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餼羊編
ep6 血塗られた美少女
しおりを挟むリータ/アリシアside
何か悍しいものが迫ってきている
あの巨大なゾンビは
傷の治癒が間に合わずに倒れたのではない
誰かに殺されたのだ
(私は… あの者を知っている………… ? )
8m近い化物を瞬殺したのだ
それができるのは同じ化物なのだろうか
自分と近い何かを感じるのだ
「アイツ…人だよな? こっちに向かってる…? 」
ガクトさんがその人影に気づいてしまう
30mほど離れているその者を指差していた
「でも……あの状況で人がでてくるのは
おかしくないか、、? 」
場が混乱するなかで
首を傾げながらトウマさんが応える
(今すぐ言うべきだ…
あの人とは関わらずに保険室へ戻ろうと、、 )
横を見るとセイシロウさんが額に右手を当て
苦しみながらしゃがみこんでいる
「何か…嫌な予感がする………」
セイシロウさんが呟いた
経緯はどうであれ私の意見と同じようで
私は少し安堵していると
「あの人と闘ってはダメだ…
今すぐ逃げないと、、 」
そう焦った様子で続けた
しかし少々皆にはソレは軽率的に見えたのか
ミクさんがセイシロウさんのもとへ駆け寄って
「誠ちゃん……?? どうしたの? …
人は出来るだけ助けるのが
方針なんじゃなかったの…?? 」
「それは思ったぜ 」
頷きながらガクトさんもミクさんに同意している
トウマさんは沈黙し特に干渉しなかった
(嫌な状況だ…
もし彼女と戦うことになったら、、)
え…………今私…………………
次の瞬間凄まじい勢いで血の気が引いていく
え………?戦う…………??
何故私は…そうなることを前提に考えているの?
「俺 ちょっとアイツと話して来る
誠士郎をよろしく頼むわ………… !! 」
そう言ってガクトさんが走り出した
色んな感情が渦巻くなかで私は
「待ってください…! ガクトさんっ…!! 」
思わず彼を呼び止めてしまう
数m先で止まった彼は振り返って
「なんだよリータまで…… 大丈夫か??
少し話してくるだけだって
あと… 美九達は誠士郎の様子をみてから
先に戻っていてくれ 」
そう言ったあとに
前へ向き直りあの人へと近づいていった
「誠ちゃん とりあえず戻ろう 」
美九さんの優しく明るい声が響いた
ただ私は不安で不安で仕方がないのだ
~~~~~~~~~~
楽斗side
「おーいアンタ…… どうしたんだ? 」
近寄りながらそう声をかけた時に俺は気づいた
その人はなんと女性だったのだ
長身で175cmはあるようで色白な肌を有している
まるで西洋人形のようだった
黒ドレスの様な服装に艶のある銀色の髪に
やや細くルビーのように輝く両目に加え
顔は整っていて綺麗だと思った
「俺は 楽斗 って言うんだ
あんたの名前は……? 」
「メアリー 」
その一言だけ彼女は答えた
幸い日本語は話せるようで安心していると
「こんな所で 何をしてたんだ?? 」
「殺戮ごっこです ♬ 」
奇妙な薄ら笑いを浮かべながら彼女は答えた
表情とその内容が全く噛み合ってない
「何の話だ… ?? 本気か、、? 」
「ごっこだから
本気じゃないでしょう?♫ 」
彼女は変わらず呑気な口調でそう応える
その包み込んでくるような不気味な笑みに屈さず
俺は質問を続けた
「その ゾンビ は
あんたが殺したのか、、?? 」
「ええ
そうかもしれませんね? ♬ 」
そう答えられた時に気づいたことがある
微かに彼女から生々しい刺激臭がしたことを
(彼女のドレスの色は黒ではない…?
黒に見えるのは………… )
ドレスは浴びた返り血で黒く染まっていたのだ
目の前にいるのは正常な人間ではない
いや、そもそも………
「あんた… 人なのか、、?? 」
そう聞きながら右手を刀に添える
全身が震えていた
「 さぁ… どうでしょう……?♫ 」
彼女が狂気の笑みを浮かべた瞬間に
視界から彼女の姿が消えて
ドガァッ…………!!
急に俺の目の前に現れた直後に
胸部に重い衝撃が走り身体が仰け反った
「げがッッ……………!?!? 」
( 俺は…蹴られたのかっ………!? )
体勢を立て直そうと踏ん張った時には
既に彼女の両手が俺の首に静かに添えられていた
人間の域を超えた所業にただ息を呑んでしまう
「私は人ではないかも……? ♫」
余裕のある表情を浮かべながら少女はそう応える
俺を殺そうと思えばいつでも殺せるだろうに
敢えてソレをせずに遊んでいることに気づいた
しかしその気まぐれで生きながらえているのも事実で
一種のジレンマと不快感に陥るなか
「なら……なんだよッッ………!! 」
果物ナイフでも刃が届く範囲に彼女はいる
さらに装備しているのはリーチのある刀なのだ
俺は奴の首を狙って刀を引き抜いて一閃する
シュバァッ…………!!
地面と水平に刀を振るが当たらない
相手の動きが速すぎて捉えられないのだ
( はっ………………!? )
気づけば俺の背後にいる彼女は
ゆっくり口を開き
「私は 傀儡者 と呼ばれる者です♫ 」
ただ声のする方を便りに後ろへ振り向くが
彼女は緩やかな口調で答えると共に
また視界から消える様な移動をしていた
ドガァッ…………!!
「ぐぁあ"っ………! 」
気づけば再度背後に回られて腰を蹴られていた
少女は押し飛ばされる俺にすかさず距離をつめて
「そんなもんですか………?
ほらっ…… ほらっ……ほらっ………
ほらっ……ほらっ…………!! 」
彼女は左手で俺の胸ぐらを捕んで固定し
嗤いながら右手でパンチを何発も繰り出し続けた
トギャッ………!! ゴギャッ……!!
ボキッ………!! バキィッ……!!
最初に喰らった鎖骨が砕けるのを始めとして
上半身の様々な箇所が潰されていく
視界にボンヤリと映るのは少女の微笑……
もう何かがなんだかわからなかった
痛"い"痛"い"痛"い痛"い痛"い痛"いっ………!!
痛"い痛"い痛"い痛"い痛"い痛"い痛"い痛"い痛"い痛"いぃ
痛"い痛"uい痛"い痛"い痛"い痛"い痛"aい痛"い痛"い〆い
痛"い痛"い痛j'い痛"い痛"い痛"い痛"い痛"い痛"い痛"い
痛"いpjw痛"い4o8fcs9sil6k8oicfryfotwgc………………
ズドギャアッッ……!!
最後に蹴飛ばされて身体を地面に打ち付けた
もう何が何だかわからない
「 だれか………たす……………… 」
そう言いかけたその時
彼女の背後に何者かが現れたのだ
ズドアッ…………!!
その背後からの振りおろしは躱されてしまう
鈍器が地面に打ち付けられた重い音が聞こえた
(誰、、なんだ……… ? )
激痛と目眩と吐き気に襲われるなか
必死に目を開こうとするが感覚がないのだ
「やっと来ましたか
あなたのお仲間が死ぬところでしたよ?
次は…少し楽しめそうですね ♬ 」
「楽斗、遅れてごめん… 」
挑発気味に嗤い余裕をみせる奴の声と
誠士郎の優しい声が聞こえた
そして………
「おい…… 殺"してやるッ…………!! 」
すぐさま豹変した彼の声が耳に響いた
仲間の俺でさえ戦慄が走る怒りの現れだった
~ ep6完 ~
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