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第一章 転生物語においてフラグは折るものです

私はモブです。あれから3年たちました

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私のお誕生日の出会いから3年が経ちました。


その間、2人の王子様たちは年に数回の割合で、当家の領地に遊びに来てくれていました。
恋の進歩?
お綺麗な顔は、観賞用にはとてもうれしいですし心が浮き立ちますが、残念ながら私はモブなのです。麗しのメインキャラたちの間に立つ勇気など豆腐メンタルな私には微塵もございません。
薔薇と一緒にタンポポを花瓶に生けたら、どう見てもおかしい。
違和感しかない。
私は、タンポポなのです。
主人公と言われる人たちの引き立て役にもならないのです。
それに初恋は実らないというし・・・
私は、彼らが今後出会う運命の相手と幸せになってもらえればいいのです。イケメンアイドルのファンの心得として、私が前世で学んだこと。
ファンならば、推しの幸せを願い応援するべきと私は思うのですよ。

そのために、私がしないといけないことは決まっています!!!
フラグ折り。
頑張って、ポッキリとちゃっちゃとやっちゃいましょう。
失敗ができない、一度きりのチャンス。
ただし、よく言えば一度しかする必要のないフラグ折なのです。

そこに照準を合わせて行動をおこせばいいので、それだけは助かります。




今のところ私たちは仲の良いお友達?幼馴染?従兄弟?
とても国を跨いで遊びに来られる常識的な数よりも、頻繁に来られていますからとても仲良しな親戚というところでしょうか?
最初のうちは私のお兄様も一緒に遊んでいたのですが、すぐに王都の学園に入学されて寂しいと思っていた心の隙間を埋めてくれ私もついつい甘えて遊んでもらっています。
それには、

というより、よく考えると隣国とはいえ大国の王子様2人が、年に何度もただの一貴族の領地に遊びに来ていいのでしょうか?
だって、その間王城へ行ったとは聞いていないですよ。
いや、1度聞いたら大使が王城へ招かれている間、ここで待っているんですよって言われたなぁ。すんごく、いい笑顔で・・・いいのか?
王子が王城への訪問スルーで・・・
侯爵家うちへとばっちりが来なければいいですが・・・

我がシェルマン家は、爵位の序列が上位の侯爵家ではあるが如何せん田舎貴族だ。
国境を有した主要な地方都市の領地ならば『辺境侯』と言われただろうが、牧草地が広がる長閑な田舎だ。
かつて前世で願った緑豊かな田舎でスローライフ、その一端が転生にて叶えられたのだった。
田舎とはいえ、腐っても貴族。それも侯爵という爵位の序列は上位の令嬢です。
スローライフには程遠いですが、僅かな時間を見つけては領地内で自然を満喫しております。・・・ある意味、忙しくスローライフなのかな?
ちなみにお父様は、権力とかそういうものに興味がなく。本当は領地経営だけをして、お母様といちゃいちゃしていたいが本音らしい。
そんな無欲なお父様が何故お城で働いているかというと、私が生まれてすぐぐらいに宰相様推薦でお勤めが決まったらしい。
お断り不可のやつで・・・
ただ領地が広々としているだけで、特産物はほぼない我が領地。落ちぶれもせず領民が豊かで領地管理に長けていたと言う理由らしいのだが、敏腕冷血侯爵様に目を付けられて城の文官として文書管理課の室長にとドナドナされて早10数年。
地味な書類整理の部署とはいえ、雑多に富んだ国中からの様々な書類が集まる文書管理課。それを精査整理管理するのは、とても大変だと聞いています。前世を思い出す前の幼いころお絵かきで書いていた『提出書類の雛型』をみてヒントを得て、現在の公式文章は決まった書式で書くという決まり事を作ったとか・・・。だから、優秀だと言われて宰相様にこき使われるんだろうなぁ。
って、前世を思い出していない時なのに、子供のお絵かきで『書類の雛型』を書くってどんだけ前世で社畜だったのかしら?いやだわ、そんなものをお絵かきする幼女・・・。

宰相様との圧迫面談の採用通告をされたときに、数か月に一度は必ず長期休暇を取る約束は絞り出しながらの小さな声で、頑として譲らず勝ち取ったから我慢していると言っていましたねぇ。
里帰りのたびに、お父様の顔が窶れていてお労しい・・・
もともと侯爵という地位にも特別な権力もない我が家。何代か前のご先祖様が周辺の王領で起きた災害に対して、早期対応を取って大事に至らずに済んだと言う褒賞で侯爵を賜ったのだ。
派閥争いも権力争いも、縁がないしがない田舎貴族です。
ただでさえお父様は、こわ~い宰相様と顔をよく合わせると言っていたし・・・

本当に本当に、この王子様たちはただ単に母親の親戚のお家に遊びに来ているだけということで、とばっちりにあいませんように・・・


そして、今日も久しぶりに2人の王子がいらっしゃいました。
3年の間に私たちも慣れたもので、何度目かの訪問で使用人すべてでの出迎えは不要という言葉をもらい、それからは私と執事で出迎えるようになった。
何せこの高貴なる御仁は、先触れと同時に着くことも多い。思い立ったがなんとやらの行動力の良さで、我が家にいらっしゃるのです。
先ぶれの騎士様たちが毎度、悔しそうにしています。

王子付きの名誉ある騎士様たち、ファイト!
小さく心の中で応援しておきます。

さて、玄関に着いてすぐに案内されるサロンには、レオナルド様の好みのさわやかな香りの紅茶とルーカス様の好みのジャムを添えたパンケーキが何も言わずに用意される。
王子たちも我が家のように、案内より先にサロンに入り長い足を組んでソファーに座り寛ぎ始めるのだ。
サロンのソファは、とても寛ぎやすくて大きなソファですよ。
アイボリー地に緻密で綺麗な彫刻の彫られた手摺、クッションもいいですし、腰掛けたときの沈み具合なんて抜群ですよ。ゆったり広々とした長ソファーと一人用のソファーが2客もあります。
なのに何でですかね?
何で大きいとはいえ他にもソファーがあるのに、長ソファに3人で纏まって座るかな?
のようにレオナルド様とルーカス様が先に座られて、お二人の間を空けてぽんぽんって笑顔で誘導されます。
いつもです。
毎度です。
3年間ずっとです。
ならいい加減諦めて、慣れろってとこですが?
この3年で、もともと端正な顔立ちで綺麗な美少年な王子様だった2人は更に磨きかかって気品が加わり、理想的完璧美形王子様に成長されたのですよ。
えっ、わたくしですか?
モブの成長なんてたいしたことありません。
身長も容姿も平均点まっしぐらです。
唯一、心配していた体型だけは、ぽっちゃり体系から順調に女性らしい丸みを帯びていますけどね。
容姿の件については、モブなので期待はしてはいけませんね。
そんなわけで、惚れた王子様が更にかっこよくなってるのだから、私のほうも更に緊張しております。

「えっと・・・今日はいつもと装いが違いますね」

レオナルド様は紺の、ルーカス様は臙脂のそれぞれ乗馬服を着ていた。
いつもは馬車で来るのだが、今回は騎乗でいらしたそうだ。

「最近、ルーが騎士団の訓練に参加していて乗馬の上達が著しいのでね。二人で遠乗りをしてたんだけど、気がついたら国境を越えてたから、ついでにクリスに会いに来たんだ。
ほら、以前話していた僕の愛馬。クリスも見たいっていってただろ?
あれ?クリスこの紅茶いつものと違うね。紅茶らしい味わいに香りがとても華やかでなのに、飲んだ後の鼻に抜ける爽やかさと全てのバランスがすばらしいね。」

早速、紅茶の香りを楽しみながら、レオナルド様が答えてくれた
うんうん、この紅茶は、我が領内の高地で栽培されているんだけど、香りをもっと華やかにかつ爽やかにできないかと何度も改良してできた茶葉なんだよね。
レオナルド様の好みのお茶に近いものが、王都の高級紅茶店にしかなくお父様に里帰りのたびに頼んでいたのだけど・・・まぁ、お値段もなかなかでして、いついらっしゃるのかわからない2人の為に常時用意しておくには難しく何度かほかのものを出していたのよね。
私でもわかる、味の違い。
レオナルド様は、代用品でも文句は言わないし代用品のいいところをほめてくれるけど、舌の肥えた王子様だもの満足するはずないわよね。
曲がりなにも、領内に紅茶の名産地があったのでどうにかできないかと試行錯誤して、先日生産者から満足のいくものができましたって入ったばかりだったのよ。

良かった、レオナルド様の好みに合ったみたい。これなら、王都の高級紅茶の茶葉に引けを取らないわ。
生産工程も問題なさそうだし、あとは常時一定量生産の確保が課題よね。

でも、それよりも今は、レオナルド様の満足そうな顔が見れてうれしいな。
好きな人の好みに合ったおもてなしができて、笑顔を見れて私は満足だわ。

「うん、兄上についてここまで来たけど、結構距離があるんだな。でも意外と大丈夫だったよ。
うわぁ、この果物は果肉が大きいなぁ。苺にブルーベリー、それに林檎の酸味と甘さがベストマッチだなぁ。相変わらずジャムもおいしいぃ。
このパンケーキもクリスの手作り?」

ルーカス様は、ナイフとフォークを使って綺麗な所作で切り分けたパンケーキに豪快にかぶり付いて続けた。
この世界のパンケーキは、昔ながらの甘さ控えめぺしゃんこなもの。それを前世のウェブサイト情報で得た裏技を使ってふわふわパンケーキを作ってみた。これに家族は大好評で、我が領地の信頼できる料理人にだけ作り方を明かして、町の食堂で出してもらっている。最近、王都で似た商品が出回りだしたけど、私の裏技ほどふわふわなのは無理だろうな。なんせ、1枚5センチ以上の高さを時間がたっても保つふわふわなパンケーキが売りですから。
できる人がいたら、おそらくそれは私と同じ転生者しかできないよね。
ジャムも果物の品種改良で、糖度が高く粒の大きなものを育てることに成功した。ただし、柔らかい果肉は、配送途中で潰れるため領内で消費するしかなかったのよね。
それをこんなにおいしい果物があるってことを、ジャムにして王都に宣伝したら国で一番の大手マルス商会のバイヤーさんから状態保護の魔法の使い手を教えてもらって販路を広げることができた。
このジャムと果物は、こちらでは誰でも食べられるけど、王都に行くと高級品となっている。
私はおいしそうに頬張るルーカス様に、にこにこ笑顔で久しぶりに焼いてみましたと答えておく。ちょうどパンケーキを焼こうとしていた時に先触れの騎士様が駆け込んできたのよね。…それから、30分もしないうちに到着されたけど・・・
イケメンが美味しそうにほっぺたが膨れるほど詰め込んでスイーツを食べる姿は、眼福です。
本当に子供みたいでかわいい、嘘です、やっぱりかっこいいです。
子供のようにかわいらしいのにかっこいいって、狡いです。

「ルーは馬車では、いつも寝てるからね。」

二人の間に挟まって座ると、両サイドから楽しそうにキラキラ笑顔で言いますが、いやいや『ちょっと来ちゃったテヘペロ』っていう、距離じゃないですよね?
道理で一緒に来ている護衛の騎士さんたちが疲れ切った顔しているはずですね。
恐らくは、突然の予定変更に強行移動で付いて行くのも大変だっただろう。国境を越えたのだから、諸々の手続きもあったでしょう。許可なき国境越えは、いくら友好国とはいえ争いの原因になりかねない。我が家の平穏の為にどうか、このようなことはもうしないでいただきたい。

私は引きつるような笑いを浮かべるので精一杯でした。


「・・・お体は疲れていませんか?晩餐の前にお風呂を用意させますから、おくつろぎになってはいかがですか?」

我が家のある領地は、フォルトゥーナに比較的近いので馬車でゆっくり走って、王城まで3日あれば十分だとのことだ。
ここまでどのくらいかかったのですか?と聞いたのですが、ニコニコ笑顔で、馬車よりは断然早いよということでした。ルーカス様も、馬だと思ったよりも時間がかかるねと、言いますがどいう意味でしょうか?

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