2 / 46
prologue:積まれた書籍とタバコケース
ゴミ溜めの街
しおりを挟む
その日、彼の地は明けない闇に包まれた。
超大型隕石、後に『ヒュージ』と名付けられるその巨石は、不幸なことに世界で最も発展していた都市を直撃。その威力は凄まじく、都市は完全壊滅。全ての命も、建造物や技術、歴史を含む無機物なにもかもを平等に消し去り、その後にはただ砂礫だけが遺った。
ヒュージ落下の衝撃によって起こった爆風は、全てを破壊し尽くしながら粉塵を天高く巻き上げていく。巻き上げられた粉塵は空を覆い尽くしながら滞留し、それによって彼の地は太陽光すらも届かない永遠の夜が支配した。ヒュージの与えた影響はそれだけに留まらず、世界の全ての生物の遺伝子を変異させていった。動植物はおおよそあり得ない瞬間的な同時多発的な突然変異をし、狂暴化したそれらを人々は魔獣と呼ぶようになる。その遺伝子を組み替える因子は、人類にも多大な影響を与え全人間はその瞬間以前の記憶が消滅、また不特定多数の人物にある変異をもたらしたと考えられられる。
後述する突然変異した人間、兵器運用が臨まれる、ここでは敢えて俗称を記すが彼ら『ブレ・・・・・・
「・・・・・・ってのが、この地を含める世界に史実として記され、語り継がれていることなわけだが。どうにも、腑に落ちねぇわな」
黒い靄が空を覆い尽くす。日の光をうっすらと感じるが、あまりにも弱弱しいその光は時間感覚すらをも容易に奪い去る。朝なのか、昼なのか、そもそもそれが太陽の光なのかさえももう定かでは無い。この地から自然の光が奪われて久しい。吹き抜ける風は、そこかしこから漂う腐敗臭を連れて砂礫の大地を駆け抜けていく。土埃も孕み、散り散りに点在するボロボロな小屋の隙間を縫い、いつもより少し涼しい風をその土地に運んでいく。
白衣を羽織ったまま、剥き出しの地面に寝ころぶ男は、ゆっくりと今しがた目を通していた一冊の書を閉じた。その本の内容は想起していた一説を含む歴史書とは異なるようだ。辺りを漂う腐敗臭は、本来であれば吐き気すらもよおす程の臭気ではあったが、その地では地面に寝ころぶことも、漂う腐敗臭すらも日常の一部になっていた。
廃墟と化した都市を忌み嫌い、周辺で生き残った人々はその地の復興などする気配もなく、足早に生まれ育った地から離れていった。そんな地にも僅かではあるが獣の食糧は残されていたようで、突然変異をした所謂魔獣が一時的にこの地を席巻した。しかしそれも束の間、新たな生命は実らず、残る餌すらも消え失せたそこからは魔獣すらも姿を消した。
その後を追うようにして、幾つものゴミがその地に不法に投棄される様になっていった。
元の名を厄災をもたらす忌み名とされ、呼ばれることも無くなったその地に、新たに名を付ける物好きなど現れるはずもない。いつしか自然とそこは土地名ではなく、ただその現状を風刺しただけの呼称として「ゴミ溜めの街」と呼ばれるようになる。いつからか棄てられた者、流れ着いた者、それ以外の思惑を抱えた者がそれぞれに生活をするようになっていったが、住まう者が現れようともそこがゴミ溜めであることに変わりは無かった。
超大型隕石、後に『ヒュージ』と名付けられるその巨石は、不幸なことに世界で最も発展していた都市を直撃。その威力は凄まじく、都市は完全壊滅。全ての命も、建造物や技術、歴史を含む無機物なにもかもを平等に消し去り、その後にはただ砂礫だけが遺った。
ヒュージ落下の衝撃によって起こった爆風は、全てを破壊し尽くしながら粉塵を天高く巻き上げていく。巻き上げられた粉塵は空を覆い尽くしながら滞留し、それによって彼の地は太陽光すらも届かない永遠の夜が支配した。ヒュージの与えた影響はそれだけに留まらず、世界の全ての生物の遺伝子を変異させていった。動植物はおおよそあり得ない瞬間的な同時多発的な突然変異をし、狂暴化したそれらを人々は魔獣と呼ぶようになる。その遺伝子を組み替える因子は、人類にも多大な影響を与え全人間はその瞬間以前の記憶が消滅、また不特定多数の人物にある変異をもたらしたと考えられられる。
後述する突然変異した人間、兵器運用が臨まれる、ここでは敢えて俗称を記すが彼ら『ブレ・・・・・・
「・・・・・・ってのが、この地を含める世界に史実として記され、語り継がれていることなわけだが。どうにも、腑に落ちねぇわな」
黒い靄が空を覆い尽くす。日の光をうっすらと感じるが、あまりにも弱弱しいその光は時間感覚すらをも容易に奪い去る。朝なのか、昼なのか、そもそもそれが太陽の光なのかさえももう定かでは無い。この地から自然の光が奪われて久しい。吹き抜ける風は、そこかしこから漂う腐敗臭を連れて砂礫の大地を駆け抜けていく。土埃も孕み、散り散りに点在するボロボロな小屋の隙間を縫い、いつもより少し涼しい風をその土地に運んでいく。
白衣を羽織ったまま、剥き出しの地面に寝ころぶ男は、ゆっくりと今しがた目を通していた一冊の書を閉じた。その本の内容は想起していた一説を含む歴史書とは異なるようだ。辺りを漂う腐敗臭は、本来であれば吐き気すらもよおす程の臭気ではあったが、その地では地面に寝ころぶことも、漂う腐敗臭すらも日常の一部になっていた。
廃墟と化した都市を忌み嫌い、周辺で生き残った人々はその地の復興などする気配もなく、足早に生まれ育った地から離れていった。そんな地にも僅かではあるが獣の食糧は残されていたようで、突然変異をした所謂魔獣が一時的にこの地を席巻した。しかしそれも束の間、新たな生命は実らず、残る餌すらも消え失せたそこからは魔獣すらも姿を消した。
その後を追うようにして、幾つものゴミがその地に不法に投棄される様になっていった。
元の名を厄災をもたらす忌み名とされ、呼ばれることも無くなったその地に、新たに名を付ける物好きなど現れるはずもない。いつしか自然とそこは土地名ではなく、ただその現状を風刺しただけの呼称として「ゴミ溜めの街」と呼ばれるようになる。いつからか棄てられた者、流れ着いた者、それ以外の思惑を抱えた者がそれぞれに生活をするようになっていったが、住まう者が現れようともそこがゴミ溜めであることに変わりは無かった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる