
でもそれを指摘するのは、クリスを傷つけるんだろうな。この黙っていれば大人しいように見える女の子は、意外や意外にとても負けん気が強く矜持が高い。
貴族の令嬢が持つ、無駄に高い矜持でない。
自分が口に出したことは成し遂げようとする、矜持だ。
クリスは聞けば教えてくれるが、様々ことをしている。
新しい産業の開発。作物の改良。魔術の新たな活用法まで、どれも斬新で素晴らしいアイディアから生まれたのだ。それを全て、成し遂げている。
途中で投げ出したりしない、さらにこの領民の為にそのアイディアを広めている。
優しく強いクリスの涙を指摘すればおそらく彼女は恥じるだろう。
だから、何も言わない。
でも、あとで目元を冷やすくらいはしてほしいと思う。
そのクリスは、前を向いている。
前を、ずっと先を行く背中を切なげに見つめている。その姿に僕の胸が今度は、切なくなる。
いつもだったら直ぐ横でついて話しかけただろうに、今は3馬身くらい先を行っている兄上。
まるで早く目的地に着かんとしているみたいだ。
出立してから、一度も振り返っていない。
そんなに見たくないかねぇ。自分以外の男と一緒にいるクリスを・・・
「気にしなくていいよ。兄上が先って別に決まり事もないし、クリスが指摘しないと兄上も気がつかないと思うよ」
嘘だ。
決まりはないけど、兄上はクリスに関しては譲らない。
他のことについては、僕を優先してくれることもある優しい兄上だけど事、この可愛らしいクリスティーナに関しては、僕が先んずることを許してくれない。
自国の人間の前では、決して見せたことのない外向きの微笑ではない、砂糖を溶かし込んだ笑顔をクリスには見せている。その微笑みは、今まで誰も見たことがない。言葉よりも何よりも、その微笑みは雄弁に語っている。
───兄上は、クリスに恋をしている。
本人の口から、クリスへの好意は何も聞いたことはない。だけど見ればわかる。
だからクリスが指摘したことは、それは本人が意図的にしていることなのだ。
だが、さすがにそれをクリスに言われるのは、ばつが悪かったのだろうな。
「それに、僕としてはクリスが指名してくれ嬉しかったよ。」
あえて明るく言うと、きょとんとした顔で振り返るクリス。
かわいらしい顔を無防備に向けてくれるが、僕が言う意味をちっとも理解していないようだ。
うん、僕だって・・・クリスのことは好きだ。
これが恋かどうかは、まだそこまでは分からないがこの好きという感情は大切に育てていきたいと思える温かな感情だ。
兄上がクリスのことが好きだと気がついて、クリスを観察していたらいつの間にか好きになっていた。
これが兄のものを欲しがる子供のような感情から来ているのか知らないが、クリスが好きだと言う気持ちに嘘偽りはない。
だって、クリスに触れられても嫌悪感は湧かないから。
ぼくらの国フォルトゥーナは、様々な種族が暮らす国だ。獣人族、エルフ族、魔人族、人族、そして龍人族。
エルフ族と龍人族は、番との繋がりが強い種族だ。獣人族も一部を除いて番への思いは強い。だからだろうか、異性から触れられると嫌悪感を抱くこともある。
番を大切にする種族ほど、触れられる異性は少ない。
勿論、触れることができる異性は番以外にもいるが絶対的に少ない。
そして、その少ない異性が僕らにとっては、クリスティーナだった。
僕らの種族が触れることができる異性とは、相性がいいと言うことだ。僕自身、その相手に好意を持っているということでもある。
だから兄上は、僕が少なくともクリスに好意を寄せていることに気がついているだろう。
僕がクリスに思いを告げる時に最大の障害になるのは、兄上だろう。
確かに兄上のほうが先に好きになったみたいだけど、好きになってもらうのに先も後もないと思うから僕も負けるつもりなんてない。
「できたら、僕と一緒のときは他の男のことは考えてほしくないな」
クリスに意識してほしくて、いつもとは違う声音を使って耳元で囁けば、白かったクリスの顔は真っ赤に染まった。
もうっと頬を染めたまま微笑むクリスは。本当にかわいいな。
クリスの屈託ない笑顔は僕らの癒しだった。
大国の第一王子と第二王子なんて媚を摺り寄せてくる輩で回りは溢れていた。
高位貴族は自分の娘を嫌らしい顔で勧めてきて、年頃の令嬢か誰かの足を引っ張るような話ばかり。
嫌気が差していたところに、母上から隣国の伯母上のところに行くと言われた。
何でも伯母上はお体が弱く、隣国の王都でなくフォルトゥーナに近い田舎の領地で過ごしているらしい。
子供が2人いて兄のほうは僕より5つ年上だが妹のほうは同じ年だという。
妹のほうの誕生日が近いので、その日に合わせて訪問することになった。
初めてあったクリスは楚々としていて大人しそうで温室に咲く気品ある花というよりも、野花の様な素朴なかわいらしい女の子だった。子供ながら香水くさかったり、僕らに媚を売ったり撓垂れてくることもなかったのでまずは、不快でないと思った。
さらに話すうちに慎ましやかで話の聞き上手で、そのくせきちんと自分の意見も言えて、不快がないからとても好印象な女の子と変化していった。
それがいつしか恋と言う好意に変わった
初対面、折角の誕生日だからプレゼントを準備したけど、兄上も僕もぞんざいに用意された物だった。兄上は、途中で侍従に命じて用意させた花束で、僕は友達に上げる感覚でいつものように用意した魔導書だった。
相手のことを思って用意していないプレゼントだった。
まあ、僕の方が自分で選んだだけマシだったのかな?と今では少し有意に思っている。・・・どっちもどっちだったけど。
だが、僕が恋を自覚してからは、クリスの好きそうなクリスをイメージしたプレゼントを用意した。気持ちを込めてその時のクリスを思って選んだ品々。兄上と似偏ってしまってしまうのが気に入らないが、いつも喜んでくれている。
願わくば、いつかはその身を飾るアクセサリーを贈りたい。
「遅れているぞ早くこいよ」
耳まで赤くなっているクリスを後ろから眺めていると、前を行く兄上の不機嫌そうな声が聞こえた。
気がつけば、もう直ぐ一本木のある丘まで、あと少しだった。
丘の手前には開けた草原があり、いつもここを走らせたら気持ちが良いだろうなと思っていた。
クリスと一緒なら猶更だ。
いま、それが叶っているんだこの時間を無駄にしたくない。
「わかったよ!
クリスつかまってて、少し速度を早めるよ」
兄上に返事を返して、クリスに声をかけ愛馬の腹を軽く蹴って駆け足をさせる。
僕の前に少し体を硬くして馬上で座っている女の子。
いつものふわふわとしている光の加減で明るくも落ち着いても見える茶色の髪は、乗馬の為にサイドに流すように纏められている。それでいつもよりも大人っぽく見える。髪型一つで、違って見えるなんて、女の子の不思議だ。
それにしても顔もが強張っていて、初めての乗馬に緊張していると思いたいけど、無理かな?
姿こそは、しっかりと背筋を伸ばして座って愛馬のサムの歩く揺れに身を任せている。
「クリス、このサムはとても穏やかな馬なんだ。
そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
そう声をかけると、まだ少し白くなっている顔をこちらに見上げてぎこちなく微笑んだ。
その瞳がゆらりと揺れる。かなり、目元に力を入れている。気を抜けばその瞳から零れ落ちるものがあることは、容易に想像できる。
厩舎の前での出来事が、大いに原因だとはわかっているがそれは口にすることはしたくない。
今回のこのことは、僕にとってはとても喜ばしい事だから。
───兄上を初めて出し抜いた。
「ルーカス様ごめんなさい。わたくしが我が儘を言ったから・・・」
そう言いながら既に潤んでいた瞳が、更に膜が濃くなった気がする。
兄上は、クリスが僕と一緒に乗ることを望んだことで少し拗ねている。拗ねている?いや、あれは拗ねているなんてかわいらしいものじゃない。
じゃあ、なにかと言われても言いようがない。
あの状態はいうなれば、初めてのクリスからの拒否を自分の中で処理しきれず醜態を晒す前に逃げた───が、一番近いかもしれない。
グイっと、華麗なフリルの付いたブラウスの袖口で目元を拭う。
ああ、そんなに乱暴に拭ったら赤くなるだろうに・・・
でもそれを指摘するのは、クリスを傷つけるんだろうな。この黙っていれば大人しいように見える女の子は、意外や意外にとても負けん気が強く矜持が高い。
貴族の令嬢が持つ、無駄に高い矜持でない。
自分が口に出したことは成し遂げようとする、矜持だ。
クリスは聞けば教えてくれるが、様々ことをしている。
新しい産業の開発。作物の改良。魔術の新たな活用法まで、どれも斬新で素晴らしいアイディアから生まれたのだ。それを全て、成し遂げている。
途中で投げ出したりしない、さらにこの領民の為にそのアイディアを広めている。
優しく強いクリスの涙を指摘すればおそらく彼女は恥じるだろう。
だから、何も言わない。
でも、あとで目元を冷やすくらいはしてほしいと思う。
そのクリスは、前を向いている。
前を、ずっと先を行く背中を切なげに見つめている。その姿に僕の胸が今度は、切なくなる。
いつもだったら直ぐ横でついて話しかけただろうに、今は3馬身くらい先を行っている兄上。
まるで早く目的地に着かんとしているみたいだ。
出立してから、一度も振り返っていない。
そんなに見たくないかねぇ。自分以外の男と一緒にいるクリスを・・・
「気にしなくていいよ。兄上が先って別に決まり事もないし、クリスが指摘しないと兄上も気がつかないと思うよ」
嘘だ。
決まりはないけど、兄上はクリスに関しては譲らない。
他のことについては、僕を優先してくれることもある優しい兄上だけど事、この可愛らしいクリスティーナに関しては、僕が先んずることを許してくれない。
自国の人間の前では、決して見せたことのない外向きの微笑ではない、砂糖を溶かし込んだ笑顔をクリスには見せている。その微笑みは、今まで誰も見たことがない。言葉よりも何よりも、その微笑みは雄弁に語っている。
───兄上は、クリスに恋をしている。
本人の口から、クリスへの好意は何も聞いたことはない。だけど見ればわかる。
だからクリスが指摘したことは、それは本人が意図的にしていることなのだ。
だが、さすがにそれをクリスに言われるのは、ばつが悪かったのだろうな。
「それに、僕としてはクリスが指名してくれ嬉しかったよ。」
あえて明るく言うと、きょとんとした顔で振り返るクリス。
かわいらしい顔を無防備に向けてくれるが、僕が言う意味をちっとも理解していないようだ。
うん、僕だって・・・クリスのことは好きだ。
これが恋かどうかは、まだそこまでは分からないがこの好きという感情は大切に育てていきたいと思える温かな感情だ。
兄上がクリスのことが好きだと気がついて、クリスを観察していたらいつの間にか好きになっていた。
これが兄のものを欲しがる子供のような感情から来ているのか知らないが、クリスが好きだと言う気持ちに嘘偽りはない。
だって、クリスに触れられても嫌悪感は湧かないから。
ぼくらの国フォルトゥーナは、様々な種族が暮らす国だ。獣人族、エルフ族、魔人族、人族、そして龍人族。
エルフ族と龍人族は、番との繋がりが強い種族だ。獣人族も一部を除いて番への思いは強い。だからだろうか、異性から触れられると嫌悪感を抱くこともある。
番を大切にする種族ほど、触れられる異性は少ない。
勿論、触れることができる異性は番以外にもいるが絶対的に少ない。
そして、その少ない異性が僕らにとっては、クリスティーナだった。
僕らの種族が触れることができる異性とは、相性がいいと言うことだ。僕自身、その相手に好意を持っているということでもある。
だから兄上は、僕が少なくともクリスに好意を寄せていることに気がついているだろう。
僕がクリスに思いを告げる時に最大の障害になるのは、兄上だろう。
確かに兄上のほうが先に好きになったみたいだけど、好きになってもらうのに先も後もないと思うから僕も負けるつもりなんてない。
「できたら、僕と一緒のときは他の男のことは考えてほしくないな」
クリスに意識してほしくて、いつもとは違う声音を使って耳元で囁けば、白かったクリスの顔は真っ赤に染まった。
もうっと頬を染めたまま微笑むクリスは。本当にかわいいな。
クリスの屈託ない笑顔は僕らの癒しだった。
大国の第一王子と第二王子なんて媚を摺り寄せてくる輩で回りは溢れていた。
高位貴族は自分の娘を嫌らしい顔で勧めてきて、年頃の令嬢か誰かの足を引っ張るような話ばかり。
嫌気が差していたところに、母上から隣国の伯母上のところに行くと言われた。
何でも伯母上はお体が弱く、隣国の王都でなくフォルトゥーナに近い田舎の領地で過ごしているらしい。
子供が2人いて兄のほうは僕より5つ年上だが妹のほうは同じ年だという。
妹のほうの誕生日が近いので、その日に合わせて訪問することになった。
初めてあったクリスは楚々としていて大人しそうで温室に咲く気品ある花というよりも、野花の様な素朴なかわいらしい女の子だった。子供ながら香水くさかったり、僕らに媚を売ったり撓垂れてくることもなかったのでまずは、不快でないと思った。
さらに話すうちに慎ましやかで話の聞き上手で、そのくせきちんと自分の意見も言えて、不快がないからとても好印象な女の子と変化していった。
それがいつしか恋と言う好意に変わった
初対面、折角の誕生日だからプレゼントを準備したけど、兄上も僕もぞんざいに用意された物だった。兄上は、途中で侍従に命じて用意させた花束で、僕は友達に上げる感覚でいつものように用意した魔導書だった。
相手のことを思って用意していないプレゼントだった。
まあ、僕の方が自分で選んだだけマシだったのかな?と今では少し有意に思っている。・・・どっちもどっちだったけど。
だが、僕が恋を自覚してからは、クリスの好きそうなクリスをイメージしたプレゼントを用意した。気持ちを込めてその時のクリスを思って選んだ品々。兄上と似偏ってしまってしまうのが気に入らないが、いつも喜んでくれている。
願わくば、いつかはその身を飾るアクセサリーを贈りたい。
「遅れているぞ早くこいよ」
耳まで赤くなっているクリスを後ろから眺めていると、前を行く兄上の不機嫌そうな声が聞こえた。
気がつけば、もう直ぐ一本木のある丘まで、あと少しだった。
丘の手前には開けた草原があり、いつもここを走らせたら気持ちが良いだろうなと思っていた。
クリスと一緒なら猶更だ。
いま、それが叶っているんだこの時間を無駄にしたくない。
「わかったよ!
クリスつかまってて、少し速度を早めるよ」
兄上に返事を返して、クリスに声をかけ愛馬の腹を軽く蹴って駆け足をさせる。
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