PARADOX＝世界の真相を巡る旅に始まり終焉へと帰結する、数多の矛盾と真実で紡がれる物語

prologue：積まれた書籍とタバコケース

地を裂く大剣と炎を纏う槍の狂演

　その場に居合わせたスラムの医師と呼ばれる男は、ただただ目の前に広がる光景に目を奪われていた。天を突かんと立ち上る炎の柱、色彩すら奪う激しい光の中で2人の影が舞い踊る様に引かれ合っては弾け飛ぶ。狂炎を纏う槍と、大地を裂く大剣がぶつかり合う音と、辺りの砂礫を焦がす炎熱反応が生み出す音。

　手が震えていることにも気が付かないほどの緊張感。その中でも目の前の光景に心ごとのめりこむ様に魅入られたのは、それがあまりにも現実離れしていたからではなく、ただ純粋にその戦いが、命のやり取りが美しかったからだった。

　しかし、この闘いやその直後に巻き込まれる事件ですらも、彼がこれから知ることになる世界の現実と真実の序章に過ぎなかったーー

　これは世界の真相を巡る旅から始まり、終焉へと帰結する、数多の矛盾と真実によって紡がれる物語である。