願いを叶える公爵令嬢 〜婚約破棄された私が隣国で出会ったのは、夢の中の王子様でした〜

鹿倉みこと

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49. ひとつに溶け合えたなら(2) ※

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「これだけ解せば大丈夫だろう。中でも少し快感を拾えるようになってきたようだし」


 ずるりと指が抜かれて体が跳ねる。
 ノックスはてらてら光る指をぺろりと舐めながら、満足そうに私の太ももを撫でた。


「入れるぞ、いいな?」
「う、うん……んっ」


 熱くて硬いものが膣口に擦り付けられる。
 表面を撫でられているだけなのに、何度も絶頂したせいか溶けそうなほど気持ちがいい。
 
 ただ、純粋に快感を追っていられるのは、彼のものが入り口に潜り込むまでのことだった。
 まだ少し押し当てられただけなのに、圧迫感が尋常ではない。指とは比べ物にならない存在感。熱くて、硬くて、ずっしりと重い。
 これがこのまま入り込んできたら、私はどうなってしまうんだろう。
 不安と期待で頭がぐちゃぐちゃになって、全力疾走したときのように息が上がり始める。


「……大丈夫か?」
「はっぁ、わから、な……」
「初めてだもんな……少し落ち着こう。こんなに力が入っていては、きっと痛むだろうから」


 ノックスに指摘されて初めて、緊張で全身が強張っていることに気づいた。
 ノックスはずっと私を高めるばかりで、まだ何も気持ちよくなっていない。なのに直前になって怖気づいたりして、申し訳ない気持ちになってしまう。


「……ごめん、なさ……」
「謝らないでいいんだ」
「でも、んむっ」


 ノックスは謝罪を遮るように、やや乱暴に私の唇を塞いだ。むにゅりと押しつけられた唇は、性感を高めるようないやらしさはまったくなく、まるで子どものいたずらのようだ。
 さらに啄むようなキスが顔中に降ってきて、思わず首を竦めた。


「っふ、くすぐったいわ」


 ノックスは一緒に小さく笑い、それから少し困った顔で私を見つめた。

 
「エレアノール、すまない。本当は無理するなと言うべきなのに……どうしても今日、君を抱きたい。時を戻してから……長かった。もう二度と君を抱きしめられないのだと思いながら生きる時間は……」


 話しながら昔のことを思い出したのか、宝石のような瞳が苦しそうに歪む。


「お願いだ。君がここにいるのだと……俺のものなのだと、確かめさせてほしい」


 このとき、私はやっと自分の思い違いに気がついた。
 彼も私と同じように我慢していたのだろうかと考えたのは間違いだったのだ。
 私が彼に触れられずに焦れていた二年間とはわけが違う。
 彼は時戻りをしてからずっと、終わりのない渇きを耐え続きてきた。そして、それを抱えたまま独りで生きていくつもりだったのだ。


『少し驚いただけ』
『私もあなたとひとつになりたい』

 そう言いたかったけれど、彼の苦しみと深い愛に胸が詰まって、言葉にすることはできなかった。
 代わりにたった一言を絞り出す。


「……来て……」
「っ、……!」


 添えられていたものにぐっと力が入り、私の中を少しずつ満たしていく。


「あぁっ……!」


 丹念に解されたうえ、ノックスが小刻みに往復しながら慎重に入れてくれるおかげで、意外にも痛みはほとんどない。
 ただ、みっちりと埋められていく圧迫感は想像以上で、肺の中の空気がすべて押し出されていくようだった。


「あっ、は、ぁ、はぁっ」
「本当に、大丈夫か……? ずいぶん苦しそうだ……」
「やっ、やめないで、このまま……!」


 ノックスが申し訳なさそうに眉を下げるけれど、やめないで欲しいというのは私の心からの願いだ。
 だって呼吸もままならない、その苦しささえも愛おしい。
 なんて幸せなんだろう。今この瞬間、間違いなく私は彼のもので、彼は私のものだ。心も体も、魂すらもすべて。


「ふ、うぅ……ん、く……」
「っく、もう少しの、辛抱だからな」


 ノックスの額からは大粒の汗が滴っている。かなり我慢しながら時間をかけて進めてくれているのだろう。
 けれど、そのおかげで先端が行き止まりまで到達した頃には、息ができないほどの圧迫感がすでに快感へと変換されつつあった。
 先端が最奥にぴたりとはまり込むと同時に、体が歓喜を示すように彼のものを抱きしめる。


「ふ、ぁぁ……」
「うぁ……クソっ……」


 突然中が激しく蠢いたことで、ノックスは私にしがみついて体を震わせ、耐えるように歯を食いしばって唸っている。


「っくぅ……一番奥まで、入ったぞ。ちょっと待とう……お互いのために」
「んっ……お互いの、ため?」
「そうだ、馴染むまで。それに、今動いたら……出てしまう……」
「まあ……ふふ」


 苦い顔で言い難そうにするノックスがかわいくて、思わず笑みがこぼれる。

 それから私たちはしばらくの間、ただ抱き合っていた。
 すると、だんだん二人の境目が曖昧になるような気がしてくる。
 溢れ出る多幸感にどちらからともなくキスをすると、彼の陰茎がびくびくと跳ね、私の中が蠢いて、私たちが別々の存在であることを思い出させた。


「っは……時を戻したときは、こんな日が来るなんて思ってもいなかった。夢じゃ、ないんだよな……」


 ノックスは噛み締めるように呟く。それから顔を上げて、潤んだ目で私をじっと見つめた。
 愛する人が私の存在そのものに幸せを感じてくれる。そんな奇跡を目の当たりにして、たまらない気持ちになる。


「ね、ノックス……動いて?」


 私にあげられるものなら何でもあげたい。幸せも、快楽も、すべて。

 
「もう、大丈夫そうか?」
「ん」
「……痛かったら言うんだぞ」


 私が頷くと同時に、埋め尽くしていたものがゆっくり引き抜かれていく。


「ふ、あぁ……」
「っく、吸いつきがやばい……」
 

 ノックスが眉間に皺を寄せ、熱い息を吐きながら私の目尻に溜まった涙を舐める。
 散々愛撫されて敏感になった隘路を削るようにして引き抜かれ、感じる部分を余すことなく抉りながらまたいっぱいに埋められていく。
 そして最奥の壁をこつんと叩かれると、怖いくらいの快感が体を貫いた。
 ゆさゆさと揺さぶる速度が上がっていくにつれ、絶頂を貪ろうと中がひくつき始める。

 
「のっくす、あ、んっ……もっと激しく……」
「こら、初めてなんだから無理するな」
「おねがい……ノックスの、あ、ふっ、好きなように、動いて欲しいの。たくさん、ぁっ、私の体で気持ちよく、なって……?」
「っ……そんなこと言うと、手加減してやれなくなるぞ」


 ノックスが腰を回してぐりぐりと子宮口を嬲りながら、叱るような物言いをする。
 これは彼からの警告だ。子宮ここを本気で叩かれて耐えられるのかと、やめるなら今のうちだと言っているのだ。
 けれど、私も引くつもりはなかった。
 
 確実に蓄積していく快感を必死に受け止めながら、壊れたようにガクガク頷く。
 するとノックスはぎらりと目を光らせて、私の腰を掴み直した。

 
「そうか……じゃあ、遠慮なく全部入れさせてもらう。後悔するな、よっ!」
「あぐっ!!」


 容赦なく子宮を殴られて、体がギクンッと跳ねる。
 しかし灼熱の塊はそこで止まらず、そのまま子宮を持ち上げるようにして、どちゅんっと押し潰した。


(……ぁ、まさかまだ全部入って、なかっ……?)


「……ぁ……ひ、ぁ……ぁ、あぁぁあぁぁ!」
「っは、子宮潰されてイッたのか。めちゃくちゃにうねってる」


 大切な場所を蹂躙される被虐的な快感。
 絶頂したことを頭が理解するよりも早く体がガクガク痙攣し、目の前にぱちぱちと星が散った。


「あっ、あぁっ、イッてぅ、いま、あ゙っ」
「ああ、上手だな。ぎちぎちに締め付けて子種を欲しがってる。っ、すぐに注いでやるから、な」

 
 必死にしがみつく隘路から自分のものを無理矢理引き抜いたノックスが、容赦なく律動を始める。
 彼は私の脚を持ち上げながら覆い被さると、上から叩きつけるように腰を動かした。


「あっ、あ゙ぁっ……しきゅ、潰れ、ひぅっ!」
「そういえば、エレアノールは少し乱暴にされるほうが好きだったな」
「あぁんっ! そんな、ちがっ、あ゙っ、はげし、ひぃっ!!」
「ん、かわい……」


 ノックスは嬉しそうに呟くと、私を抱えるようにしながら体を丸め、さらに腰の動きを速めた。
 ばちゅばちゅと突かれるたびにすべての襞が余すことなく削られ、熱を持った子宮を叩き潰される。


「あ、ひっ、やぁ、またきちゃうッ!」
「っ俺も……エレアノール、一緒に……!」
「のっくす、あぁっ、きてっ! ナカに、出してぇッ!」
 

 半ば叫ぶように種付けを強請ると、中をみっちり塞いでいるものが襞を掻き分けるようにぐんっと一回り大きくなるのがわかった。
 中を限界以上に広げられたせいで、内壁をこそいでいく傘の肉厚な感触がまざまざと感じられる。
 ノックスの腰の動きは、もはや殴りつけるかのようだ。それなのに、私の子宮口は媚びるように彼の先端に吸いついていた。


「あっ、あぁっ! も、イクイクッ、イッちゃう!」
「くぅっ、俺も、出るっ……!」
「あ゙っ、イッ……んぅううーーーー~~ッ!」


 突き出した舌にぬめるものが絡みつくと同時に、お腹の奥にどぷどぷと熱いものが注がれていく。
 熟れきった最奥を白濁で灼かれて叩きこまれる深い深い絶頂。
 ノックスは腰を揺すりながら最後の一滴まで注ぎ込み、やがて硬いままの熱を最奥に押しつけたまま、はぁはぁと荒く息を吐いた。


「あ、んっ」
「エラ、エレアノール……愛してる……」
「のっくす……ふぁ、しゅき……あいし、てぅ」


 思った以上に体力が削られたのか、酔っ払ったように呂律が回らない。
 ちゃんと伝わったか確かめたくてノックスを見つめると、彼は喉の奥で笑って私の鼻をちょんとつついた。


「舌っ足らず」
「あんッ、だって……」


 繋がったままクスクスと笑い合い、唇を重ねる。

 私の運命。私の愛。
 これから先、溢れるほどの幸せをあなたにあげる。
 願いを叶える力はなくとも、私自身の力で……
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